風雲電影院

『イップマン・葉問』(Ip Man2 葉問2)

2012年3月26日、DVDにて。

 日本では、こちらの第二作が先に公開されて、評判が良かったらしくて、一作目の『イップマン・序章』(Ip Man 葉問)の方があとから公開されている。おそらく日本人が悪者として描かれているので、公開を躊躇されてしまったのだろう。

 一作目は戦時中。日本の中国占領下時代を背景にしていて、日本軍人は悪者として描かれている。それは仕方ないことだろう。
 が、よく観るとイップ・マンが最後に闘う事になる相手は、軍人より前に武道家。もう、武術が好きで好きでたまらない人物。しかも部下を闘わせるのではなく、自分が闘いたくて仕方ない。
 一方、イップ・マンも三度の飯より武術が好き。
 そのふたりが、まさに肉弾戦を繰り広げるのが、最後の見せ場だった。
 それに、イップ・マン役のドニー・イェンのたたずまいが、いかにも武術家といった感じで、好感が持てた。
 日本人が悪役というのは不思議と気にならなくて、そういう(一部の)悪い事をするやつは、日本人だろうとなんだろうと、「やっつけてやれ!」という気になってくる。

 で、二作目。舞台は戦後の香港。こうなってくると、一作目の戦時中という緊張感が無くなってしまったのが弱い。イップ・マンが香港で武術の道場を開こうとすると、他の道場から、嫌がらせや横槍が入る。
 こういう設定はブルース・リーのころから、もうやりつくされている。陳腐な展開になってきたなあと思っているところで、サモ・ハン・キンポーとの一騎打ちが用意されている。これが素晴らしい。ここが最大の見せ場だろう。もう、このシーンのためだけに、観てもいいくらいだ。

 このあと突然、イギリス人ボクサーが登場して、行きがかり上、サモ・ハンとの異種格闘技戦が始まってしまう。
 そして、サモ・ハンが死んでしまうのだが、ここでサモ・ハンを殺してしまうのはいろいろな意味でまずい、と思う。常識的に考えるなら、本来ならこの一件はこれで終わってしまうはずだから。対戦中とはいえ、非公式。それで相手を殺してしまったのだから、イギリス人ボクサーは自積の念にかられて消えていくでしょ、普通。
 これで世論は怒りまくるわ、ボクサーは逆に挑発するわで、結局イップ・マンが対戦を表明することになるのだが、こうなるともうB級アクションになり下がってしまっている。この対戦後にイギリス側がようやく動くのだが、それは遅すぎるでしょ。ありえねえーっ。

 せっかく一作目で、いかにも武術家らしい、いいたたずまいをしていたドニー・イェンも、品性が落ちている気がするし。

 サモ・ハンを殺す必要なんてなかったのに、なんか、無理矢理ナショナリズムを盛り上げようとしている感じがして気にいらない。なんで敵を外国人にしなくちゃ気が済まないのだろう。私は一作目の方がよかったな。

3月27日記

静かなお喋り 3月26日

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