January.29,2001 爆笑問題こそ東京漫才の最先端だ

1月21日 第260回花形演芸会 (国立演芸場)

        三遊亭天どん。前座はまたこの人。今月7日の[落語ジャンクション]で見たばかり。去年もこの花形演芸会にも出ていて、そのときは古典落語をやったのだが、どうにも退屈した。「古典と新作、両方用意してまいりましたが、どちらがよろしいでしょうか?」と客席にアンケート。圧倒的に新作をやれという希望が多く、「ドツボにはまっても知りませんよ」と前置きして始めたのが、会社の合併ならぬ家族合併という、かなりシュールな話。片方の長男が合併により格下げされ、「今日からお前の地位は犬だ」と宣言されるあたり面白いのだが、客はちょっと引いていたような・・・。15分の持ち時間を「『合併家族』の序でございます」と言って10分で引っ込んでしまったから、まだ先があったらしい。

        天どんの兄弟子の三遊亭小田原丈が高座に上がる。「私の持ち時間は20分なのに5分余して天どんが下りてしまいまして、5分穴埋めしなければならない」と笑いながら、病院に入院したときのエピソードを語る。この人も古典も新作も演る人だが、この日は新作。自分の血液型はABだと述べ、お笑い芸人とオカマにAB型が多いとひとしきりAB型についてマクラを振る。かくいう私もAB型。この人のいうこと分かるなあ。そのまま話は、AB型の男がフィアンセに連れられてフィアンセの父親に会いに行く一席に入る。この父親、大のAB型嫌い。フィアンセからAB型だということはくれぐれも内緒にしてくれと言われて、父親の前で四苦八苦する。AB型の特徴は、二重人格。何を考えているか分からない。八方美人、人との付き合いに距離を置く。わかるなあ。私はこれらのことに、几帳面な割に大雑把という項目を付け加えたい。

        冷やし中華はじめました。現役大学生三人組のコント。小学校時代の先生が交通事故で亡くなって、そのお通夜に行く同級生の会話。テーマがテーマだけに、けっこうブラック。ただし、ちょっとテンポが悪いような気がする。後半のショート・コントをズラリと並べたコーナーの方が良かった。

        一龍斎春水。麻上洋子の芸名で声優もやっている変り種の女性講談師。『宇宙戦艦ヤマト』の森雪、『銀河鉄道999』のガラスのクレア、『シティハンター』の野上冴子と、次々に声を出してみせ、30代くらいの観客を唖然とさせる。この日の演目は『岩亀楼亀遊(がんきろうきゆう)』。黒船来航のおり、異人に騙されて財産を取り上げられ破算した父を救うため、遊郭に身を静めた亀遊花魁の話。「あちきは死んでも異人の客はとりません」という亀遊と、その亀遊に惚れて身請けしようとした外国人。そして、悲劇の結末へ。なんだかよく分からない話だなあ。

        林家小染。上方落語の定番『三十石』。登場人物が多く、その演じ分けが難しい上、船頭唄を披露する演出もあるために、相当に力がある人でないと勤まらない。小染はさすがに上手い! 東京でも演る人はいるが、やはりこの話は上方の人の方が得意のようだ。

        中入り後、アンジャッシュが登場。児島が電話をかけている。「おやっ? このコントは、昨年やはりここで演ったネタなのでは?」と思ったら、ちょっと違っていた。前回のは、児島が渡部の妹と結婚することになるが、付合っていることをまだ渡部には内緒だったという設定。そこからトンチンカンな会話が進行するのだが、これは私は気に入っていた。そして今回持ってきたのが、児島が渡部のおかあさんと結婚することになるが、付合っていることを渡部には内緒だったというパターン。これがまた前回のコントを知っているだけに、妙に可笑しい。これぞ、見続けているいる者の特権か。

        本来はここでポカスカジャンが入るはずだっのが、スケジュールが合わなくなってしまったらしくトラ(代演)でX−GUNが入る。字だけ見ると[エックス・ガン]かと思うが、ご存知のように[バツグン]。漫才のような掛け合いから、コント『追っかけ』に入る。リンク先に内容は書かれているが、ちょっとこれだけでは何のことだか分からないかもしれない。実体験を元にしたものを膨らませたのだろうが、これが爆笑もの。太った西尾のひょうきんなキャラクターが生きた傑作。

