February.29,2004 志の輔三席!!

2月21日 志の輔らくご21世紀は21日 (安田生命ホール)

        新宿の映画館で『コンフィデンス』を観終わったのが6時45分。7時からの志の輔の会には悠々間に合うスケジュールだったが、どうしても欲しいと思っていたDVDがあり、ショップに行きたくなってしまった。と゜うせ、20分くらいは前座さんだという軽い気持ちがあったこともある。目的のDVDをゲット。7時15分ごろ会場に入ると、高座の音声が聴こえてきた。ありゃりゃ、立川志の輔がマクラを話しているではないか。前座さんの噺が短かったのか? 席に案内してくれる係の人に、「前座さんはもう終わったんですか?」と訊くと、「今日は前座さんは無いんです」との答え。しまったあ! これだから、時間通りに行かなくちゃいけないんだよなあ。

        席に着くと、ちょうどマクラが終わり一席目の『猫と金魚』が始まったところ。志の輔がまさかネコキンを演るとは思わなかった。隣の猫が金魚を狙いに来るのでどうしようかと旦那と番頭さんが交わす会話が楽しい噺。「いっそのこと、腹の中に金魚を飲み込んでしまったらどうでしょう」 「それじゃあ、金魚が見れないじゃないか」 「レントゲンで見れます」 案外志の輔の論理の積み重ねのネジレから来る笑いにうってつけの噺ではないか!

        二席目。「算盤を習うと右脳が発達するそうです。右脳というのは絵を描く方。絵が浮かぶような習い事はやっておいた方がいい。落語というものも、聴いたお客さんが絵を浮かべることによって成立する芸なんですね。落語を聴いて絵が浮かばない人は二度と来ない。絵を浮かべることで楽しめる人は八割といいます。落語を楽しめる人は、ごく限られた人たちなんですね。だから、算盤は習っておいて欲しいと・・・」と、『雛鍔』に入る。お金を見たことがないというお屋敷のお坊ちゃまが、穴あきの銅貨を見て、お雛様の刀の鍔だと勘違いするのを目撃した職人が、家に帰ると「金くれ、金くれ」を連発する自分の子供にがっかり。お屋敷のお坊ちゃまの話をしてきかせると、態度一変。出入りの番頭さんが来たので職人が話し込んでいると、障子の陰で聞耳を立てている子供。「ほら、あそこに耳だけ見えるでしょ。羊羹だとか最中といった食い物の事が話題に出ると耳が動く」 ふふふふふ、昔の私みたい。

        松元ヒロのパントマイム『お昼のNHKニュース』。東京ドームの蘭展のことを報じるニュースに走る格好(ラン)が可笑しい。昼の話題、投稿俳句「急流に 落ちる椿を 追う椿」に唾を吐く仕種がこれまた可笑しい。

        三席目。アカデミー賞に二本の日本人がらみの映画がノミネートされた。渡辺謙が出ている『ラストサムライ』、そして外国映画賞にノミネートされている『たそがれ清兵衛』。志の輔はあえてこの二本のストーリーを語ってきかせた。この二本に共通するのは、「負けるのを承知で向かっていく侍の姿です」。そしてこう続ける。「と゜うして、サムライものがノミネートされたのか・・・。小泉さんがブッシュにアカデミーにノミネートしてくれと頼んだんじゃないですかねえ。『時期が時期だけに、入れといてもらうとやりやすい』」 自衛隊イラク派遣問題をこういう角度から見るのも面白い。でもそのために二本もの映画のストーリーを語るとは、ご苦労様なことで・・・。「落語に出てくる侍はこういう人物はいませんが・・・」と、『宿屋の仇討ち』。静かな部屋を所望した侍の隣に泊まったのは賑やかな江戸っ子三人組。番頭に大騒ぎを注意される。「隣のお客さん、差してますよ」 「かんざしを?」 「刀ですよ」 しゅんとしてしまう江戸っ子三人組。「お前、『矢でも鉄砲でも持って来い』って言ったじゃないか!?」 「刀を持ってこいとは言ってない」

        ひとりで三席演るとはなあ。今度からちゃんと開演時間に遅れないようにしなくちゃ。


February.25,2004 ハプニング

2月15日 『エドガーさんは行方不明』 (グローブ座)

        ミステリ劇だと知って、軽い気持ちでチケットを取りにいったら、ほとんど完売状態で3階席しか残っていなかった。こんなもの観に行く人は少ないだろうにと思ったら、主演の佐藤アツヒロという人は、元光GENJIのメンバーだとわかって納得。客席はほとんど女性ばかり。身の置き場に困ってしまう。

