サンダーボルト(Thunderbolt and Lightfoot) 2016年7月25日 三日月座BaseKOMシネマ倶楽部 1974年作品。おそらく前年の『ダーティ・ハリー2』Magnum Force の脚本を認めたクリント・イーストウッドが、マイケル・チミノを大抜擢して、脚本・監督させたのであろうこの映画。観た当時は、なかなか面白いアクション映画くらいに思っていたが、今観ると実にヘンテコな映画だ。 1974年といったら、もうアメリカン・ニューシネマの流れは終わったころのこと。それを、どう考えてもニューシネマっぽくないクリント・イーストウッドが主演して、それっぽいものを撮ろうとした感じがする。一応ロードムービーだし、タイトルからして、Bonnie and Clyde (俺たちに明日はない)や、Butch Cassidy and the Sundance Kid (明日に向かって撃て)を意識しているとしか思えないし、内容的にもアウトローコンビの物語。ラストに漂うのは『真夜中のカーボーイ』Midnight Cowboy とも共通する寂しさ。それに加えて追っかけてくる昔の仲間あたりのアイデアは『ゲッタウェイ』Getaway を意識しているようでもあるという、ごった煮状態。ニューシネマとも、ペキンパーともマックイーンとも、まったく別の路線を行っていたイーストウッドは、この映画のなかで浮いてしまっているようにみえる。 柏原さんに言わせると、「ひょっとしてマイケル・チミノってゲイなのかもしれない」という言葉に賛成すると、なんだかすべてがわかってしまった気がしてくる。『サンダーボルト』にも何人かの女性が出てくるが、その扱いが実に雑。セックスにしか興味が無かったり、やたら無愛想だったり。クライマックスの強盗シーンでジエフ・ブリッジズが女装するシーンではジェフ・ブリッジスに鏡を見させて、まんざらでもないという表情をさせる。 さらには、あの大傑作『ディア・ハンター』においてさえ、テーマは男同士の友情。結婚しているキャラクターもいたし、アメリカのシーンでは女性も出てきたが、ほとんど男同士の仲間の世界が描かれていた。 考えすぎかもしれないが、晩年のマイケル・チミノの写真を見ると、どこかオバサンっぽく見えるのも、気のせいなのだろうか。 ラストもジエェフ・ブリッジスに攫われて、イーストウッドはいいとこなし。イーストウッドって、こういう役に向いていない気がするし。 7月26日記 静かなお喋り 7月25日 静かなお喋り このコーナーの表紙に戻る |