        爆笑問題。いったい今、爆笑問題の舞台を見られる場所が、ここ以外にどこにあるというのだろう。『花形演芸会』は、いつも当日券で余裕で見られるのだが、この人達が出るときだけは例外。前売りは即日完売になる。なにしろ、テレビのレギュラー番組の数が殺人的に多い超売れっ子。他にラジオや雑誌メディアまで、毎日どこかに出ている。ただ、この人たちの笑いは放送コード、ギリギリのものが多く、是非一度ナマを見てみたいと思っていたのだ。

        圧倒的な拍手に迎えられてふたりが登場。田中が時事ネタを振り、それに太田がブラックな笑いをぶつけていくというパターンでテンポよく進めていく。なにしろ、私はあまりテレビを見てないので、てっきり昔のツービートのような漫才を想像していたら、ちょっと違った。ツービートは、たけしが一方的に話し、それにきよしが相槌をつく、餅つきのような漫才だったのに対し、爆笑問題は相方の田中がよく喋る。太田の笑いを返して、ポロッとより過激な笑いを口にしてしまうあたりが、さすがにナマの面白さ。ツービートはやがて相方が必要ないことに気がついて解散してしまうのだが、こういう形式の漫才なら解散はないなと、ちょっと安心。色物協会に加盟していないから、普通の東京の寄席には出られないが、この人達こそ、東京漫才の進化形だと私は信じているのである。


January.23,2001 第一部はどうでもいいような・・・

1月20日 コロッケ新春特別公演 (中日劇場

        去年『名古屋嫁入り物語』を名古屋まで見に行ったおりに、石見榮英さんに、「来年コロッケでまたここに出るから、よかったら見においでよ」といわれ、コロッケを一度ナマで見たかったこともあり、チケットを買った。電話予約開始当日、20分かかってようやく繋がったと思ったら、補助椅子しか空いてないという。凄い人気だ。補助椅子でいいからと、プラチナ・チケットを手に入れた。

        第一部、『コロッケ版 雪之七丞変化』。1時間40分の芝居だ。さぞや、あの有名な原作を面白い喜劇として書きなおしているに違いないと期待していた。この期待は、芝居が進むにしたがって、「?」という気持ちに変わっていった。ところどころにギャグが挟みこまれているものの、基本的にはどうやらマジでこの話をやっているのだ。

        『雪之丞変化』は何回も映画化や舞台化がなされているが、なんといっても極めつけは、長谷川一夫であろう。女形もできる二枚目俳優が主役を張って、初めて成立する世界だ。どう考えたって大きな顔で大ぶりな顔の造作をしたコロッケでは、マジにやるには無理がある。いっそのこと徹底してコメディにしてしまえばいいものを、脚本があまりにも原作に忠実に書かれているものだから、どうも面白くならない。終演後、楽屋で新田純一さんにうかがったところ、新田さんとコロッケがスローモーションで闘うところのアイデアは、コロッケ自身のものだったそうで、元々脚本には無かったという。ここの格闘シーンに鐘の音を被せるというギャグは面白いと思ったのだが、やっぱり現場で加えられたものなのか。

        コロッケの相手役として、コロッケの三分の一くらいの小顔の、いとうまい子を持ってきたというのも面白いのだから、その対比の面白さも、もっと強調してもよかったのに・・・。正司照枝のような芸達者のコメディアンも混じっているが、もっと、コメディの出来る役者を揃えて欲しかったという気もする。その点、新田純一は、よくコメディについていっていたし、特筆すべきは佐藤あつしの存在。この人のことは、よく知らないのだが体がよく動くし、コメディのセンスがあると思う。長門勇が、『三匹の侍』でとった杵柄か、槍をブンブンと回してみせ、健在ぶりをアッピールしてくれたのも嬉しい。

