風雲電影院

I AM スティーヴ・マックイーン(I Am Steve McQueen)

2015年3月23日
三日月座BaseKOMシネマ倶楽部

 1980年に50歳の若さで亡くなったスティーヴ・マックイーンの昨年製作されたばかりのドキュメンタリー。死後35年も経って、なんで今更という気がしないでもなかったが、これはなかなか面白いジキュメンタリーだと思う。

 スティーヴ・マックイーンという俳優は、よくポール・ニューマンと比較されるところがあって、本人たちもどうやらライバル意識を持っていたようだ。大人になってもどこかいい意味での少年らしさを残したような表情が、男からも女からも魅力的だったのだろう。実際『タワーリング・インフェルノ』という、ふたりが競演した映画があった。しかしこれはもうふたりが、いろいろな注文を出し合った結果なのかどうなのかは知らないが、なんだか面白くない映画だった。私はスティーヴ・マックイーンもポール・ニューマンも好きだったが、さりとて、そんなに夢中になるほどではなかった気がする。

 スティーヴ・マックイーンがまだ生きているとしたら、もう85歳。このドキュメンタリーは死後35年が経過してしまっている。当時の関係者も今や生き残っているのは少ない。そのためもあるのか、かなり限られた人しかインタビューを取れていない。しかもかなり偏った人選で、これでスティーヴ・マックイーンの実像が語れるのかと不満が残る。それでも凄いのは、前夫人のニール・アダムス、アリ・マックグロー、バーバラ・ミンティが揃って出てきて語っているのは面白い。もちろん三人とも今やおばあさんだが、アリ・マッグローはもう70代半ばというのに、いまだに魅力的というのは脅威ですね。

 実際、スティーヴ・マックイーンは理想の男として、男からも羨ましがられたし、女はみんなメロメロだったらしい。あの青い瞳で見つめられたら誰も彼を嫌いになれないだろう。

 ほかに、彼の息子であり俳優のチャド・マックイーンや孫でやはり俳優のスティーヴン・R・マックイーンも出ている。孫はなんとなくスティーヴ・マックイーンの面影のある優しい顔をしているが、チャドはとても息子とは思えない厳つい顔をしている。とくに最近はこれといった映画に出たという話も聞かないが何しているんだろう? このジキュメンタリーの製作者の一人として名を連ねているから、父親の遺産で食っているのか? このドキュメンタリーの中で父親の想い出を楽しそうに語っているが、見た目が、悪ガキがそのまま大人になったような、ちょっとアブナイ奴。スティーヴ・マックイーンも不幸な身の上ではあったが少年院に行ったという過去を持っている。映画の中の彼は、ひたすらかっこいいが、伝えて聞く彼の性格というのは決していいものだけではなく、嫌な奴だという一面も無くは無い。このドキュメンタリーでは身近の人の彼のよかった面だけを引き出しているように見えるが、その実、やっぱり付き合うには面倒くさい男という一面がジワジワと滲み出てしまっているのが面白い。

 スクリーンで見るスティーヴ・マックイーンは、惚れ惚れする男だが、実際に友達にはなりたいとは思わないなぁ。スターとはそういうもの。いわば虚像である姿を映画館で眺めていればいいだけのことで、付き合いを持ってしまうとうんざりしてくるだろう。本当はこんなドキュメンタリーも観ないで、出演作品だけを観ていた方がいいのかもしれない。

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