February.25,2001 志の輔 in 国立演芸場

2月24日 第231回国立名人会 (国立演芸場)

        今回の国立名人会は、ちょっと趣向を変えて、立川志の輔に二席話させ立川流からふたり、それに柳家花緑、奇術の伊藤夢葉という変則的なプログラム。志の輔が国立演芸場に出るのは、かなり久しぶりではないか。

        前座、立川志の吉。先月もこの人を聞いた。あのときは『牛ほめ』。ほとんど死語になっている言葉を使った難しい話だった。今回も前座にはちと酷な話と思われる『十徳』。十徳なんていう着物、いまどき知っている人いないよ。「立てば衣のごとく、座れば羽織のごとく、ごとくごとくで十徳だ」なんて言われたってねえ。今の人にはピンとこないよ。口慣らしですね。頑張ってね。

        立川笑志。立川談志の14番弟子。初天神に行くというおとっつあんに無理矢理ついていって、あれを買ってくれ、これを買ってくれとねだる悪知恵のはたらく子供の話の『初天神』。ポチャッとした顔立ちの笑志によく似合った話。

        立川文都。談志の11番弟子。ひとつ上の10番弟子志の輔が売れて、この次に売れるだろうと言われている、ポスト志の輔は私ですときた。「先日も楽屋口から出たら女の子が近づいてきて『あのー、私、ファンなんです』って手紙のようなものを渡すんですよ。『これ、志の輔さんに渡してください』って―――ポスト志の輔」 文都という人は立川流でも変り種。なんと大阪弁で話す。ネタも上方落語。

        「上方落語はしつこいと言われますが、きょうはその中でもとびきりしつこい話です」と始めたのが『くっしゃみ講釈』。講釈師に恨みのある男が、寄席の最前列に陣取り胡椒をふりかけてやろうと思いつく。その胡椒を買いに行くところが前半部分。この部分確かにしつこいんですよ、この話。胡椒が買えず、代わりに唐辛子を買って寄席へ。唐辛子を火鉢にくべ、センスで煽られたからたまらない。くしゃみが止まらなくなり講談ができなくなった講釈師、「何ぞ、私に故障(落ち度)があるのですか」 「胡椒がないから、唐辛子をくべたんや」がオチになるのだが、このオチ、ちょっと苦しいよなあ。大阪の方では落ち度を故障と言ったりするのだろうか。

        立川志の輔、一席目。長めのマクラを振ったあと、「清く正しく生きるためのバイブルが聖書なら、楽に生きるためのバイブルが落語です」と言って『だくだく』に入る。店賃を2年分溜めて長屋を追い出された男。家具なんぞ全部売っ払ってしまって、他の長屋に転がり込んでくる。さあて、家具ひとつないと殺風景でいけない。絵師の先生に頼んで壁に金庫やら箪笥やら猫やらを描いてもらう。このあたりの絵師と主人公の会話の妙が可笑しい。その晩、この家に泥棒が入る。全て絵だと気がついた泥棒、「箪笥から着物を盗んだつもり、金庫の二億五千万円を盗んだつもり、大きな風呂敷にそれらを包んで持ち上げようとしたつもり」―――とやっていると、男が起きだし、「槍で泥棒のわき腹を刺したつもり」 本来はここで泥棒が「わき腹から血がダクダク出たつもり」というオチになるのだが、志の輔はオチを変えてしまっていた。別にいいのだけれど、これでは演目のタイトルが意味なくなっちゃう。それで私も「志の輔は『血がダクダク』と言ったつもり」

        中入り後、柳家花緑。柳家小さんの孫として有名。この日の『高砂や』も小さんから習ったのかもしれない。小さんの調子によく似ている。筋のいい噺家だと思う。ただ、今のところ私にはこの人の話が面白く思えない。なぜなんだろうと考えてみると、小さんの味である、顔の表情がまだ出来ていないせいもあるのではないか。まだ20代。これから味のある顔になっていくかどうかは楽しみなところ。

