風雲電影院

Love Letter

2016年4月5日
早稲田松竹

 岩井俊二監督のこの有名な映画を、ようやく観た。いや〜、これは確かに名作ですね。山で死んでしまった恋人が、以前住んでいたとされる小樽の住所に手紙を出したらば、そこに同姓同名の人物が住んでいて、その人物から返事が届く。しかし手紙をくれた同姓同名の人物は女性。中学時代のクラスメイトで男女違いはあるけれど同じ名前の男の子がいたという。それがきっかけで文通が始まるのだが死んだ恋人の中学時代のことが徐々にわかっていく。

 中山美穂が二役で、文通相手のふたりを演じているのだが、ふたりが出会った時点で、もうこの話は終わりだろうと思っていた。それが始まってから30分ほどたったあたり。もうこれ以上話は広がらないんじゃないの?と思っていたら、どんどん過去のことが出てきて、話が膨らんでいく。この膨らまし方はうまいなぁ。よく考えると現在は豊川悦司演じる新しい恋人ができていて、今さらヒロインが過去の恋人のことを吹っ切るためなのか、手紙をくれる相手に反応して、中学校のの校庭の写真を撮って送ってくれだの(しかもポラロイドカメラを送り付ける)とかするかなぁと思うけれど、それはそれでいいかと思ってみたり。でも新しい恋人としたって、あまりいい気持はしない気がするしなぁ。それでもヒロインはそれをやるか? とくに有名らしい山に向かって「元気ですか〜!」とか。

 あるいは後半、高熱を出した小樽の方のヒロインを、救急車が来られないので、おじいちゃんが背負って病院まで運ぶシーンとか、ちょっとやりすぎなんじゃないのという気がするし・・・。それでも不思議と最後まで引っ張っていく力がこの映画にはあって、中学時代のふたりが図書委員だったこと。そして読みもしない本を借りて名前を残していたという伏線。それがラストシーンの図書館で見つかった本のエピソードで見事にサゲが決まるという構成の巧みさ。この本がプルーストの『失われた時を求めて』というのもうまい。

 今回同時上映された『四月物語』も、ラストになって、なぜヒロインが旭川から東京の大学に進学してきたのかという理由がわかって、「はあ〜、そうだっんだ」と納得させられた。実は岩井俊二の映画って、今回初めて観たのだが、この『Love Letter』と『四月物語』を観る限りでは、岩井俊二って若い女性殺しだよなぁと感じてしまった。うん、女性はこの手の映画にはまるだろうな(笑)。
 いまさらだけれど、もう少し岩井俊二を追いかけてみようかな。

4月6日記

静かなお喋り 4月5日

静かなお喋り

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