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『女王陛下の007』 On Her Majesty’s Secret Service

 ジェームズ・ボンド・シリーズ映画化第6作。ショーン・コネリーで5作撮ったあとの、ジョージ・レイゼンビー唯一のボンド映画。1969年作品だから、かれこれ40年前だ。封切り当時に観て以来だったが、最近になってWOWOW放映で再見した。

 公開当時は散々に駄作だと言われていたことを憶えている。そりゃあ観客はジェームズ・ボンドといえばショーン・コネリーのイメージで固定概念が出来ている。いまさらジョージ・レイゼンビーなる、どこの馬の骨ともわからない俳優がジェームズ・ボンドでございますと出てきても、観る前から拒否反応を起こすのは当たり前だった。もっともそのあとで、ロジャー・ムーアやらティモシー・ダルトンやらビアーズ・ブロスナン、そしてダニエル・クレイグにバトンタッチしたときには、それほど拒否反応はなかったわけで、最初にバトンを渡されたジョージ・レイゼンビーは貧乏くじを引かされた気がしてならない。というのも後に『女王陛下の007』は出来がよかったとの再評価が高まっているのを知らされることになる。

 というわけで、「もう一度、観てみようか」という気になったわけであるが、いやあ、ほとんど内容を忘れていましたね。とにかく40年前の作品だから、さすがに古さを感じる。後のロジャー・ムーア版なんかの派手なアクションはない。ううっ、地味。しかしですねえ,もちろんこの時代だからCGなんて無い。ジョージ・レイゼンビーの生身のアクションがたっぷり観られる。当時ぶくぶく太り始めたショーン・コネリーなんかよりよっぽど身体のキレがいい。アクション中もカメラは引きの構図が多く、誤魔化してない。

 なんといっても彼のアクションが炸裂するのはクライマックス。スキーで逃げるシーン。片方のスキー板を転倒した際に折ってしまい、片足で滑って逃げるシーンの緊迫感。そしてボブスレーでの追跡と格闘。これは見ものだといえるだろう。

 ショーン・コネリーが女たらしの色男っていうイメージを好演していたのに、ジョージ・レイゼンビーって、そのへんが微妙。基本的に真面目な人なのだろう。後のダニエル・クレイグほどの硬派ではないにしろ、そのへんが中途半端だったのかもしれない。

 ショーン・コネリーの前の5作が、秘密兵器を出すなどで、どんどん非現実的になっていったのに対して『女王陛下の007』では、これといった秘密兵器も出てこない。そのへんも当時の観客は不満だったと思う。

 ただ、荒唐無稽さを排除しようとしながら、『女王陛下の007』の設定は、「どうもなあ」と首を傾げざるを得ない。若い女性を集めて催眠術にかけて、細菌兵器を持たせて各地に分散させ、無線で命令が来たら細菌スプレーをバラまかせるって、これ、ありえるような、ありえないような、微妙なアイデア。

 ところで、私はこの映画の邦題があまり好きではない。映画の中でも007という言葉はあまり使われていない。あくまでこのシリーズはジェイムズ・ボンドであり、007はどうもなあという気がするからだ。

2010年7月19日記

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