『反逆のメロディー』『新宿アウトロー・ぶっとぱせ』 銀座シネパトスで梶芽衣子の特集をやっていて、7月24日から27日の4日間は、『反逆のメロディー』と『新宿アウトロー・ぶっとばせ』の二本立てだった。これはどちらも梶芽衣子は脇役という感じ。そしてこの二作に共通しているのは先日亡くなった原田芳雄が出ていること。はからずも原田芳雄の追悼企画のようになってしまった。もちろん行くっきゃないでしょ。 映画館は、圧倒的に男客。それに年齢層も高い。明らかに原田芳雄を観たくてやってきたと思われた。 『反逆のメロディー』は、テレビドラマ『五番目の刑事』の原田芳雄のイメージをスクリーンに持ち込んだらしい。残念ながら私はこのドラマを観ていないのだが、ジーンズ、サングラス姿でジープを乗り回すというスタイルは、そのまま『反逆のメロディー』に取り込まれた。監督は『斬り込み』でデビューした澤田幸弘。 1970年、公開当時に観た私は、この原田芳雄のイメージに衝撃を受けた。ジーンズを穿き、ジージャンを羽織っている。下にはTシャツすら着ない裸の姿。おそらく撮影は夏にはなっていない時期で、「寒くない?」と思ったものだが、とにかくかっこ良かったのだ。全編この格好で通す。それがこの映画のテーマでもあるように。葬式のシーンでも他の人間は喪服姿なのに、原田芳雄はこの格好。 この葬式のシーンは今観てもゾクゾクする。読経の最中に青木義朗のマル暴の刑事が隅で一升瓶から茶碗に酒を注いでアグラをかいて飲んでいる。そこに詰め寄るのが地井武男。今や『ちい散歩』の地井さん。このシーンは、不謹慎ながら、葬儀に参列するたびに頭をよぎる。 青木義朗の刑事は、このあと暴力団事務所に捜査令状を持ち込み、構成員を微罪で次々に逮捕していってしまうシーンがまた印象的。抵抗しようとすると「公務執行妨害!」だもんなあ。 ジーンズ姿の原田芳雄が反権力の象徴なような存在で、当時、私を含めて映画ファンは夢中になったものだったんだよなあ。 同じ年、原田芳雄は続いて、今度は藤田敏八の『新宿アウトロー・ぶっとばせ』に出ることになる。こちらもスタイルは同じ。ジーンズにサングラス、愛車はジープ。こちらは渡哲也と主役を別けあっている。こちらの方が当時の記憶は私には強かったようで、ほとんど丸々憶えていた。北関東の刑務所を渡哲也が出てくるファーストシーン。外でジープに乗った原田芳雄が待ち構えているが、渡哲也はスッとタクシーに乗ってしまう。そこから新宿→横浜へと追跡が続くのだが、この間にタイトルが流れていく。このときの快適なスキャットのバックミュージックをちゃーんとまだ憶えているのだよ。 夏という設定だったのか、それに続く新宿のシーンでは暑さが強調された演出になっているが、けっこう着ているものが秋って感じで、ロケで映る街行く人の服装も、夏の服装ではないよなあ。 ヤクザ映画というのとは、ちょっと違う映画で、暴力団に騙し取られたマリファナの代金を奪い返そうとする話。紆余曲折があるのだが、なにもそんなに気を持たせないで、さっさと敵地に行ってケリをつければいいのにと思ったりもするのだが、そのへんが藤田敏八演出で、そのノラリクラリが楽しかったりするのだ。原田芳雄も『反逆のメロディー』よりもコミカルな面が出ていて好感が持てるし、ラストの能天気な幕切れも楽しい。 私にとって原田芳雄って、やっばりこのころが一番印象深いかなあ。実はね、『新宿アウトロー・ぶっとばせ』で原田芳雄がジーンズ穿いて、上に白い麻のジャケットを羽織っているコーディネイト、あのころ私もマネしたものでして。えへへへへ。 改めて、原田芳雄に合掌。 2011年8月10日記 このコーナーの表紙に戻る |