        奇術、伊藤夢葉。「ここに一本のロープがあります。これをこうやって結びますと、ほどけないと思いますでしょ? ところがこれが一瞬のうちに・・・一瞬のうちに・・・一瞬のうちに・・・ほどけませんね。では次の手品いってみましょう」といったフェイクが続くのは、最近の奇術の流行なのかな? 最後にトランプの手品を見事に決め、トリに繋ぐ。トリの邪魔にならないように、それでいて印象に残る見事な舞台だった。

        志の輔二席目、『宿屋の仇討ち』。志の輔のものを聞くのはこれで3回目。志の輔は侍の役を演ると上手い。それと対照的な魚河岸の三人組のはしゃぎ方、捕まって柱にグルグル巻きにされて一晩泣きはらし憔悴しきった様など、何度聞いても笑ってしまう。それにしても国立、混むようになってきたなあ。また立見まで出していた。


February.18,2001 三太楼、真打合格! 

2月17日 第261回花形演芸会 (国立演芸場)

        当日券でも大丈夫だとタカを括って行ったらば、なんと立見。国立演芸場のいいところは、立見だと割り引きになるところ。花形演芸会はただでさえ1400円と安い上に立見割り引きになったから、1100円。この料金でこのメンツが見られるなんて、ちょっと今時有り得ませんよ! それに満員の客席はやはりいいものだ。脇の通路に寄りかかって開演を待つ。それにしても若い客層が多い。これからはやっぱり前売りで買っておこう。

        前座はまたこの人、三遊亭天どん。今日のネタは、殺し屋をやっている主婦が税務署に確定申告に現れるという『殺し屋確定申告』。どうやって、こういうシュールな話を次々と思いついてくるのだろう。ただこの人の場合、そこから先が面白く発展していかないのと、相変わらず雑な印象を与えてしまう語り口が問題。丁寧に、丁寧にね。

        来た来た! 講談の神田北陽が釈台の前に座るなり、「今日はもう、みなさんに話したいことがたくさんあるんです!」。こういうときの北陽のマクラは長い。これがまた面白いんだ、いつも! 新潟のさる大金持ちの6歳の子供の誕生日で一席演ってくれという話がきたという。当日待ち合わせの場所に行ったらばチャーリー浜に似た男がやってきて、そのお屋敷へ連れていかれたという話。6歳の子供相手に講談を演るというのもヘンな話だと思ったら、なんと民話を聞かせてやってくれという。民話なんてできるか!と帰ろうと思ったがギャラもいいので苦肉の策で、6歳の子供の前で「昔々、あるところに悪いおじいさんがおりました。おじいさんの名前は、吉良上之助・・・」。いいなあ、いいなあ、それ聞きたいなあ!

        15分ほどのマクラのあと、この日のネタ『芝居の喧嘩』8分。この人の講談を聞いたことがない人は是非聞いて欲しい。こんなスピーディで描写力のある講談はかつて無かった。新しい時代の講談を作り出した、とんでもない人である。ホームページを持っていてこれがまた面白い。ワハハ本舗やポカスカジャンとの親交も深いのが分かる。新作講談のいくつかをこのホームページで聞くことが出来るので、ちょっと聞いてみて! 特にこの人といったらこの話、『レモン』。もう講談だか新作落語だかわからない面白さ!

        ダンディ坂野。NHKの『爆笑オンエアバトル』で何回か見たことがあるが、なんでこの人がオンエアされるのか分からない。私にはどうもこの人の面白さが理解できない。アメリカのスタンダップ・ジョークのスタイルでやる漫談なのだが、スタンダップ・ジョークのパロディとしか写らない。「ダンディ、駐車場にクルマを入れようとしたんだ。そうしたら、9番の位置には入れられないっていうんだね。『どうして?』って聞いたらば『クルマは急に止まれない』だって!」 この程度の使い古されたジョークが続く。客席にシラーッとした空気が流れる。おいおい、ゴング・ショウならとっくにゴングが鳴っているぜ。不思議な芸だ。しらけさせ芸とでもいうのだろうか。今のところは、これで受けているのだろうけれど、いつまでも続けられるものでもないだろうに・・・。

