奇跡のリンゴ 2013年5月25日 よみうりホール(試写会) 無農薬栽培に成功した弘前のリンゴ栽培の実話の映画化。 いや、実によく出来ている映画だ。何しろ上に書いた一行が映画の全てだから、ストーリーが捻っているわけでもない。きわめてストレート。試行錯誤の上に無農薬栽培のリンゴを作るまでの感動のストーリー。それを二時間以上かけて描く。 嫌味な映画になりそうなのだが、阿部サダヲが好演していて嫌らしさが無い。ほかの人を持ってくる事は考えられないくらいの適役。もう阿部サダヲの力で持っていると言っていいかもしれない。ラストでリンゴが収穫されるところでは思わず涙ぐんでしまった。 しかし観終って冷静に考えてみると、この映画は何だったんだろうと思えてくる。最初のうちは、ほかのリンゴ農家の冷たい視線にさらされ、嫌がらせまで受けるが、次第に周囲が温かく見守るようになって行って、最後は援助までするようになる。善意の人たちばかりになってしまう。さらに山崎努演じる義父の死が、ちょうどリンゴが収穫された時と重なるという偶然で涙を誘う。なんだか出来過ぎのような展開に、天邪鬼な私などは、むしろシラケてしまったり。 そりゃあ肥料も農薬も一切使わず農産物を作るというのは理想なのだろうけど、現実はどうなんだろう。友人で岡山でブドウの栽培をしている農家でも同じようなことはしているが、必要最低限の肥料や農薬は使っているようだし。 自然に生えている樹木は自然の力で害虫や病気に対処できるというが、この映画の中でも子供が病気になれば病院へ連れて行ったわけだし、義父が倒れれば入院したわけだし、ある程度の科学療法は必要なわけで、まったくの無農薬が果たしていいのかどうか私にはわからない。 いい話だなぁと思う反面、冷静になるとなんだか居心地の悪い映画でもあり、おそらく金を払って観に行くことはなかっただろうなという気がする。 5月26日記 静かなお喋り 5月25日 静かなお喋り このコーナーの表紙に戻る |