November.6,1999 ネタバレ記事に注意したい映画『13F』
今年は、香港映画三本以外は、あとこれ一本しか見られなかった。ローランド・エメリッヒが制作して、ドイツ出身の新人監督に撮らせたというバーチャル・リアリティもの。この映画、へたなことを書くと、ネタばれしてしまうので、書くのが難しい。これからも一般公開に向け、メディアがいろいろ書くだろうが、きっとバラすところがあるはず。なるべく読まない方がいい。
また、エメリッヒだからといって、派手なものを期待すると、裏切られる。しかし、決してつまらなくはない。1937年を再現したバーチャル空間と現実空間を行き来しているうちに、事件が起きてしまう話で、脚本は割と良くできている。SFXも地味で見過ごしそうなのだが、うまく利用している。
Novemver.5,1999 香港映画のまたまた新しいパワー
この夏に香港で公開されたばかりの『GEN−X COPS 特警新人類』を早くも見せてくれるなんて、やっぱりファンタは偉い。上映前に、主演の三人がステージに上がる。ニコラス・ツェー、スティーブン・ファン、サム・リー。三人とも私は知らない。それなのに、またまた黄色い声が上がる。女の子達には、もう彼らの情報は伝わっているのだろうか? だって三人とも、ほとんど新人で、彼らの映画なんてまず見た事もないはずだ。香港のスターなら誰でもいいのか―――と少々やっかんでみたくなる。
上映が始まって、最初のうちは、この落ちこぼれ警官三人組の魅力がさっぱり感じられず、なんでこんなのがいいんだろうと思っていたのが、話が進むうちに、どんどんこの三人に魅了されていった。これは、かつて、やはりファンタで『古惑仔』シリーズの一作目を見たときと似ている。あのときも、チンピラ集団がだんだんと魅力的に成っていったではないか。この『GEN−X COPS 特警新人類』もシリーズ化の話があるらしく、まったく香港ってところは、新人が出てきてパワーで面白いものを作るエネルギーがある。
毎度悪役の日本人だが、仲村トオルは見事に敵役を演じている。今までも何人もの日本人俳優が敵役を演っているが、その中でもピカイチ。魅力ある役作りだ。
Novemver.3,1999 そりゃないぜ
舞台挨拶にイーキン・チェンが現れると、盛大な拍手と黄色い声が飛ぶ。香港映画ファンは圧倒的に女性が多くなった。それにひきかえ、そのあと千葉真一の登場では反応がイマイチ。今の若い女性は、千葉真一のカンフーものなんて見た事もないんだろうな。どっちにしろ、イーキンに比べちゃうと、おじさんになんて興味ないのか。凄いアクション・スターだったんだぞ彼は! 今もクエンティン・タランティーノ、深作欣二と組んで、新作を準備中だと挨拶。イーキン・チェンも千葉真一には尊敬の念を持って接していた。イーキンは今月中旬まで滞在するという。何と日本で映画を撮っているという。
こうして上映が始まった『風雲 ストームライダーズ』だが、私は中国語英語字幕版ビデオCDで一足先に見ている。日本語字幕版を楽しみにしていたのは言うまでもない。ところが唖然としたのは、ファースト・シーン、雲(アーロン・クオック)の子供時代のエピソードがバッサリとカットされている。いきなりタイトルから始まってしまったのだ。そのタイトルの下に『インターナショナル・バージョン』とある。嫌な気分になっていく。その後も、雄覇(千葉真一)が風(イーキン・チェン)の親を殺すシーンが総てカット。この辺は、総てナレーションで済ましてしまうという乱暴さ。その後もバッサバッサと切りまくり、二時間あったオリジナル版が一時間半しかない。そのおかげでスーチーの役なんて、ひどく中途半端。前半を大きくカットしてしまったので、ラストは盛り上がらない。なんだか損をした気で会場を後にした。
Novemver.1,1999 痛みが伝わってくるアクション
今年の東京国際ファンタスティック映画祭初日は、香港映画三本。このところ、香港映画の人気が高いせいか、混乱を避けるためなのか、この日だけ全席指定。のんびりチケットぴあへ行ったものだから、三本とも後ろの方の席しか手に入らなかった。
一本目は、ジャッキー・チェンの新作。と言っても、間も無く公開の『フー・アム・アイ』ではなく、その後に撮った、『ゴージャス』。上映前に、ジャッキーのメッセージとインタビューを撮ったビデオが、スクリーンに映し出された。
メッセージによると、「この映画は、今までの作品と違った自分を見てもらいたくて撮ったもので、ラブ・アクションというようなものです」という。確かに、ジャッキー・チェンの映画というと、まず見せ場のアクションが先に考えられ、そのシーンを繋ぐようにして、後からストーリーを組み立てたようなものが多かった気がする。その頂点だったのが『フー・アム・アイ』で、今回は、まずストーリー先行だったようだ。
このところ、大の売れっ子、スー・チーとの恋愛話を縦軸にして、あまり大掛かりなアクション・シーンは減らしている。と言うと、つまらなそうに思えるが、これがなかなか面白い作品に仕上がっている。見て損はない。派手なアクションの代わりに、基本に戻って、一対一のストリート・ファイト・シーンに見ごたえがある。2回にわたる対決シーンは、かなり長い。そして見ていて、「うわあ、痛いだろうな」という感覚がヒリヒリと伝わってくる。こんなにじっくりと撮ったのは、久しぶりではないか。
ちなみに、チャウ・シン・チーがカメオで出てくる。このシーンが大爆笑もので、このシーン、シン・チーが自分で即興で考えたのではないかというくらい可笑しい。香港では、今年の旧正月に『ゴージャス』とチャウ・シン・チーの『喜劇之王』がそろって公開されていた。『喜劇之王』にもジャッキー・チェンがカメオ出演していたから、交互に顔を出し合っていたことになる。粋なことやるものですね。