        三幕もののミステリ劇。原作はジャック・シャーキー。原題は『Murder Room』。舞台はイギリスのある田舎の資産家エドガー・ホリスター(佐藤アツヒロ)の屋敷のリビング・ルーム。エドガーと結婚したばかりのその妻メイヴィス(櫻井淳子)が口論をしている。結婚したばかりだというのに、もうメイヴィスが浮気をしているという。浮気がバレた時点で、メイヴィスはエドガーを射殺してしまう。

        これが冒頭の10分ほどなのだが、重大なハプニングが起こってしまった。メイヴィスがエドガーを拳銃で撃ち殺すという重要な場面なのだが、メイヴィス(櫻井淳子)がいくら引き金を引いても発射音がしないのだ。どうやら、小道具の拳銃が不発だったということがわかるのは、かなり芝居が進んでから。窮した櫻井淳子が口で「バーン、バーン」と言うのだが、これが観ている側には、弾が出ないので「バーン」と言っているギャグに思えてしまう。ドッと笑いが起こる。佐藤アツヒロが「うっ、当たった。確かに胸に一発当たった」と言って倒れるのだが、観ている方は、頭の中で「?」マークがいくつも浮かんだに違いない。

        メイヴィスは、夫の死体を地下室の秘密の空間に隠す。ここは冗談で死体の隠し場所にふさわしいから[殺人の部屋]と呼ばれていたところで、これが原題の『Murder Room』。それと同時に警察には夫が行方不明になったと届けを出す。やってきたのはジェームス・クランドール警部(升毅)。そこへ、エドガーの娘スーザン(宮本真希)と、その婚約者バリー・ドレイパー(生田斗真)がアメリカから帰国してくる。さらには、エドガーそっくりの若い巡査エーベル・ハワード(佐藤アツヒロの二役)、屋敷の家政婦ロッティ・モリー夫人(阿知波悟美)が絡んで、物語は進行していく。

        拳銃が発見され、ひょっとしてエドガーは殺されたのではないかと鑑識に回されるが、拳銃に入っていたのは全て空砲だったとわかる。地下にも死体が見つからない。さて、エドガーはどこへ行ったのか?

        いささか脚本に無理が多すぎるように思えた。真相がわかるラスト近く、「ははあ、なるほど」という思いと、「それはあまりに強引では」という思いが混在してしまう。最後はほとんどドダバタのコメディになるのだが、それもなんだか虚しい感じ。帰宅する地下鉄の車中で、いろいろと思い返してみても、綻びの多い脚本だというのが率直な感想。

       それにしても、冒頭で拳銃の発射音が出なかったのは哀れ。拳銃が鳴らなかったらぶち壊しなんだから、もしものことを考えて、発射音のテープくらい用意しておけばいいのになあ。


Feburary.21,2004 ギャグてんこ盛りの三時間!!

2月14日 劇団☆新感線
       『レッツゴー! 忍法帖』 (サンシャイン劇場)

        劇団☆新感線の中で、いわゆるネタものといわれる笑いの多い芝居。今回はその集大成というものらしい。ストーリーは、あるような無いような・・・いや、もちろんあるのだが、そんなことはどうでもいいような気がする。阿部サダヲの猿飛のサダと橋本じゅんの風魔コジローがいい方の忍者、古田新太の地獄おろち丸率いる悪者忍者地獄七人衆との闘いが中心。それに池田成志の裏切り者忍者がからむ。

        誰が主役なのかわからない脚本の上に、それぞれが個性を発揮しまくり! てんこ盛りのギャグが三時間の上演時間の中に爆発している。ただひたすら笑ってそれだけのことって、こういう芝居好きだなあ。

        劇場でサントラCDを買って帰ってきたのだが、これがいまや大のお気に入りになってしまって、パソコンのキーを叩きながら、毎日聞き込んでしまっている。中でも好きなのが第二部の冒頭、阿部サダヲが客席を疾走して舞台に登り始まる『ミュージカル・「サルカニ合戦」』。マイケル・ジャクソンのヒット曲をパロディにした劇中劇のようなもの。役者が全員被り物をして大真面目で『サルカニ合戦』を演るのだ。それと、高田聖子のまんぐす姫の歌う『マングースめっちゃ変化』。アイドル歌手乗りの歌になっている。歌詞カードを見ると「♪マングース めっちゃ変化」となっているのだが、私にはなぜか「♪マングース娘 茶目っ気!」と聴こえてしまう。このところ、この曲が頭から離れなくて困ってしまっているのだ。

        物語の行方のカギを握るのが中谷さとみの風谷のうましか。この人が出てくるとなぜか『風の谷のナウシカ』のテーマによく似た『青き汚き衣の少女』が流れる。これもCDの中に入っていて、この曲を聴くたびに芝居の展開が思い出されて笑ってしまう。あまりにネタばらしになるので詳しくは書けないのだけど。

