『行きずりの街』 　地方の進学塾の講師をやっている波多野（仲村トオル）が、ある老人が看取ってくれる人もいないままに病院で死を待っているのを知る。この老人の子供はすでに無く、孫娘がひとりいるのだが、その子供は波多野の教え子であり、今は東京の大学に通っていることだけはわかっている。波多野は休暇を取って東京まで、その少女広瀬ゆかり（南沢奈央）を捜しに行くというのが導入部。 　東京へ出てくると、波多野の過去が明らかにされる。波多野は１２年前に東京の女子高校の教師で、卒業した生徒雅子（小西真奈美）とすぐに結婚したことから、周りから非難を浴びる。それに耐えきれなかったのか波多野は雅子と離婚すると故郷に帰り進学塾に就職したということがわかってくる。 　広瀬を捜している途中で、波多野は雅子に再開する。雅子の部屋に誘われた波多野は、雅子から非難を受けることになる。あのときは真剣だった。１８歳の少女だったが、心底から波多野を愛していたのだと。 　女性は男性よりも早熟だという。ティーン・エイジャーの女性にはどうやら同年代の男性は幼く感じられるという話を聞いたことがある。女性は十代でも恋愛に対して真剣であり、具体的であるようだ。そこへいくと男は１０代くらいではまだまだ幼いのかもしれない。恋愛に対する興味はあっても、具体的な生活のビジョンまで考えて恋愛をするなんて男は少ないに違いない。 　波多野は、ようやく広瀬を見つけ出すが何やら事件に巻き込まれているらしい。広瀬には角田という中年の男性の影が観え、波多野は広瀬は角田という男に騙されているのだと思い込む。 　一度は広瀬に逃げられるが、二度目に会った時、広瀬は角田を真剣に愛しているのだということを知らされる。 　なあるほど、ここで自分の過去とまた繋がってくるわけだ。恋愛とは年齢じゃないってことが、ようやくわかってくるのね。男ってダメだなあ。つくづくそう思うよ。自分も含めてね。 　それと同時に波多野自身の過去がクライマックスに向かって集約してく様は見事というしかない。 　強い男のハードボイルドってのじゃなくて、これは弱い男がようやく自分の弱さに気が付くって話なんだなあ。 　そして女はやはり強い。 ２０１０年１１月２５日記 このコーナーの表紙に戻る

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