麦子さんと 2014年1月19日 テアトル新宿 松田龍平が出ているというだけじゃなくて、これは『あまちゃん』と妙に被ったところのある映画だ。撮影は去年の初め頃だったそうだから、『あまちゃん』とは別の産物なのは確かなのだが。 朝ドラじゃないから、麦子(堀北真希)は『あまちゃん』のアキ(能年玲奈)みたいに、はじけ飛んではいない。むしろアキよりももっともっと優柔不断なアニメおたく。母親との接し方もアキのように親密ではない。その母彩子(余貴美子)もまた褒められた母親ではなく、娘と息子を捨てて出て行った女である。この余貴美子がいい。もう、実に思春期の子供からみれば、「こんな大人にはなりたくない」と思わせるほど、若い子の目にはダサイと思えるだろう。 世の中には、友達親子みたいな例も無いではないが、ほとんどの場合、子供は思春期を迎えると、親の存在がうっとうしくなる。とくに女の子と母親の軋轢というのは耳にしただけでも、どこにでもあるように思う。自分たちを捨てて、そのうちにノコノコと戻ってきて、「一緒に暮らしてくれ」と言われたら、女の子だったら特に許さないだろう。前半は、そんな彩子と麦子の生活が描かれていく。それが後半になると、話しが一転する。麦子は母の生まれ育った田舎を訪問することになるのだが、実は母は田舎では昔アイドル扱い。みんなが母親のことを知っている。そして実際、彩子はアイドル歌手を目指して東京に出て行ったのだということを知ることになる。もうこのへんもろ『あまちゃん』ですから。村祭りで歌うシーンもある。 それでね、彩子を毛嫌いしていた麦子は、だんだん母親に申し訳なくなってくる。「あんたを母親だとは思わない」と暴言を吐いたことを後悔し始めるんですね。 ラスト直前に松田聖子の『赤いスイートピー』が流れるところは、もう涙腺が崩壊しそうになる。もう自分でも過去に母にひどいことを言った事あったよなぁと思いだしてしまったり。 まあとにかく脚本がよくできている。伏線が上手く張ってあって、冒頭の鼻血のところとか、目覚まし時計とか、母親がなぜ転がり込んできたのかという本当の理由とか、もう実にあとから効いてくる。映画の脚本はこうでなければ。クドカンにも負けない脚本作りの映画だと思うよ。 1月20日記 静かなお喋り 1月19日 静かなお喋り このコーナーの表紙に戻る |