        忍術合戦も「くだらねー」というギャグが続く。山本カナコの招鬼黒猫(まねきくろねこ)の分銅のギャグなどチャンバラトリオそのままなのだが、許しちゃおう。

        最近はネタものも映像化してもいいと言い出した劇団☆新感線。DVDが出たら買っちゃうだろうなあ。


February.18,2004 黄色いTシャツの背中の[勇気]の文字にそっと押されて

2月8日 BIG FACE
      『笑う女。笑われる男4/黄色のシャツを、あの人に・・・』 (シアターX)

        筒井康隆の作品を連続上演していた『筒井ワールド』から続いて観続けている劇団。今回のテーマは選挙。

        ある地方都市の水族館に勤務している諸星勇樹(長畑豊)が市長選に立候補する決意をする。当初反対していた家族の了解も得られ、家族やその仲間も協力して、いざ選挙活動がスタートする。競争相手は、現職の知事浜中輝男(名倉右喬)、女性だけの集まり全日本女性党から榎本ゆり子(船田千詠)、そして元プロレスの覆面レスラー、ミスター・忍者。暗躍する選挙屋という仕事があるのを、この芝居を観て初めて知ったのも収穫。

        ともすると難しく感じる選挙というテーマを笑いで包んで、わかりやすく、楽しく観せてくれる。タイトルの黄色のシャツとは、この芝居で選挙運動をするボランティアが着るTシャツが黄色だから。立候補者の名前諸星勇樹をTシャツの前面に印刷してもらうはずが、間違って、背中に[勇気]と印刷されてしまう。背中の勇気の文字にそっと押されるような気分で選挙活動は続く。そして、運命の投票日・・・。諸星勇樹は当選したのか・・・?

        役者さんたちが、実に楽しんでいるという感じが伝わってくるこの劇団が私は好きだ。最近は年に一度の公演ペースになってしまっているようだが、以前のように、もっと頻繁に観たいもの。


February.14,2004 東京コミックショウ40年!

2月7日 爆笑演芸会 (横浜にぎわい座)

        シリアルパパのネタは、以前にも観た出所してきたヤクザと、今は工事現場の前で交通整理をしているガードマンの元兄貴分のコント。もともと何分の持ち時間でも調節ができるネタらしく、今回は長めの20分バージョン。13年ぶりにシャバへ出てきたヤクザが、元兄貴に訊く。「今、アメリカの大統領は誰ですか?」 「ブッシュだよ」 「それじゃあ、13年間、ブッシュが政権握ってたんですか?」 「違うよ、今のブッシュは、あのブッシュの息子だ。ブッシュのあと、クリントンが大統領になって、今がブッシュの息子。次がクリントンの妻のヒラリーがなると、もっぱらの噂だ」 「それじゃあ、世襲制じゃないですか。北朝鮮と同じだ!」

        BOOMERはショートコント『小堺さんのごきげんよう』 『それ早く言えよ』 『バカ教師』 『競馬実況中継』のあと、お得意の紙芝居ネタ。この日は『一休さん・将軍様ととんち勝負』。衝立の虎を捕まえろという有名なお話。「偉大なる将軍様に会いに行きました」 「将軍様って、それは違うだろ!」 某国の将軍様と喜び組が描いてある(笑)。

        唯一の落語は三遊亭歌之介。「おまえは、ハブか?」 「沖縄の毒蛇は、英語が話せます。イエス・アイ・ハブ」 「お前の毒は強いか?」 「イエス。ヘビー」 ちょっと聴かないでいたら、韓国語のレパートリーも増えていた。「虫歯ですか?」を韓国語で「コオリカンダラ、ハニシミルダ」。こんな漫談を25分続けて、ネタの『勘定板』10分。

        アクロバット自転車芸のジェイムスという人は初めて観た。BMX自転車に乗ったままで、縄跳びやジャグリングをやってのけてしまう。ブラジル出身ということで、日本語があまり上手くないのだが、この芸の前では言語は不要。圧倒されっぱなしだった。

        トリは東京コミックショウ。40年も演っているという『レッド・スネーク・カモン』。思い起こせば、私が小学生のとき、熱海だか伊東だかの旅館の広間で観たのが最初。あれは、そう40年前。あのとき観たのがほぼ初演のころだったんだ! お手伝いはナンセンストリオの弟子というから、前田隣のところの若い子なんだろう。東京コミックショウって、『レッドスネーク・カモン』しか知らなかったのだが、他にもいろいろとネタを持っているらしい。基本的に東京コミックショウはマジックの分類と言えるのかも知れない。ロープやトランプを使ったマジック・・・・・種も仕掛けもバレパレだったりするのだけど(笑)、それを演りながら、昔話をところどころで入れていく。昔の芸人さん、昔あったキャバレーの話。そんな昔のエピソードを聞いているだけでも十分に楽しい。こちらも古ーい人間になってしまったかなあ。

