『必死剣鳥刺し』 藤沢周平の『隠し剣孤影抄』『隠し剣秋風抄』は出版当時に読んでいるのだが、なにしろ30年も前。ほとんど忘れてしまった。『必死剣鳥刺し』はその中の一編を映画化したもの。 主人公の兼見三左ェ門を豊川悦司にしたのがまず成功している。ラストで闘う相手帯屋隼人正に吉川晃司というのもうってつけ。まあこのふたりの対決シーンもがなんといっも見もの。原作にある通りだったと思うが、小刀しか持っていない三左ェ門が、大刀を振りまわす隼人正とどう闘うかは、あっというアイデア。しかもその殺陣をみごとに見せた演出にも拍手だ。 そのあとの雨の中の闘いも息詰まるような緊張感に満ちている。そして、必死剣鳥刺しとはどんな剣なのかが明かされる。 とにかく原作がよく出来ているから、このラストまで至る物語も実によく考え抜かれていて、なぜ最後にこういうことになるのか、きっちりと伏線も張られているのに驚く。一見味方と思っていた人物が実は敵だったりするから面白い。 ちなみに私がこの映画を観たいと思った理由のひとつが、落語家の瀧川鯉昇が出ているから。鯉昇師匠といったら、弟子が「金がない」と相談に来たら、食べられる野草と食べられない野草を教えてくれたという逸話の持ち主。その瀧川鯉昇の役はどんな役かと思ったら、浪費家の藩主に倹約を進言する勘定方の役。なーるほどね。 2010年7月14日記 このコーナーの表紙に戻る |