        林家たい平。「今日は『薮入り』を演ろうと思ったんですが、このあとの円太郎さんの新作の話が似ているというので、急遽違う話を」って、本当かい、たい平? 冬にやる話じゃないだろう、『薮入り』って! クルマや教習所の話をマクラに振っているので何を始めるのかと思ったら橘家円蔵師匠に習ったという『反対車』。万世橋から上野まで急ぎの男が人力車を捕まえようとしている。円蔵の『反対車』の雰囲気を残しながら、たい平らしい『反対車』が出来た。いかにも現代的な展開の中、最後で人力車の梶棒が事故で曲がってしまう。「梶棒くらい自分で治せるだろう、治して早く上野までやってくんな!」 「いや、梶棒は車夫には治せねえ、JAFを呼んでくんねえ!」 このオリジナルのオチには、思わず「おーっ!」と声をあげてしまった。

        橘家円太郎は古典一本の人だが、何と今日は新作『羽子板』。これは昨年末、桂三木助の提唱で池袋演芸場で行われた[三題話の会]で円太郎に出されたお題、[羽子板市、大江戸線、IT革命]で即席に作ってかけたものを、もう一度練りなおしたというもの。離婚してしまった30男とその娘の羽子板をめぐる人情話。なかなかしんみりとしたいい話だった。円太郎にはこれからも是非とも新作もお願いしたいところ。ただこの話に注文をつけるなら、ラストで娘が買う羽子板の作者が実の父親だと気がつくキッカケがもう少し説明がつくと、よりいい話になると思うのだが・・・。

        中入り後幕が開くと、マジックのマジックジェミーの舞台だ。真っ赤なドレス。真っ赤なカツラ。大きなサングラス。素顔が見えない。もっともホームページを見ると素顔が覗けます。いきなり英語でマジックを始めたので面食らっていたら、途中から英語まじりの日本語になった。このあとの出番の昇太に言わせると、「ゼンジー北京の芸風ですね」。なるほど、中国語なまりを英語なまりにした話術のマジック。トランプ、ロープ、新聞紙、袋と卵といった古典的なネタをいかにも現代的にスマートに見せた。

        春風亭昇太。今しがた香港での仕事から帰って来たばかりだという昇太師匠。「それにしても中国のカニって哀れですよね。調理前にヒモで雁字搦めに結わかれちゃって」とその仕種をしてみせる。それだけで場内は大爆笑。「『ダンサー・イン・ザ・ダーク』って御覧になりました? なにもこんなひどい方向に持って行かなくてもと思うくらい悲惨な話でして、泣かせよう泣かせようとするんですよ。でもね、何だかよく分からない話なんですよ。見ない方がいいですよ」というマクラから話に入る。花粉症の主人公がくしゃみに苦しんでいるという描写が5分くらい続く。もう場内大爆笑。そこへ、この花粉症の主人公が寿司屋の店主だと分かって、場内はひときわ笑いが起こる。花粉症の寿司屋という設定だけで凄いと思うのだが、昇太師匠、このところメッキリと腕を上げたと思う。ドカンドカンと笑いが起こる。普通、落語で寝ている仕種を表現するには前かがみになるものだが、この人の場合は本当に高座で寝転んでしまう! そして寝転んだままの姿勢で寿司を握る動作の面白いこと! この話、どうまとめるのかと思ったら、オチに『ダンサー・イン・ザ・ダーク』を持ってきた。これ、今ならいいけれど、来年演るとしたらオチを変えるのだろうか?

        国立演芸場のやることは前向きだ。寄席の定席では考えられないことなのだが、今まで出てきた、たい平、円太郎、昇太は真打。ところが今日のトリは、まだ二つ目の柳家三太楼。定席では真打以外がトリを取ることは、よっぽどの事故でもないかぎり有り得ない。もっとも三太楼も、今年の9月には真打が決定しているのだが・・・。私この人の落語、好きなんです。しかも今日の演目は大ネタの『紺屋高尾』。期待が高まる。はたして三太楼がこの難しい話をどうこなすか注目していた。これを上手く聞かせるようだと真打は当然。染物屋の職人久蔵の造形がいい。普通、吉原の花魁に恋煩いをして寝こんでしまうこの人物が、あたかも世間知らずの若旦那のように描いてしまうが、その部分をいかにも職人という風情で演じてみせる。職人の久蔵、染物屋の旦那、その女房、吉原へ連れていってくれる医者、そして高尾太夫に到るまでのキャラクターがよく立っており、40分じっくりと聞かせたてみせた。これなら真打にしても文句なし! よおし! 新しい世代がまた出てきたぞ!


