香港クレージー作戦 2014年1月13日 三日月座BaseKOMシネマ倶楽部 1963年暮に公開のクレージー・キャッツの正月映画。当時私は小学生。併映が『海底軍艦』だったそうだから、親にねだって観に行ってそうなものだが、観ていない。今回が初めて。『海底軍艦』もいまだに観てない。 とにかくあのころの東宝映画は、クレージー・キャッツ、若大将に怪獣映画。植木等、加山雄三に元気をもらい、大きくなったら私もあんなふうになりたいと思っていた。実際に大きくなってみると、世の中そうそううまくはいかないということに気付かされる事になるのだが。 調子のいい生き方の植木等が経理のお金を誤魔化して、ちゃっかり仕事もしないで遊んでいるという導入部の楽しさは、いつもどおり。夜になって、のんべい横町に行くが、どこの店にも借金だらけって、いったいどんだけ飲んでいるのやら。そこ一帯の立ち退き問題が起こって、そんならいっそと、植木等の交渉で、立ち退く代わりに、香港のビルのフロアーを借りて、のんべい横町の連中で日本料理屋をやろうということになる。トンカツ屋は洋食だから、同じ揚げ物料理で天ぷらはいいとしても、もつ焼き屋は同じ“焼き”だからすき焼きというのは、無茶すぎて笑える。しかし後に香港では日本食ブームになるのだから、1963年の時点でこの計画は先を行っていたんだよなぁ。 そして、香港へ。いやー、1960年代初めのころの香港の風景が観られるなんて、それだけでこの映画は価値がある。後に『クレージー黄金作戦』ではラスベガスの大通りでの撮影なんていうことをすることになるのだが、ここでは香港の街角でチンドン屋をやるというシーンがある。交通を止めてなんてことはやってないようだが、なかなかやりますなぁ(笑)。ただ、惜しむらくは思っていたほどロケは少ない。おそらく日本のスタジオでのセット撮影がほとんど。それでもときどき挿入される街なかを自動車の中から撮ったシーンは楽しい。私が初めて香港に行ったのは1980年。あのころよりも17年も前だから、もう少し田舎っぽい感じがする。公園や海岸でのロケもあって、このあたりはいかにも、もうひとつの香港らしくて、よく撮ってくれたという思いがする。 ただ、話としては香港に行ってからが、いまいち面白くならない。監督が古沢憲吾じゃなくて杉江敏男だから、弾け方が足りないのかもしれない。クレージー・キャッツの音楽コントもあるのだが、これも面白くない。小林信彦に、クレージー・キャッツはライヴが一番面白くて、次がテレビ。映画が一番つまらないと言われると、そうかもなと思う。しかし当時、小学生だった私には、行く術は無かったもんなぁ。柏原さんに、当時、日劇では映画と実演という企画があって、クレージー・キャッツを観に行ったと言われて、ああ、そういえばそうだったと思いだした。あのころ、観に行けてればなぁと、返す返すも悔しい。 映画は、最後にお決まりのように、植木等が浜美枝からプロポーズされて終わる。スイスイと世の中を渡り、女性の方からプロポーズされる。もう男の夢のような物語。現実はそんなに甘くないというのは当然の事なんですけどね。良き時代の東宝映画。今こんなの作ったって失笑を買うだけだろうけど。 1月14日記 静かなお喋り 1月13日 静かなお喋り このコーナーの表紙に戻る |