        第二部、『コロッケものまね大全集2001』。第一部の鬱憤を晴らしてくれるような楽しさに満ちたステージだった。休憩時間が終わってほとんどの人が席に着いたところで、客席後方から「お客さん、困りますよ、もう第二部が始まるんですから」とガードマンに追われているお客さんがいる。これが実は役者さん。客に扮した役者が舞台に上がろうとしているところで幕が開く。郷ひろみの『GOLDFINGER`99』に載せてダンサーが舞台に上る。ガードマンが客を取り押さえたところで、コロッケが入って歌に入る。流れるような、ウキウキする導入。

        続いて着替えてくると、すっかり美川憲一になっている。『さそり座の女』を歌いながら、客席に下りてきてお客さんと握手会。私も通路際の補助席だったので、バッチリ握手してもらえた。コロッケの手って、すごく柔らかかった。

        続いては、淡谷のり子。物凄い元気な淡谷のり子に場内大爆笑。

        3分間クッキングの無言コントを挟んで、この人にこんな童謡を歌わせたらのコーナー。和田アキ子の『ずいずいずっころばし』。八代亜紀、堀内孝雄の『ダンコ三兄弟』。北島三郎の『おさるのかごや』。所ジョージ、田村正和の『ぞうさん』etc. 軽妙なトークを交えて進めていく。また、コロッケのトークが上手い!

        お得意のネタ、『ロボツト五木ひろし』。テレビではよく見るのだが、ナマで見るとまた格別。突然に顔がタレ目になるのはどういうワザか!

        ラストは、『ひとり紅白歌合戦』。岩崎ひろみ、ちあきなおみ、瀬川暎子、森進一、細川たかし・・・お得意のネタがズラリ。美空ひばりのところで、客席に挨拶。「ひとつひとつ、着実にこれからも頑張っていこうと思っています」と言ったところで、「コロッケ、頑張れよ!!」の声。客席が盛り上がる。あとから聞いたら、この声をかけたのは、石見さん。「なあんだ、サクラなんですか」と言ったら、「これが演出というものなんだよ」と胸を張っていた。

        アンコール。ヒップホップでアレンジした北島三郎の『祭り』。グランド・フィナーレにふさわしい盛りあがりでした。

        ところで、来年の1月の中日劇場はまた『名古屋嫁入り物語』だとか。今度は、時代劇バージョンとのことで、面白そう! また来年も名古屋へ行くぞ!


January.18,2001 笑いだからこそ丁寧に演らなくちゃ

1月7日 落語ジャンクション (なかの芸能小劇場)

        前説で三遊亭新潟とモロ師岡が、普段着のままで舞台に立つ。話題は当然のごとくに桂三木助の自殺の話題へ。年末の池袋演芸場での事件が引き金になったのではないかという憶測が仲間内では囁かれているそうだが、あくまで憶測の域を出ないので、ここでは話せないと前置きをしたあと、新潟は三木助の葬式の模様をひとくさり。これがまた、かなりブラックな内容で、自殺の原因を語るよりも危ない。ちなみに私が三木助の高座を見た最後は、去年の上野鈴本8月中席夜の部。名前が大きすぎたとよく言われるが、どうして先代にはない独特の世界を持った人で、私は大いに期待してたのだが・・・。

        三遊亭天どん。円丈の弟子。これで前座生活4年目の正月を迎えたという。高座馴れした分、ちょっと芸が荒くなっているのが気になる。頑固親爺のラーメン屋の話というのを演ったが、どうにも面白くならない。それというのも話し方が乱暴なせいではないだろうか。とても雑な印象を持った。いつまでも前座でヤケになっていないか心配。もうすこし丁寧に落語を演ればいいのにと思う。

        楠美津香。モロ師岡の奥さん。こちらも、ひとりコントを演る。目が痛いような真っ赤な着物姿で登場。座布団に座って話し出すから、「あれ? 今日は落語を演るのかな?」と思ったらこの衣装は挨拶だけ。「いつもは逆ストリップと言って、衣装を着ていくところをお見せしていますが、今日は逆の逆ストリップ」と言うなり、サンタナの『哀愁のヨーロッパ』をBGMに真っ赤な和服を脱いでいく。ほとんど、パッパッと仕事のための着替えという感じで色気なし。時々思い出したように焦らす素振りを見せるたかと思うと、またパッパッと脱いでいくところが可笑しい。

