毒戦(Drug War) 2013年3月14日 シネマ・ヌーヴォ(大坂・九条) ジョニー・トー監督の新作。 大阪アジアン映画祭で3回の上映があるので、どうしても観たい。この機会を逸すると、どうせまた1年や2年は待たされることになるし、それまでこっちだって生きていないかもしれないという勝手な理由を付けてチケットを買った。3回の上映のうち、この日だけが昼間の上映。これならば日帰りが可能じゃないかという、それだけの理由でこの日になった。ほかの日の方が劇場も大きそうだし、ジョニー・トーが挨拶に来ると言う利点もあったが、やはり一泊するとなると大ごとになるし、深夜高速バスはもう体力的にキツいもんなぁ。 さて、『毒戦』。ルイス・クーの麻薬製造業者が捕まり、警察側と取引して、麻薬組織壊滅のための道具にされる。なんか今回はかわいそうな役まわりなんだなぁ、終始。警察側のボスがスン・ホンレイ。引き締まった身体付きだし、顔も怖い。『初恋の来た道』のときとは大違い。 このふたりが中心になって進んで行くのだが、警察側の役者はおそらくほとんど中国本土の役者さんだろう。それらしい顔つきをしているのがリアリティがある。 ロケも全篇本土。なんかねえ、空が霞んでいる。大気汚染ってホントに進んでいるんじゃないかと思う。もう全篇暗い空。これもこの映画を沈鬱なものにしている。 今までのジョニー・トーを期待すると、ちょっと裏切られるかも。ここにはヒロイズムなんてものは一切無い。 それでもジョニー・トーらしいユーモアはところどころある。でも、どちらかというとこれは『エレクション』なんかにも通じるヒロイズムとは無縁の世界。やや疲れたというのが率直な感想。 だから、銃撃戦なんかもスローモーションなんかを使った美学ではない。かなりの迫力の撃ち合いが繰り広げられる。そして無残にも転がる死体の山。 ラストも辛い。これなど中国向けなのかも知れないが、もう娯楽映画では済まされなくなっている。麻薬撲滅キャンペーン映画としては成功しているだろうが。 3月15日記 静かなお喋り 3月14日 静かなお喋り このコーナーの表紙に戻る |