走れ走れ!救急車!(Mother,Jugs & Speed) 2015年8月3日 三日月座BaseKOMシネマ倶楽部 1977年作品。これは観てなかったなぁ。監督が『ブリット』のピーター・イエーツ。出演がビル・コスビーにラクウェル・ウェルチにハーヴェイ・カイテル。今思うと不思議な組み合わせ。ハーヴェイ・カイテルは直前に『タクシー・ドライバー』でポン引きの役をゆって一躍知名度が上がったばかりのころ。今観ると実に若い。『タクシードライバー』ではかなりやりたい放題な演技をしていたが、ここではグッと押さえた演技に徹している。 しかし、この映画、何なんでしょうか? アメリカでは民間が請け負っている救急搬送の仕事を取材して、いろんなエピソードを得て、これは面白いっていうんで映画にしたものの、いろいろ詰め込み過ぎて、わけのわからないものになってしまったのでは。しかもビル・コスビーを使ってコメディにしようとしたものの、感動的なエピソードは捨てたくないというわけで、ごった煮状態になってしまったというところだろうか。 なにしろテーマが救急医療だから、どうしてもブラックさが絡んでくる。最初の方のエピソードの、倒れた物凄く太った女性を担架で部屋から担ぎ出そうとするものの、いくつもの悲劇が連続して起こるなんていうエピソード。意識不明の女性を救急車で搬送するときに、意識不明なら何をしたってわかりゃしないと、よからぬことに及ぶ救急隊員とか、素直に笑ってしまっていいのかどうか。 そうかと思うと、これまたテーマがテーマだけあって、現場に駆け付けた救急隊員がジャンキーの女に猟銃で射殺されてしまったり、病院をたらい回しにされた妊婦が救急車の中で出産するものの、出血多量で死んでしまったりってエピソードを見せられると、コメディの場面とのアンバランスさが際立ってしまい、実にもうなんともね。 ラクウェル・ウェルチは、ずーとセックスシンボルみたいな扱われ方をしてきた女優さんで、ここでは事務職から現場に出たいと思い、スクールに通って救急士のライセンスを取得する女性を演じている。金髪デカパイの女はバカというアメリカンジョークから脱出しようとするその姿は、ラクウェル・ウェルチ自身もやりたかった役なのかもしれない。そうそう、そういえばこれもアメリカンジョークお得意の人種ジョークまで出てきた。 結局、せっかくラクウェル・ウェルチを引っ張って来たんだから、もう少しセクシ路線でも強調すれば面白いコメディになったはずなんだけどなぁ。ラクウェル・ウェルチ、マジになって演義しようとしてる。彼女の気持ちもわからないではないけれど。 あと、もうひとつ観ていて気になったのは、救急車が現場に着いて、病院まで搬送するのに、即その場で現金を要求するっていう描写。あれ、アメリカでは当たり前なんですかね? シビアな世界ですこと。 私は以前から葬儀社を舞台にしたドタハダコメディが作れないかなぁと思っているのだけど、そんな不謹慎なのってダメなんでしょうね。 8月4日記 静かなお喋り 8月3日 静かなお喋り このコーナーの表紙に戻る |