February.14,2001 伊東四朗と小松政夫の絶妙の笑い

2月12日 『追いつ!追われつ!!』 (本多劇場)

        1995年の伊東四朗、小松政夫のコント舞台『エニシング・ゴーズ』。1997年の伊東四朗、三宅裕司の同じくコント舞台『いい加減にしてみました』ときて、またまた伊東四朗、小松政夫で舞台をやるという。前二回を見逃してしまったのが口惜しい。ビデオ化されたので、それでも見ることができたが、やはりナマで見たかった。早々とチケットを手配したらば、なんだか今回はコント集ではなく、芝居らしいという情報が入ってきて慌てた。しかも、何とマゲモノコメディ。すぐにNHKの『お江戸でござる』が頭に浮かぶ。ああいったものだと、ちょっと想像していたものと違うなあと心配になっていた。

        というのも、びっくりしたのが、ポスターは黒い背広を着たふたりが港に立っているという構図。どう考えても、ブルース・ブラザース乗りのコント集だと思ってしまうではないか。

        客電が消えると同時に伊東四朗がポスターの黒服姿でマイクを持って登場。前説風に話を始める。今回のポスターをスライドで写してみせ、「こういう内容を期待されたのでしょうが、今回は時代劇なんですね。怒り出す人がいけないので、最初に私がこのポスターの格好で出てきました。これは、ここまでです」 そのあと、携帯電話の電源を切るようにという注意を面白おかしく語ってみせる。

        「それとですね、アンケート用紙の感想に『それでどうした』とか『この作品の主張したいことは何なんだ?』とか書いてくる方がおられますが、そういった類いの芝居ではありませんのでよろしくお願いします」と笑わせて芝居の幕があがる。

        その言葉のとおり、これはコメディというよりは長いコントに近い。まずは小松政夫の家老と阿南健治の忍者のからみ。もうほとんどふたりコントの世界。だから、話がなかなか先に進まない。もうこっちも覚悟してコントを見る感覚でつきあうことにする。

        場面が変わって今度は伊東四朗の出番。長屋の住人たちとのからみ部分は、コントというよりも芝居に近くなる。そしていよいよ、上演開始1時間20分ほどしたところでようやく伊東四朗と小松政夫がそろって舞台に立つ。長屋のふたつの部屋を使ってのコントのようなものが長く続くことになるが、さすがコント馴れしたおふたりだ。この息の合い方はどういうことか! この部分での笑いで、すっかり元をとったような気になるから凄い。

        話は最後に向かって、だんだんメチャクチャになってきて、もうどうでもいいようなドンデン返しが繰り返され、見ている方ももう話なんてどうでもよくなってくる。なんとなく、てんぷくトリオの時代劇コントを8人で演ったような、懐かしいような楽しい舞台。

        それにしても、伊東四朗と小松政夫の絶妙の間は何だろう。長年一緒にやって気心が知れていることもあるのだろうが、時々わざと間合いを外してみたりして、お互いに舞台を楽しんでいる様子が見うけられた。なんだか、ジャズのセッションをやっているような楽しさが客席に伝わってくるおふたりなのである。その瞬間を楽しむというのは、やはり贅沢なひと時。こういうのはビデオではなかなか伝わってこない。


February.4,2001 さすが怪優白石加代子

2月3日 白石加代子『百物語』第十八夜 (岩波ホール)

        19:00開演で、開場が18:30。整理券を配るのが18:00だという。17:30に並んでみようと会場に行くと17:45に整理券を配りはじめた。私のは36番。18:20にまた来いというので、18:15にはまた列につく。いかにも山の手のオバサマという人が整理係のおねえちゃんに食って掛かっている。「チケットを買うのに並ばせて、整理券で並ばせて、入場で並ばせて、また開演まで客席で待たせるの!?」。オバサマ、そうなんですよ。こういうのってね、主催者が天下なの。おとなしく従うしかないのね。主催者も大変なんですよ。もしトラブルがあると、客には文句言われるし、会場側からも文句言われるの。