        下に着ていた服に長い半纏をはおり、鉢巻をすると、女性暴走族(レディース)に変身。とにかくこの人のコントは、言葉の洪水で、ぼんやりしていると遅れをとる。こちらも真剣に耳をそばだてる。もうこちらが笑っている暇なしに、演者は次のギャグに行っているようなところがあり、面白いんだけど、もう少しテンポを工夫すればなあと、惜しい気がする。

        三遊亭新潟。今でも貧乏だが、もっと貧乏だったころの話をマクラにふり、この日の話は、貧乏な三人の若者が歌舞伎町の高級パブに行って、飲み逃げしようという計画を立てて、乗りこんだもののとんだ事件に発展してしまう話。この人の話は、結構行き当たりばったりなのがあったりして、惜しいなあと思うことがあるのだが、これはよく出来ていた。始めの方にふっておいた、いくつもの伏線が次々と効いてくるのには驚いたと共に、快感でありました。

        モロ師岡。この日のひとりコントはソムリエ。この人の舞台を見るのはこれで3度目だが、今回のネタが一番良かった。無表情に客に応対するソムリエと、内面の心理を交互に表現する手法に笑い転げた。

        柳家喬太郎。「寄席の初席興業というのは、出演者がやたら多いものだから、ひとりの持ち時間が6分なんて状態なんですから。とてもまともにネタなんて出来ない。小話をいくつか演って引っ込んじゃう人とか、雑談で終わっちゃう人ばかり。志ん朝師匠ですら、下ネタの雑談演って引っ込んじゃうんですから、一度聴かせてあげたいですよ」と、鈴本から駆けつけてきて、ほっと一息なのだろう。マクラが長い。「もうこうなったらオマケで、私が初席で演っている高座をそのままお見せしましょう」と6分の初席用のものを見せたあと、本題の話に入る。私は初めて聴くのだが、これはどうやら噂で聞いたお得意の『ハワイの雪』。しみじみといい話でした。


January.14,2001 落語を聴いて柔らかい頭になろうよ

1月6日 志の輔らくご NEW YEAR SESSION #3 (サントリー小ホール)

        立川志の輔の、今年最初の独演会。大ホールの方では、どこかのオーケストラがラベルの『ボレロ』を演っていた。志の輔、マクラで「不思議ですよねえ、あれ2時間くらい演っているんでしょう? その間、誰も一度も笑わない」 クラシックで笑う人はいないって!

        まずは前座、立川志の吉。演目は『牛ほめ』。父が息子の与太郎に、新築した伯父に挨拶に行かせようとする。「行ったら、家をほめるんだぞ」とほめ方を教え込む。「家は総体桧づくりでございますな。畳は備後の5分べりで、左右の壁は砂摺りでございますな。天井は薩摩の鶉杢で。結構なお庭でございますな。お庭は総体御影づくりでございますな」 ついでに牛もほめろと「天角、地眼、一黒、鹿頭、耳少、歯合でございます」 もちろん、こんなことを与太郎が言えるわけがない。とんちんかんな会話になるという一席。それにしても、もうこんな言葉誰も分からないよね。こういうのを前座に演らせるのも酷だけれども、口慣らしですね。

        替わって志の輔、一席目。今年のテーマは「おのれ自身を笑え」ですねとマクラでとふり、この人の新作らしい話に入る。こちらで勝手に『親の顔が見たい』とタイトルをつけた。100点満点のテストで5点をもらった息子と一緒に父親が学校に呼び出される。「81個のみかんを三人で分けるには、どうしたらいいでしょう」という問題。息子の答えは「ジューサーでジュースにする」 そんな答えはないだろうと父親が叱ると、「だって三人で公平に分けようとしたって、みかんには大きいのとか小さいのとかあるでしょ。中には甘いのとか酸っぱいのもある。だからジュースにして分ければ公平でしょ」 うーん、息子の意見にも一理あると感心してしまう父親と先生。志の輔、新作も上手い!

