ジャージーボーイズ(Jersey Boys) 2014年10月24日 109シネマズ木場 フランシス・フォード・コッポラの『地獄の黙示録』にはドアーズの曲が多く使われて、実際あのときのアメリカのベトナム戦争当時の空気というものはドアーズに代表されるようなロックだったのかも知れないと思っていたら、マイケル・チミノの『ディア・ハンター』を観たりすると、ベトナムへ行く前夜に、みんなで、ソロになったフランキー・ヴァリの Can't Take My Eyes Off You を大きな声で歌うシーンがあったりして、意外な気がしたものだった。私はアメリカに生まれたわけでもないし、当然アメリカ人でもない。ましてやベトナム戦争に行った世代の人のことなどわかるわけもない。でも、なんとなく戦場へ行く前にみんなで酔っぱらって歌うのだとすれば、あの曲は、あの当時のアメリカだったらズバリだったんじゃないかと思う。あの曲は1967年のヒットなんだし。少なくともドアーズはみんなで歌うもんじゃない。『ディア・ハンター』で一緒に歌っていたクリストファー・ウォーケンも『ジャージー・ボーイズ』に出ているというのはキャスティングした人も意識したんじゃないかと思えてくる。 フォーシーズンズにはあまり興味がなかった。どちらかというと私よりも少し世代が上の人たちが聴いていたポップスで、日本では Sherry を九重佑三子だかがカヴァーしてヒットしていた。後に私はビーチボーイズが大好きになるのだが、同じコーラス・グループ、しかもファルセットが中心になる点では、フォーシズンズもビーチボーイズも似たようなものなのかも知れないが、私はどうもフランキー・ヴァリの声が好きになれなかったようだ。これはもう好みの問題だけで、ただそうとしか言えないのだが。だからソロになって少し音程も下げて歌った Can't Take My Eyes Off You の方は好き。あのフォーシーズンズ時代のフランキー・ヴァリは私はどうもダメなようだ。 さすがクリント・イーストウッド監督。とても上手く撮っている。バンドが結成され、苦労を重ねて、やがて曲がヒットし、成功し、そして仲間内で問題が発生し、解散、そしてまたロックの殿堂入りをきっかけに集まってくる。その様子をテンポよく130分程度の映画に過不足なく収めている。でも決してそつなくこなしたっけわけじゃなくて、クリント・イーストウッド、さすがに音楽のことに強くて、使い方が上手い。下積みで女性歌手のレコーディングのコーラスばかりやらされて、録音途中でキレちゃうところとか、曲がヒットしてノリノリのところの躍動感とか、あるいはフランキーがソロになって Can't Take My Eyes Off You を会社の反対を押し切って録音する所とか、ぞくぞくしてくる。そしてラストのミュージカルを思わせるような楽しいシーン。イーストウッドは、その場その場の音楽の入れ方引込め方が抜群だ。 フォーシーズンズに関する知識はほとんど無かったのだけれど、これを観ているとやはりフランキー・ヴァリのリード・ヴォーカルと、曲が書けたボブ・ゴーディオが中心的存在で、トミー・デヴィートはトラブルメイカーだったんだというのがわかる。結局、フランキーとボブが、あとのふたりと別れて独立しようとしていたっていうのもわかってきて、バンドって、しばらく続けていると、どこでも難しいことが起きて来るもんですねぇ。 10月25日記 静かなお喋り 10月24日 静かなお喋り このコーナーの表紙に戻る |