風雲電影院

野良猫ロック セックス・ハンター

2012年6月4日 三日月座BaseKOMシネマ倶楽部にて。

 1970年作品。学生時代、名画座を追っかけて三回くらい観ていると思う。今から観直すと、なんでこれに夢中になって三回もと思うが、時代だったんだよねえ。本心としては、『野良猫ロック』シリーズは、このあとの『ワイルド・ジャンボ』がスカッとして一番面白かったんだけれど、このドロドロした『セックス・ハンター』が時代としては空気に合っていたのかもしれない。

 というのも、これ、かなりアングラ。大和屋竺の脚本が色濃く出た作品。
 大和屋竺は若松プロで脚本を書いたり監督をしていた人。とにかくあのころの若松孝二の映画は、わけがわからないのが多かった。それこそ時代だったんだろうけど、アングラ演劇の影響をかなり受けていたんではないだろうか?

 あのころのアングラ演劇のテーマでよく扱われたのは、血の繋がりの問題。多かったよなあ。まあ、今でも小劇団ではよく遭遇するテーマではあるんだけど。

 『セックス・ハンター』では、ある事件がきっかけでハーフを憎悪するようになったバロン(藤竜也)と、ハーフに生まれた数馬(安岡力也)が、軋轢に発展してしまう話。安岡力也自身がイタリア人の父と日本人の母のハーフだから、危ないテーマ。
 こう書くと、今では信じられないだろうけれど、ハーフって、当時はもっとデリケートな話題で、あまり触れ難い時代だったんだよねえ。

 そこに渡辺プロダクションとのタイアップだったのか、女性コーラス・グループ、ゴールデンハーフが出ているのも危ない話。デビュー間もない、エリーがいる五人編成のころ。

 ネタバレになるが、ラストで数馬が実の妹メグミ(有川由紀)を射殺してしまうシーンで、思わず「なんで?」と言う声と失笑が上がったが、その気持ちはわからないではない。でもねえ、公開当時は、一般の映画館では「?」の反応だったろうけど、名画座では真剣に受け止められていた。それこそ、そういう時代だったんだ。

 梶芽衣子はあまり話には絡んで来ない。おそらく先に大和屋竺のホンがあって、それを無理矢理『野良猫ロック』に当てはめたらしい。それでも梶芽衣子自身は楽しんでいたらしく、あの帽子やら服装も自分で選んで着ていたといわれている。

 まあ、私としても、あのころを生きた青春時代の一本だった。

6月5日記

静かなお喋り 6月4日

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