奪命金(Life Without Principle 奪命金) 2013年2月14日 新宿・シネマカリテ 何事が始まるのか、途中まで、わけがわからず戸惑ってしまった。というのも、三つの別々の話があって、それが微妙に関わりあっているから。 この三つの話が、どうまとまっていくのだろうと思って観ていくと、実は大きく繋がるわけではなかったというのが、観終ってからわかってくる。いわば、クェンティン・タランティーノの『パルプ・フィクション』みたいなもの。 一人目は、リッチー・レンの刑事と、その妻マイオリー・ウーのエピソード。妻は新しいマンションのいい物件を見つけて、引っ越したいと思っている。ところが手付金が手元にない。不動産屋によると、かなり人気の物件で早くしないと、ほかの人に売ってしまうと言われている。 二人目は、デニス・ホーの銀行員。金融商品の営業ウーマン。成績が上がらないで、上司からはハッパをかけられている。ある日、1000万香港ドル(15円計算だと、1億5千万円)を現金で引き出しに来た闇金業者が、直前で500万ドルだけ持って、残りの500万ドルをデニス・ホーに預けて、慌てて飛び出して行ってしまう。 三人目がラウ・チンワンのチンピラ。アニキが逮捕されてしまい、保釈金が必要になり、金の工面に走り回っている。 と、そこへギリシャの債権危機問題が発覚。金融市場は大混乱になる。それが三組の運命を大きく動かすことになってしまう。 当初はラウ・チンワンのエピソードだけで撮り始めたのが、途中からギリシャの問題が浮上し、脚本を書き直して、あとの二つのエピソードを付け加えて撮影されたらしい。 ジョニー・トーでこのタイトルだから、てっきり大金がらみのノワール・アクションものだと思い込んでいた私は、拍子抜けしてしまったが、へえー、今回はこういう変化球できたか。いや、これはこれで面白い。時間を忘れて夢中になって観てしまった。 以下、ラストに触れます。 デニス・ホーの銀行員のエピソードで出てきた闇金業者が、あのあと駐車場で襲われることになる。それで三つのエピソードは繋がってくるのだが、ここに来るまでが長い。それでもさすがジョニー・トー。飽きさせないんだからたいしたもの。 それで結局は、三つのエピソードの主人公たちは、めでたしめでたしになるのであって、よかった、よかった。金に欲が眩んだ人物は死ぬか大損をし、真面目に(?)生きてきた者は得をする。 ・・・と言っていいのかどうかだが、まあこれが映画のカタルシスというもの。いつかきっといい事あるさ。明日からも元気に生きようという気になるではないか。 2月15日記 静かなお喋り 2月14日 静かなお喋り このコーナーの表紙に戻る |