風雲電影院

ボーグマン(Borgman)

2014年10月29日
ヒューマントラストシネマ渋谷

 シッチェス映画祭ファンタスティックセレクション2014の一本として観たオランダ映画。

 森の中で地面に穴を掘って生活しているやつらがいる。それがボーグマンというものらしい。彼らは追われていてどうやら邪悪な存在らしいのだが、そう言う風には見えない。普通に見るとただのホームレス。

 そんなボーグマンのひとりが、ひとつひとつの民家に訪ねて来る。「風呂を使わせてくれないか?」。誰だって汚いホームレスが突然やってきて、風呂を貸してくれと言ったら断るでしょ。何を考えてるんだと。案の定、どこの家でも門前払い。何軒目かの家で同じことを繰り返すと、その家の亭主が怒り出して、このボーグマンに乱暴を働く。不憫に思ったこの家の女房が、亭主の留守にこっそり家に入れてやり、風呂を使わせて食事も与えてやる。それで出ていくのかと思ったら、この男はなんだかんだ理由を付けて、この家に居残ってしまう。

 そのうちに、この家の庭師に毒を盛り、殺してしまう。どこからともなくこの男の仲間が集まり始める。みんなホームレスの恰好をしているのかと思うと小奇麗にしているのもいれば女性までいる。みんなボーグマンというやつらしい。庭師とその女房の死体を不思議な方法で始末して、庭師がいなくなってしまったこの家に、ついに代わりの庭師として住み着いてしまう。それにいつの間にか仲間も一緒に住み着いている。庭師の仕事は出来るとは言うのだが、彼と彼の仲間がやっていることは庭の管理と言うよりは、まるで土建屋。怪しいことこの上ない。

 さらには彼らは、この家の女房、三人の子供、女中まで取り込んでしまい、亭主は孤立していってしまう。

 観ていて、「ああ、これは安部公房の『友達』に似ているな」と思った。突然やってきて家を乗っ取ってしまう一団の話。その一団についての説明は無い。不条理な話。

 観ていて、ときどき意味不明のショットがあったりして、ますます安部公房っぽい。こういうのが好きな人には堪らなく面白いでしょうね。それでいてゲージュツ映画っぽくないのもいいな。庭で舞台を作ってボーグマンたちが何やらやってるシーンなどは、そう言う意味では余計なような気もするけど。

10月30日記

静かなお喋り 10月29日

静かなお喋り

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