        ゲスト。筝(琴)、三絃(三味線)、尺八の若手奏者6人による演奏。1曲目が『尾上の松(抜粋)』。正月らしい気分になったところで、2曲目『世界の民謡メドレー2』で和楽を楽しく聴かせてくれる。

        志の輔二席目。こちらは古典の『ねずみ』。小さな旅館に逗留した左甚五郎が、一晩かけてねずみの彫刻を彫る。甚吾郎が去ると、このねずみが生きているように動くというので評判になり、宿屋が大繁盛するという話。志の輔の『ねずみ』も以前聴いたことがあるが、もともと人情話的な要素もある話なのだが、今回は所々に笑いの演出を増やし、より楽しくなった。この話のオチは私の大好きなもののひとつ。


January.9,2001 『ゴジラ×メガギラス G消滅作戦』タイトル前8分を再現

1月3日 落語21 (プーク人形劇場)

        渋谷ジャンジャンでやっていた『実験落語会』『放送禁止落語会』の後を受けて始まった会。当然、新作落語ばかりがズラリと並ぶ。

        快楽亭プラ汁。新聞勧誘員をネタにした話。つまらなくて眠くなってくる。まだまだ勉強してきてください。

        春風亭昇輔。着物を新調しようとしたが金がない。ふと通販のチラシを見ると、なんと羽織、袴5点セットが9800円で買えるという。それでさっそく注文して着てきたのがこれですと、着ている着物を説明する。何と袴の下の着物は腰のところまでしかない。袴をはいていれば分からないというのだろうが、凄い着物があったものだ。そんな貧乏話のあとで入ったのがセミのカップルの話。つまらなくて、やはり眠くなる。勉強してきてください。

        さあて御贔屓、神田北陽が高座に上がる。この人、講談の人だが新作落語もやるという変わった人。声が講談で鍛えてあるから、通りがいい。前のふたりが短く演って引っ込んでしまって、時間がたくさんある。しかも、後の出演者が到着していない。年末は6分なんていう持ち時間の仕事ばかりで欲求不満だったと語り、年末年始の出来事を雑談風に話し始めたら30分以上も話していた。これが抜群に面白いのだから凄い。結局ネタに入らないまま、「新作ネタを用意してきたのだが、時間が無くなってしまいました」と、オアトと交代。

        柳家小ゑん。この人の18番の名作『ぐつぐつ』が始まったのだと思っていたら、その姉妹編の『しんしん』だった。『ぐつぐつ』は売れ残ったオデンが鍋の中で交わす会話の話だが、こちらは売れ残ったスシネタがカウンターの冷蔵庫で交わす会話。『ぐつぐつ』よりも駄洒落が多い。客が「コハダ握ってくれ」 「ええっと、コハダ、コハダと。コハダをどこに置いたかなあ」 「ほら、そのカドのところにあるじゃないか」 「ああ、コハダの曲がり角」といったのが続く。散々駄洒落を飛ばした客が帰って、スシネタ達の言う言葉がオチになる。「あっ、あの客帰ったね」 「ええ、ネタが尽きました」

        春風亭昇太。新作一本の人だったが、昨年は古典で賞を取った。それが落語芸術協会の文治師匠には気に入らないようだとのマクラで笑わせて、ネタに入った。おじいさんが過去のことを、ああすればよかった、こうすればよかったと後悔している。そこへ盆栽の精が現れ、タイムワープさせて過去に戻らせてくれる話。過去に戻って過去を修正しようとしても、やはり碌なことが無かったという結末。笑いの中にも、人生なるようにしかならないという現実を描いて、面白かった。

        林家しん平。何とコンバット姿で、匍匐前進をしながら登場。ゴジラ最新作『ゴジラ×メガギラス G消滅作戦』が面白いと力説。何とこの映画のタイトル前8分間を落語で再現してみせた。生嶋もこの映画をほめていたし、私も見たくなり、翌日映画館にかけつけたのは言うまでもない。確かに面白いです、今回の。細かいアラは多いけれど、スタッフが本気になっているというのが伝わってきた。もっとも、しん平の落語での再現は実際の映画よりも面白かった。

