風雲電影院

ダーティ・ファイター(Every Which Way But Loose)

2015年5月25日
BSジャパン放映録画

 最近、クリント・イーストウッドの映画がテレビでかかると録画して観ている。これもそんな一本。1978年の作品。監督はしておらず主演のみ。ソンドラ・ロックとアツアツのころの映画で、今から思うと、このころのイーストウッドはいったい何をやっていたんだと思えてくる。実際、私もロードショウで観てがっかりして出てきたという記憶がある。

 この映画でのソンドラ・ロックの役ははカントリー&ウエスタンの歌手の玉子。私、世の中の音楽で何が嫌いと言ってカントリー&ウエスタンくらい嫌いな音楽は無くて、これが流れているだけでイライラしてくる。それで内容もなんだか行き当たりばったりな感じだっので退屈しちゃったんだと思う。

 それが昼下がりに、どうせあのしょーもない映画だけど、クリント・イーストウッドを観直すだけのために、肩から力を抜いて観ていると、これはこれで気楽に見られるプログラムピクチャーみたいなもんだと思えてきて、大して腹も立たない。ストーリーなんて無茶苦茶だけど、こういうのがアメリカでは続編まで作られる大ヒットになるんだと思うと、アメリカ映画ってもののアメリカ国内でのとらわれ方が、なんとなくわかってきて面白い。

 だいたいカントリー&ウエスタンなんていう音楽、アメリカ以外でそんなに受け入れられているとは思えないのですよ。もっと言えば、アメリカの白人社会、それもどちらかというと都会と言うよりは田舎。『ブルースブラザース』が田舎のライヴハウスに行ってR&Bが受け入れられず、急遽『ローハイド』を歌って大受けするって、アメリカの田舎の白人社会ってああいうものなんでしょうね。

 それでまあ、イーストウッドの相手役がカントリー&ウエスタンを歌うと。イーストウッドの役は一応トラックの運転手なんだけど、お気楽な男でソンドラ・ロックを追いかけて旅に出ちゃう。金が無くなると賭けボクシングをやって金を儲ける。それはいいんだけど、監督がヘボなのか役者が動けないのか、肝心の格闘シーンががっかりするほどひどい。最後に出てくるボスキャラみたいな対戦相手は、見るからに腹は出ているし、実際に闘ってみても弱っちいことこの上ない。おいおい、これがクライマックスかよ。

 アメリカ人って、結局、酒場の乱闘シーンが好きなんだね。この映画にも、オキマリのようにして入っている。これって面白い? 私はこの手のシーンって、さっぱり面白いと思ったことないのだけど、おそらくアメリカ人には受けるんだろうなぁ。

 ヘルスエンジェルスみたいなオートバイ軍団やら警察もイーストウッドたちを追いかけてくるんだけど、これもコメディ扱い。停めてあったオートバイをみんなまとめて捨てちゃうなんていうシーンが長々と映し出されて、アメリカ人ってああいうの、ギャグだと感じていつまででも笑っているんだろうなぁ。イーストウッドが釣りをしてるシーンで、後ろから敵が近づいてきて猟銃突きつけてホールドアップ。ところがイーストウッドが釣り上げようとしているのが超大物と知るや、ホールドアップはどうでもよくなって、「オレに釣らせろ」と夢中になってしまうなんていう、ほんとどーでもいいつまんないギャグを延々と撮ったりしてる。

 なんかどうでもいい映画だったぁとは思うけれども、あのころアメリカの一般大衆が喜んで見たのていたのは、実はこういう映画だったんだろうなと思うと、それなりに微笑みが浮かんできてしまうんですね。

 もう、これ以上、繰り返して観たいとは思わないけどね。アハハハハ。

5月26日記

静かなお喋り 5月25日

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