        客席のほとんどが女性客。しかも、年齢層が高い。といっても老人は少なく、30代から50代が中心か。客電は開演前から最小限に落とされていて薄暗い。ロビーまで薄暗いという配慮(?)がなされている。

        客電が落ち、幕が上がる。高座に座卓。下手に行灯。和服姿の白石加代子が登場する。「これまでのなかで、今夜のが一番の難物の2本だ」と笑い、高座につく。1話目、三遊亭円朝作『眞景累ヶ淵』。なにしろ長い話だ。全部はとてもできない。金貸しの宗悦を深見新左衛門が難癖をつけて切り殺す導入部を鮮やかに読み上げ、話は19年後のもっとも有名な怪談部分へと飛ぶ。白石加代子は、この15章から23章の途中までを朗読してみせる。

        今まで他の人の朗読なるものを聞いたことがないので、こういった芸の良し悪しを論ずることができないのだが、白石加代子の朗読というのは、おそらく朗読という範疇を易々と超えてしまっている気がする。落語でもなく、講談でもなく、ひとり芝居でもない、もちろん単なる朗読でもない独特な世界がある。座卓の上には書き写したと思われるファイルが置かれているが、会話部分などはほとんど暗記しているらしく下を見ない。

        宗悦の娘豊志賀は39歳になっており、芸事の師匠をしている。身持ちが堅いと評判だったのが、通ってくる21歳の新吉といい仲になってしまう。堅いといわれていた四十路を前にした女が若い男を誘うシーンは、さすがに女性の演者だけあって真に迫るものがある。さらに怖いのが、豊志賀の右の目の下にデキモノができ、腫れ上がっていくシーン。右手で右目を押さえ、上目遣いで見上げる表情は、さすがに白石加代子だ、怖い! いつだったか、私はやはり同じ岩波ホールで白石加代子が[お岩]を演った四谷怪談を見たことがあるが、あれも怖かった。

        新吉は実は深見新左衛門の息子であったという円朝得意の因果応報ものの世界なのだが、その新吉が、やはり通ってくる若い娘お久といい仲になってしまう。嫉妬に狂った豊志賀の執念の表情なども白石加代子ならでは。女を怒らせると怖いというお話。血みどろのシーンで抜き読みを終える。

        2話目、筒井康隆『関節話法』。幕が上がると舞台はすっかり片付けられていて何もなし。明るい照明があたっている。『眞景累ヶ淵』では舞台は暗く、座卓の下にも青いライトを置いたりして効果を出していたが、こちらは仕掛けなしでの勝負らしい。黒の格闘技に、中国風の赤いリボンをして白石加代子が登場する。そろそろ還暦を迎えるという歳のはずだが、なんだか妙にカワイイ。

        『百物語』のコンセプトは、恐怖というテーマであったと思うのだが、『関節話法』って、筒井康隆の中でも爆笑編に属するものでしょ? もう何でもいいのかな? この話は原作でも読んだし、一年前には『筒井ワールド』でも上演して見に行った。そのときのレポートを安渕くんが『筒井ワールド観劇報告』としてTAVERNに載せているから、参考にしてもらいたい。

        『関節話法』は会話体が少ないせいもあって、まさに書いてあるものをそのまま読むというスタイルに近い。しかも、ご存知のようにこの話、関節を鳴らして会話をするという宇宙人の話だから、会話部分もほとんど関節を鳴らす真似をしながらだから大変。怪優白石加代子にしても、本当に関節を鳴らしながらの舞台は無理か(笑)

        立ち姿で、全身を使い、舞台狭しと移動しながら朗読を続ける。最後は寝転がってしまっての熱演。『筒井ワールド』での再現にも笑い転げたが、白石加代子版もかなり笑える。それにしても、『眞景累ヶ淵』での怖い白石加代子の表情が、こちらでは妙にカワイく見えるのは面白い。さすが怪優白石加代子ですな。

        ラストは全身の関節がボロボロになって横たわった姿で幕。カーテンコールで起き上がり最後の挨拶。客席で見ていた筒井康隆が紹介される。筒井康隆自身これを朗読したことがあるはずだから、どういう心境で見ていたことか。役者としても活躍しはじめた筒井康隆だから、「よおし、オレも一丁、もう一度朗読に挑戦しよう!」と思ったりして。

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