September.18,2000  モニターシェルフ

「うわ―――っ!!!!」

「うわーっ! びっくりした。何だ大家さんじゃないですかい? そんな大きな声出すもんだから、驚いちゃったじゃないですかい」
「ばか! 驚いたのはこっちだ! デスクの上にパソコンを置いたらば一杯で何もできなくて困っていると、おめえが言うから来てやったというのに、何だこれは!」
「何だって、何がですかい?」
「おい、おめえ、いったい今何をやってたんだ?」
「へえ、ちょうど今から毎朝恒例のホームページを作ろうとしてたとこなんですがね・・・。ワイド・ショーをミニテレビで見ながら、構想を練っていたというようなわけで・・・」
「構想だあ!? おめえの、くっだらないホームページに、えっ?、いってえ、どこに構想が必要だ! 毎朝毎朝行き当たりばったりの意味のない事ばかり書きやがって!」
「へえ、すいません」
「すいませんじゃねえや、それに第一、おめえもう[毎日更新]は、今月の3日でやめたんじゃねえのかい? もうあれから2週間も経っているんだぞ! いまだに毎日やってるじゃねえか!」
「へえ、あ、あのブレーキが・・・」
「な、何だと?」
「いえ、別に」」
「いい加減にしろよ! 読みに来てくれている人達だって、しまいにゃ、怒るぞ!」
「へえ。ところで大家さん、いってえ何を驚いたんです?」
「そうだ、そうだ、おめえが[構想]なんて事ぬかしやがるから、忘れてた」
「歳ですねえ、大家さんも。アルツハイマーかもしれませんねえ。いやだいやだ、歳は取りたくねえ」
「こ、この男は! 言わせておけば・・・、ううう・・・」
「おっと、血圧にさわりますぜ。こんなところで脳梗塞なんて嫌ですよ」
「て、てめえ! てめえがそんな了見ならばいい。デスクの上を何とかしたいと言い出したのは、てめえなんだからな、わしはもう帰る!」
「ま、待ってくださいな、大家さん。大家さんだけが頼りなんですから」
「しょーがねえ奴だなあ。大家といえば親も同様、店子といえば子も同様」
「そんな汚いツラの親もっ」
「いいか、その先言ったら、今回は手加減しない左ストレートが飛ぶぞ! で、ナンだって? このうえ、さらにビデオデッキを置きたいいんだって?」
「へえ、あっしのパソコンは、ご存知のように、FMやCDやMDやDVDだけでなく、テレビも見れるわけです。それでモニターにミニテレビを出して、それを見ながら、ホームページ打っているわけです」
「おめえは、ホームページを打つのに、そんなことをしながらやっているのか! だからいつまで経っても、禄でもないホームページしか出来ないいんだよ!」
「それでね、あっしが作っている朝って、テレビはワイドショーばっかりなんですよ。たまには映画でも見ながらやりたいじゃないですか。それでビデオを接続したいんですよ」
「まったく、開いた口が塞がらないというのは、おめえのことだ。よし、わしが何とかしてやろう。いいか、まずはその食べかけのドーナツやら、チョコバーやら、ポテチやら、コーラやら、シェイクやらをデスクから下ろせ! いったい何だと思ってるんだ、まったく。第一、ジャンクフードばっかりじゃないか!」
「いやですよ、これ、あっしの朝食とオヤツなんですから」
「てめえがやらないんなら、わしが代わりに、全部ゴミ箱の中に、こうやってと」

バザバサバサバサ

「ああ、ナオちゃんまで!」
「何だ? ナオちゃんって?」
「その、モニターの上に置いておいた雑誌のヌード写真の子」
「ばか! こんなものを置いておくんじゃない!」
「さようなら、ナオちゃん。短い間だったけど、君の裸眺めながらホームページを作れて、僕は幸せでした。恨むんなら、大家さんを恨んでね。ああ、ナオちゃん!」
「ばか! それにしても、ひどい部屋だねえ。デスクの上といわず、部屋中、本とCDが積み上げてあって、足の踏み場もねえじゃないか。とりあえずは、デスクを何とかしようじゃねえか。ほら、わしが通販で見つけて取り寄せてやった[モニターシェルフ]だ」
「スチール製の網とポールが入っていますね」
「そうだ。これを組み立てて、モニターの周りに置き、ヤグラを作るって寸法だ。早くおめえも手伝え!」
「へえ、こうやってポールをこの網に通してっと」
「よしよし、これで完成だ。これでモニターの上にビデオデッキを乗せるスペースができただろう」
「うわあ、こりゃあいいや」
「よし、モニターとパソコン本体を左にずらして、このモニターシェルフで囲むんだ」
「よいしょ、よいしょ」
「よしよし、ではビデオデッキを乗せてみな」
「へい、これでよしと。これをモニターに繋いでっと。・・・・・・・・・・・・・・・。よし、ではビデオの電源を入れますよ。うわあい、映った映った!」
「いいか、ビデオで映画を見ながらホームページもいいが、もう少し真面目に作れよ。そら、そのさらに上にスピーカーを乗せてごらん。よしよし。これでいい」
「あのー、スキャナーはどうしましょう?」
「ああ、そういえば、おまえ、スキャナーも持っていたんだったな。でも、どこに置いてあったっけ」
「デスクの左に積み上げた本の下敷き」
「げっ! おまえ、どうやってこれを使ってたんだ?」
「必用なときは、本の山を一度どかして使って、終わったらまた本の山の下敷き」
「しょーがねえ奴だなあ。よし、そのスピーカーの間に置きな。よしよし、そうだそうだ。これで、デスクの右側も空いただろう。書き物だってこれで出来るし、飲み物を置くことだってできる」
「ほんとだ。でも、大家さん、この散らばった本はどうしましょう?」
「そう思ってな、本箱をひとつ買ってきてやったぞ。この中に入れなさい」
「へいへい、これはいいや。でもね、大家さん、こんな小さな本箱じゃあ入りきらないよ」
「ちょっと見せてみなさい。どれどれ、――――――なんだ大半がエロ本じゃないか。捨てろ捨てろ!」

バザバサバサバサ

「あああ、大家さん、そんな殺生なあ」
「いいか、この本棚にはパソコン関係の書籍しか入れるなよ!」
「シクシクシクシク」
「ぼうや、何泣いてるの?」
「あのね、大家さんがね、ぼくちゃんの・・・、大家さん、これは『ホームページ開設までの涙の記録』じゃないですか? 人のこと乗せないで下さいよ」
「ごめんごめん。1年ぶりでつい懐かしくなってな」
「この大量のCDはどうします?」
「CDラックを買ってくるんだな。いいか、かといって、無制限にCDをため込むんじゃないぞ。『「捨てる!」技術』てえ本を参考にしてな。聴かなくなったCDは中古ショップに持っていくんだぞ!」
「へえ、また公安にオウムと間違えられなければいいけど・・・」
「どうだい、見違えるように整理が出来たろう!」

「どうもありがとうございました、大家さん。あとですね・・・」
「何だ? まだあるのか?」
「へえ、プリンターは、どこに置いたらばいいんでしょう?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

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