        林家たい平。不況の寄席業界。関係者が集まって、デズニー・ランドに対向して、根津にネズニー・ランドなるものを作って、客を呼ぼうとする話。すいません、今回のは私には面白くなかった。オチもなし。オチくらい考えてきてね。

        三遊亭円丈。新作派のボス。軽いマクラだけでスッと入ったのが、ウワサだけは聞いていてめぐり合えなかった『哀しみの大須演芸場』 名古屋に実際にある大須演芸場をドキュメント・タッチで描くこの話、ウワサ通りに面白い。一度、潰れる前にこの演芸場に行っておかなければ。

        この日、桂三木助自殺。誰からもこの話題が出なかったが、本当に知らなかったらしい。夜のニュースで知った人が多かったと聞く。


January.5,2001 田村正和には華がある

1月2日 田村正和座長公演『新・恋山彦』 (新橋演舞場)

        初日の舞台を見た。4年前の『恋山彦』の全面改訂版である。もっとも前のは見ていない。前回のものが田村正和の体調が悪かったこともあって、田村自身納得がいかず、今回の改定版になったという。殺陣の手数を増やし、舞台美術を改めることにより暗転を減らし、テンポを出したという。

        吉川英治の原作は読んでいないが、年末に田村正和のおとうさん坂東妻三郎の演った映画『恋山彦・総集編』をNHK−BS2で見た。これがまた総集編であっただけでなく、フィルムの状態が悪く、特にセリフがよく聴き取れない。ストーリーをよく理解できないまま見終わってしまった。今回舞台を見て、ようやく話が分かった。

 

        第一幕は、なるほどこうやって舞台で見てみても分かり難い。ほとんど設定の説明だけに終始してしまうので、ちょっと退屈する。見せ場は最後にやってくる。平家の落人伊那の小源太(田村正和)が江戸城に乗りこみ、将軍綱吉と対面。話し合いが物別れに終わり、小源太が上の写真のような長袴姿で薙刀を持って闘うシーン。坂東妻三郎の映画版では、縦の構図で天守閣の上に闘いながら登っていくというのがスリリングだった。しかも天守閣付近は狭く、薙刀に長袴は不利極まりない。舞台はこの点、この感じが出せないのが惜しい。どうしても上へ上へというのが見せられないし、舞台の広さが逆に災いしてしまう。それでもこの小源太という役、田村のまさにはまり役で、平家の落人という品のよさが見事に出ている上、こういうニヒルな感じを出せる役者は、そういないだろう。

        逆に心配になっていたのが、二幕目に入ってから演じる二役目の島崎無二斎。こちらは江戸っ子の町道場の師範。しかも世を拗ねた飲んだくれ。ちょっと田村正和らしくない役どころだ。

        酔っ払って登場する始めのうちは、ろれつが回らないという設定もあって、セリフが聴き取りにくい。参ったなあと思っていると、後半酔いが醒めたあたりから良くなった。下劣な男を演じるのはやはり坂東妻三郎の方が上手いが、どうしてなかなかこれは田村正和の新境地。いけますよ、島崎無二斎役も。

        映画の方では見せ場として、小塚っ原で処刑されようとしている小源太の妻を、罠と知りながら小源太が助けに行くシーンがあるのだが、舞台版ではこれをカット。う〜ん、カットかあ、惜しいなあと見ていると、小源太と瓜ふたつに似ている無二斎が、小源太の身代わりになって死地に赴くところの演出がいい。小源太が傷を負った左足と同じところをわざと傷つけ、左足を引き摺りながら雪の中へ出て行く。河ッ淵での殺陣もキマッている。

        そして話は三幕目へと突入していくのだが、ここでも田村正和が能を舞うシーン、ラストの大立ち回り、炎上シーンと見せ場たっぷり。それにしても田村正和には華があるなあ。舞台がパッと明るくなるし、キリッと締まる。

