少年は残酷な弓を射る(We Need To Talk About Kevin) 2012年7月5日TOHOシネマズシャンテにて。 嫌な映画だ。 つまらなくはない。いや、面白い。でも嫌な映画だ。 人には反抗期というものが何回かあるが、生まれてからずーっと反抗期の息子がいたら、親はどう思うんだろう。しかも反抗する相手は自分の母親だけ。他の人には「ぼく、いい子」という態度を取るんだとしたら。 この映画のケヴィンのような子供が生まれて来てしまったとしたら、母親はノイローゼになるしかないだろう。母親役のティルダ・スウィントンは、終始やつれた表情を浮かべていて、まあそういう役なんだけど、こちらも気が滅入ってくる。 いやあ、実にこのケヴィンという息子は可愛くない。最初は、これは母親の育児ノイローゼの映画かと思ったが、そんなものではない。いったいなぜケヴィンが母親に反抗するのか、それも映画は明らかにしてくれない。ただただ母親に反抗を繰り返す嫌な息子としか描かれない。もう、観ている途中でうんざりしてくるくらい。 観客をこんなに生理的に嫌な気分にさせる映画も、それほど無いのではないか。ケヴィンがライチを食べるシーンがあるが、それに関連したある事件がバックにある。どうも私はこれを観てしまって、当分ライチを食べる気がしなくなってしまった。 とにかく2時間近い上映時間の間、ケヴィンの歪んだ性格が延々と描写され続ける。ホラー映画として作られていれば、これはこれで面白いのだが、なんだかねえ、とにかく嫌な映画としか言いようが無い。 他に終わりようが無かったのだろうけど、映画はケヴィンが母親以外の人物に牙をむく展開になって終わってしまう。なぜ?という疑問は返って来ない。おいおい、ケヴィン、本当にそれでいいのかい? それが母親への当てつけなのかい? 最近は、映画のエンド・クレジットが終わって客電が点くまで席に座っている人が多いが、クレジットが出て、そそくさと席を立つ人が目についたように思う。映画の余韻に浸るという感じでは無かったお客さんが多かったのではないだろうか? その辺がハリウッドっぽくない作りではあるのだが。繰り返すようだが、まあ、私にとっては嫌な映画だとしか言いようが無いんだよなあ。 7月6日記 静かなお喋り 7月5日 このコーナーの表紙に戻る |