風雲電影院

ゾンビ処刑人(The Revenant)

2017年9月5日
キネカ大森

 6年前に公開された映画。見落としていたが、ようやく捕まえることができた。

 ベルリンファンタでも上映されたようだが、ベルリンさんは別のスクリーンで上映していた『カウホーイ&エイリアン』の方を選択したようで未見らしい。

 イランでの戦闘で戦死したバート(デビッド・アンダース)の遺体が本国に送還され、葬儀が行われる。ところが土葬されたバートはアンデッドとなって甦る。墓から抜け出したバートは、真夜中に親友のジョーイ(クリス・ワイルド)のアパートの部屋をノックする。「誰だよ、こんな夜中に」 「バートだよ」 「誰だか知らないが、冗談はよせよ」と言いながらドアを開けると、まさかのバート。甦ったと知って家に入れて食事をさせようとするが、すへて吐き出してしまう。具合はどうなんだと訊くと、身体中が怠いと言う。
 病院へ連れて行くと、医者に肺の音が聞きたいからシャツを脱いでくれと言われる。シャツを脱いだら胸から腹にかけて死体解剖後の縫い跡があるものだから大騒ぎになり、慌てて病院を抜け出す。
 アンデッドになると人間の血を体内に補給しなければならない。ところが心優しいバートは人間を襲えない。病院に保管されている血液を盗みに入れば看護師に見つかってしまう。仕方なく血液強盗に乗り換えると、何型の血液が必要なのか言えと問いただされる。血液型なんてどうだっていいんだと言っても、看護師は「合わない血液を使ったら大変なことになる」とあくまで突っぱねてくる。
 このふたつの病院ギャグが私はすっかり気に入ってしまった。出だしの部分はややモタモタした感があるが、このブラックユーモアは私は悪くない気がする。

 さてどうやって人間の血を手に入れるか。次にふたりは夜中に車を走らせ、金をちらつかせてホームレスを車に誘い込み餌食にしようという作戦に出る。しかし警戒心の強いホームレスばかりで失敗。
 そんなとき、ドラッグストアに寄ったジョーイが車に戻ってくるところで黒人から拳銃を突きつけられてホールドアップ。なかなか立ち去らない強盗にバートが出て行くと強盗はバートに発砲。しかしアンデッドだから死なない。反対に強盗をノックアウトしてしまう。そんで車に引き摺り込んで、たっぷり血液をいただいて、死体はビニールに包んで川にドブン。さらにふたりは戦利品として新しく銃と、それにヤクまで手に入れる。
 これに味を占めて、街でホールドアップに会うと殺して血を吸って死体は川にドホン。銃とヤクのコレクションは増えるばかり。喜んだのは彼らだけでなく一般市民も。なにしろ街から危ない奴らが次々にいなくなっていくのだから。
 そんなことを繰り返しているうちに、ジョーイが撃たれてしまう。死にそうなジョーイの血をバートが吸うと、ジョーイはめでたくアンデッドとなって復活。もうこれで死なないで済むと、以前にもましてふたりでホールドアップ強盗狩りが始まってしまう。
 そこへとんだ誤算。バートに血を吸われて川にドボンだった男のひとりがアンデッドになって復習にやってくる。

 惜しいのはそれから。ならばそのアンデッド同士の戦いをじっくり描けばいいのに、バートのかつての恋人や、その恋人の友人まで絡んできて話は収拾不能。なんでそんにものまで入れようとしたんだろう。

 正確に言うと、バートたちはアンデッドというよりも、原題にある通りレヴェナントなんでしょう。「戻ってくる」 「帰ってきた人」という意味。このあとレオナルド・デュカプリオの『レヴェナント 蘇りし者』が公開されて、原題も同じ The Revenant だから紛らわしい
 それでラストシーンはというと、二重の意味でレヴェナントになってしまうのだけど、作者側は最初からこのラストを考えていてこのタイトルを付けたのか、収拾つかなくなってこんな嫌〜なラストになってしまったのか、ちょっと聞いてみたくなった。

9月6日記

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