田村正和ファン・サイト MP(マサカズ・パティオ)


January.2,2001  今年も小朝から

1月1日 春風亭小朝新春独演会 (ロイヤル・パーク・ホテル)

        ここ数年、元旦の朝は前日に下げ残した出前を下げに自転車で走りまわることから始まる。昼頃に、おせちをつまみながらビールを飲む。そのままお昼寝。夕方起き出して小朝を聴きに行く。ロイヤル・パーク・ホテルの3階の宴会場が、この独演会の会場に模様替えされている。開演までの間、隣の部屋でドリンクとセルフ・サービスの軽食が出される。毎年出るのがサンドイッチとポテトチップス。年代わりのメニューは、今年はタコスだった。タコスを2個確保。ここのサンドイッチは毎年食べていて、そろそろ飽きた。

        大きな宴会場で、ざっと見たところ客席数約600〜700といったところ。満員である。昼夜2回の興業だから、延べ1200〜1400人。小朝の人気が知れようというもの。一席目、以前春風亭柳昇が演っていた新作『結婚式風景』にアイデアを借りたと思われるものを始めた。柳昇のものよりずっとブラックな笑いで、とてもテレビやラジオでは放送できない。あれっ? 古典の小朝が新作かと思ったら、これは長いマクラになるもの。一転、お世辞は大切ですよという前振りから『たいこ腹』へ。

        道楽息子の若旦那が針に凝って、幇間の一八の腹に針を打つ話。相変わらず小朝はテンポよく軽く話を進めていく。このテンポのよさが小朝の良さなのだが、この軽さというのが曲者。人によって好き好きなのだろうが、アクがない。私にはそれが物足りなく、どうも気になるところ。

        前座がドラエモンの大きなぬいぐるみを持って現れる。座布団を返して、ドラエモンを座布団の横に置く。おやっ? と思ったら間で高座に上がったのは翁家勝丸。例年のように二つ目の落語家が挟まるのかと思ったら、今年は太神楽だった。いつもは師匠の勝之助とのコンビで出るのだが、今日はピンでの高座。まだ20代半ば。緊張のあまり、考えてきた笑いのネタを忘れる。苦笑いをしながら、そのまま曲芸に入る。

        まだ芸が未熟な分、見ている方もハラハラする。最後は蛇の目傘の上で毬や枡を回す曲芸。一通り回してから、「今日は特別に、普段回さないものを回しましょう。もうお分かりですね、そうですドラエモンを回して御覧にいれましょう!」 あんな大きなぬいぐるみを回すのかと思いきや、さっきの毬とさして変わらない小さなドラエモンを取り出して、傘の上でクルクル。

        小朝二席目。一昨年の『紅白歌合戦』の白組の司会が勘九郎。去年は狂言の和泉元弥。どうもNHKは司会に古典芸能の人を使いたがっているらしい。この分では、今年は落語家にお鉢が回ってきそうだと語る。となると誰が出るか。ひとしきり、いろいろな落語家の名前を出し、この人たちはこういう理由で駄目だろうと揶揄する。「となると、ひとり最適な人がいるじゃないですか、ね!」と来る。NHKで番組を長いこと続けている小朝だし好感度もある。案外、小朝というのも面白いのかも。こういうことをサラリと言ってのけ、それがイヤミにならないのが、この人の得なところ。紅白に出られるようになるというのは大変な出世だという話から『妾馬(めかうま)』(『八五郎出世』ともいう)へ。

        この話の聞かせどころは、何といっても八五郎が屋敷に上がって、殿様と酒を飲むあたりからだろう。酔いにまかせて、べらんめい調で殿様と話すあたりが演者の力量の見せ所。べらんめい調と大名言葉のやりとりのメリハリの面白さに続いて、八五郎が妹への思いを語るクライマックス。ここでもまた小朝の語りはアクがない。サラリと演じてみせる。もったいないなあ、ここ熱演しようと思えば、いくらでも膨らませられるところなのに。まっ、そこをくどく演らないのが小朝で、この正月らしい爽やかさが好きで毎年見に行くのですがね。

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