風雲電影院

『おとなのけんか』(Carnage)

 大虐殺とは、なんともショッキングな原題ではあるが、この日本題名は上手い。おとな、も、けんかも漢字を使わず、あえてひらがななのがいい。

 ジョン・C・ライリーとジョディ・フォスターの夫婦の11歳の息子が、クリストフ・ヴァルツとケイト・ウィンスレットの息子に棒で殴られ、歯を折る怪我をしてしまう。加害者夫婦が被害者夫婦の家を和解の目的で訪問する。
 当初は穏やかに話し合いが進んでいたのが、ちょっとしたアクシデントが重なり、子供同士の喧嘩はいつしかそっちのけになり、大人同士の喧嘩に発展してしまうというストーリー。

 4人の登場人物は、それぞれどこか鼻もちならない性格。それが映画の序盤でもうプンプンと漂っている。日常生活で「こういう人は嫌だなあ」と思えるものが4人に集約されている感じ。4人の嫌な部分が噴き出してくるにつれ、大人のはずの彼らが、まるで子供の喧嘩になって行ってしまうのに、思わずクスクス笑いながら観ている事になる。そのあたりがロマン・ポランスキー監督の狙いなんだろうし、ポランスキーの意地悪らしさが表れている映画だと思う。その意味では成功しているだろう。

 映画は、どうやら子供の側で和解したらしい映像で終わる。子供の喧嘩に、大人が出る事は無いと、よく言われるような皮肉な結末を迎えるのだが。

 私はもっと意地悪な性格なのかも知れないが、「いや、それで済むのだろうか」と思ってしまう。子供には子供に、結構根が深い世界が存在するものだと思ってしまう。なにしろ棒で殴ったくらいだ。子供だとしても棒で殴るというのは、結構止むに止まれぬ事情があったりするのだ。簡単に和解なんて出来ないんだよ、どちらも。二人の対立関係は深いところで続いているんだと思えてしまうのだが。そっちの話の方が面白そうな気がする。

2012年3月2日記

静かなお喋り 3月1日

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