風雲電影院

謝罪の王様

2013年10月22日
TOHOシネマズ日劇2

 面白かった。これだけ笑える日本映画って、最近ちょっとなかった。私は大満足。

 家に帰ってインターネットを見てみると、意外や面白くないという感想が多いのでびっくりした。特に多いのが最後のマンタン王国のエピソードがくだらないし笑えないという人が多いこと。そうかなぁ、私は好きだけれどなぁ。チープなセットで王国を表現したのも可笑しいし、、王国の王子(野間口徹)が映画に映り込んでしまうところのギャグとか面白かったけどなぁ。それまで伏線として使ってきた言葉がラストの鍵になるところが、まるで幼児レベルっていうのにも怒っているらしいけれど、、そのバカバカしさが、いい意味でくだらなくて好き。そこにすかさず『ビルマの竪琴』のパロディが入るっていう盛り込み方も好きだなぁ。

 結構テーマとしては大きい。日本人は、とりあえず謝ってしまおうとするが、外国ではそれは自分の非を認めることになるから、やってはいけない事というテーマが最初にある。そりゃ、国際的にはそうかもしれないのだけど、日本的習慣としてはどうなのかというと、謝って済むのなら謝ってしまった方がいいという考え方。これって、おそらく日本以外の国の人には理解できないんだろうけど、うまい潤滑剤なんだと思う。日本の場合、「謝れ」と言ってきている人は、相手に謝ってもらうと、それで気が済んでしまうところがあって、それ以上に事を荒立てる事はなかったりする。それはこの映画でも言っているように、謝るタイミング。そのタイミングを逃すと、ズルズルと人間関係は悪化してしまう。
 脚本を書いたクドカンは、『あまちゃん』の中でも、母(夏バッパ)と娘(春子)の間の長年のわだかまりを、母の方から謝るという形で、最終的に打ち解けさせている。そしてさらに実は母の方が一枚上で、クールに見せている母は娘の事を人一倍思っていたというウラが明かされる。ハードボイルドだったんよなぁ、あの部分は。

 ラーメン屋さんでクレームつけた黒島(阿部サダヲ)が、店側の対応に思うところを感じ、謝罪センターなる事務所を立ち上げる。いくつかの前半のエピソードはいろいろと考えさせられてしまう。セクハラを受けたと裁判にまで持ち込む女性、息子の不祥事で謝罪会見を開く俳優夫婦、別れた娘に謝罪ができないでいる父親。それらが、それぞれ裏側にいろいろと、その人その人の事情を抱えているというストーリーも面白いし、それらがパズルのように伏線で繋がっているという脚本も見事。

 結局、前半に日本人にとって謝罪とは何なのかという事を、いろいろなエピソードで問題提起しておいて、あのマンタン王国の部分はクドカンなりの結論。それをテレてオチャラケにしちゃってるんだと思う。

 ポップでスピーディーで、2時間なんてあっという間。ダレ場無し。こんな面白いコメディ、いままで無かったと思うけどなぁ。

10月23日記

静かなお喋り 10月22日

静かなお喋り

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