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『おまえうまそうだな』

 以前から観たいと思っていたアニメ。ヒューマントラストシネマ有楽町のモーニングショウで観ることが出来た。客層は小さな子供を連れた家族連れが主体。私の座った席の並びには幼稚園児かせいぜい小学校低学年といった男の子を連れたおかあさんがいた。どうやら息子さんにとっては初めての映画館体験らしい。「これから暗くなるけれど、大きなテレビだと思えばいいのよ」なんて話しかけている。

 映画館でのマナーもこの子供は教育されていないらしくて、上映中にしきりに母親に話しかけていた。

 草食恐竜の母親が、捨てられていた肉食恐竜の卵を自分卵と一緒に孵化させ、自分の子供にはライト、肉食恐竜の子供にはハートと名付けて一緒に育て始める。ハートは草を食べるのが苦手だが赤い木の実だけは大好きだ。ハートは成長するにしたがって自分が実は肉食恐竜だということに気が付く。肉食恐竜に襲われそうになったライトを助けるために、肉食恐竜の尻尾に懸命に噛みついときに、その尻尾を噛み切ってしまう。思わずその尻尾を食べてしまったハートは「お肉おいしい」と口走ってしまう。

 このあたりから、並びの列の男の子がどんどん落ち着かなくなってきて、ついには母親に抱きついての映画鑑賞になってしまった。

 この映画は草食恐竜イコール善、肉食恐竜イコール悪というような構図で描いているのではない。世の中には草食動物と肉食動物がいて、肉食動物は肉を食べて生命を維持しているのだということを冷静に描いている。そのへんに好感が持てる。菜食主義者の作った映画ではないのである。

 ハートはやがて少年期になり、母親から離れていく。ここで自立というテーマが描かれて行く。自分だけの力で生きていこうとする。そのためにハートは自分で自分を肉食恐竜だという自覚を持って強く磨いて行く。

 この映画のタイトル『おまえうまそうだな』は、実は[おまえ][うまそう][だな]だということが、途中で判明する。これがもう見事というしかないのだが。

 ハートは道端に落ちていた卵から恐竜が孵化してくるのを目撃する。それは草食恐竜の子供だった。卵から孵った子供は初めて見たハートを自分の父親だと思い込んでしまう。途端にハートはこの子供が愛おしくなってしまい、育てることになってしまう。肉食恐竜が草食恐竜を育てる。そう、ここでまた最初の逆転現象が起こってしまうのだ。

 ハートは草食恐竜の子供が肉食恐竜の餌食になってしまわないように訓練をする。教育という問題がここで浮上する。親は子供にこれから生きていくための教育を施す。教育とはそういうものなのだ。

 やがてハートは、この子供を突き離す。もう教えることは無くなったから、自分で生きていくように仕向けるのだ。親の子離れ、子供の親離れというテーマが浮上するのは明らか。

 さて、このあとにサブキャラクターとの関連などがうまく絡み合い、親と子の愛情だったり、親を乗り越えて子供は自立するといった問題だったり、この映画はさまざまなテーマを、見る者に付きつけてくる。

 大人にも是非見て欲しいアニメだ。もちろん子供にもだが。そしていろいろなことを考えて欲しい。これはそういう奥の深ーいアニメなのだ。

2011年1月1日記

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