風雲電影院

豆腐屋直次郎の裏の顔

2014年3月3日
三日月座BaseKOMシネマ倶楽部

 1990年、『火曜ミステリー劇場』枠で作られた一本。サブタイトルが『謎の女が仕掛けたワナ! 東北に逃げろ!!』。このあとさらに同じ企画で『帰って来た相棒・港、横浜、美女のワナ』、『時効まで一週間・波止場のカジノの金庫ねらえ!』の2本が作られ、その後テレビドラマ版全10話が作られた。

 主人公の直次郎(萩原健一)は月島の豆腐屋だが、裏では強盗稼業もやっている。赤いBMWに乗った謎の女(浅田美代子)から、サラ金強盗の話を持ち掛けられ、話に乗る。強盗はまんまと成功。サラ金の金庫には一億数千万円の現金があり、これを奪って北へ逃走する。ところが、これは女が仕組んだ一種の狂言強盗。この大金を取り返そうとサラ金の社員でヤクザ(寺田農)らが追っかけてくる。さらには別の線から直次郎を追っていた刑事(藤岡琢也)からも追いかけられることになる。

 以前、萩原健一と『傷だらけの天使』でも組んだ脚本の柏原寛司氏によると、もう一度萩原健一主演でという企画が持ち込まれたときに、ショーケンにスティーブ・マックイーンの顔が重なり、それでは『ゲッタ・ウェイ』をやろうかと思いついたとのこと。

 最初の方は、奥さん(渡辺えり子)もいて子供もいる庶民派の豆腐屋の亭主の様子からは、これがまさか『ゲッタ・ウェイ』に結びつとは思わなかった。それでも強盗の話を持ち掛けられて、現場を下検分に行ったり、プロ意識に欠ける若者が仲間にいたり、話を持ち掛けてきたのが素性がわからない女だったりと、なんとなくリチャード・スタークの『悪党パーカー』シリーズの趣きがあり、この話は、そっちの方に行くのかなと思わせるものを感じた。

 それが、そういわれてみりゃ、これは『ゲッタ・ウェイ』なんだと、展開が進むにつれ、だんだんにわかってきた。しかし、直次郎には妻子もいるわけだしね。『ゲッタ・ウェイ』はムショの外で待っていた昔の女と、強盗のあとにメキシコに逃げる話だったから、男の立脚点はちょっと違う。また原作の持つ悲劇的な結末とも違う。突然月島に戻って今までの生活っていうのが、テレビの2時間サスペンスなんですねぇ。おかげでシリーズ化にもなったわけだし。

 終映後、脚本の柏原寛司氏、監督の杉村六郎氏の解説対談あり。撮影時の裏話が聞けたが、それは「無かったことに」なので、ここには書けない。残念!(笑)

3月4日記

静かなお喋り 3月3日

静かなお喋り

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