        にぎわい座を出て、[三陽]へ行く。五坪しかないという店内は五時前という時間なのに満員。場外馬券売り場が近いから、その帰りの客もいるのかも知れない。ビールと餃子を注文。ビールに付いてくるバクダン(ニンニクの素揚げのトーチー炒め?)でビールを飲んでいるうちに、餃子到着。ニンニクの香りがきついパリッとした焼き上がり。締めはチンチン麺。ニンニク、ニラ、モヤシ、豚肉などが入った塩味のタンメン。旨い、旨い! 店を出たらば口の中がやたら臭い。東京へ帰る京浜東北線の車内では、ビールで酔っ払ってしまったせいもあり、熟睡。それにしても、口の中が臭せえ! 


February,9,2004 真面目に働くことが、そんなに正しいのかという教訓

2月1日 『掃除屋』 (シアター・トップス)

        柳家花緑は、落語以外でも多方面で活躍している。そんな花緑が出る芝居ということで、観てみようという気になった。しかも脚本・演出が水谷龍二とあっては、まあ外れないという安心感がある。

        事業を起こし、数十人のアルバイトを雇って、掃除屋を経営している青年・柳家花緑が、婚約者の山田花子の父親に挨拶に来る。ところが、父親(坂本あきら)はこの結婚に反対だ。「掃除屋なんかに娘はやれない」。ところが当のこの父親はというと、仮病を使って、毎日働きもせずに家で寝ているだけ。山田花子には兄(小松和重)がいるのだが、こちらもパチンコばかりしていている無職のだらしない生活。そんな中でも、山田花子は夜になると、化粧をして水商売に出かけていく。

        一時間半ほどのコメディーなのだが、後半になって、ついに花緑がキレる。掃除屋という職業柄、ちゃんとしていないのに我慢がならないのだ。婚約者の父親と兄に、ちゃんと働けと言い出す。それを聞いていた婚約者の反応は・・・・・。

        水谷龍二の脚本は、世の中のしょーもない人間にも優しい目を配っている。世の中、どういう生き方があってもいのだという視線である。人間、汗水たらして働かなくちゃいけないという道徳とは対極にある。

        坂本あきらの演技はさすがに上手い。ダメオヤジぶりが板についている。山田花子のいささかぶっきらぼうな演技もここでは効果を上げているし、柳家花緑もぴったりなキャスティング。

        いい芝居を観たなあと思いながら、「さあて、明日は月曜日。いつものように朝4時に起きて、夜の10時過ぎまで働くぞう!」と気合を入れた。わたしは、こういう風にしか生きられない不器用な人間なんだろうなあ。ふー。


February.7,2004 大作『ヘッペしよう』

1月25日 浅草名人伝説 (5656会館)

        一夜明け、今度は5656会館へ。同じような企画なのだが、おそらく松之助が上京したのに合わせて、もうひとつ演ってしまおうということなのだろう。昨夜は、三本ものハシゴをしたために興奮状態が冷めやらず、ついつい明け方まで起きていたので眠い。いろいろと雑用を片付けていたら、会場へ向かう時間が遅くなってしまった。会場に入ったのは、前座の快楽亭ブラッC『小町』が終わるところ。

        モロ師岡のひとりコント。冷遇されているコンニャク会社の社員のトイレでの独り言。

        「家元がいると出来ないネタの上、きのうは子供が目の前の席にいたから出来なかった」という快楽亭ブラックがかけたのは、噂では聞いていたが、出会うのは初めての『文七ぶっとい』。前半はごく普通の『文七元結』が続く。せいぜいブラックらしいのが、亭主が博打ですっからかんになって、女房の着物を借りて吉原に行こうとするところ。無理矢理に一張羅の女房の着物を脱がすと、すっぽんぽん。腰巻すらつけていない。「腰巻をどうしたんだ?」 「売っちまったよ」 「江戸時代にブルセラショップなんてどこにあるんだよ!」 これが後半に入り、文七の勤めている店が大人のおもちゃ屋だということがわかってくるところから、とんでもない噺になっていく。驚いたあ!! あの人情噺が、大変なことになっている(笑)。

        前日に国立演芸場で喋るネタを選んで、いささか余所行き風だったなぎら健壱は、この日は一転。大ネタがかかった。「女性のある部分のことを、方言でいろいろな言い方をします。大阪ではお米券、あるいはナメコ汁に似た言い方。山陰地方ではメンチョなんていいます。九州ではボボ。プロレスラーのボボ・ブラジルが出てきたときにはたいへんなことになりました。沖縄ではホーミー。ラッツ&スターの『ホーミー・タイト』はラジオでかけられない。青森に行きますと、へっぺというそうで・・・・・」とマクラをふって始まったのが、ある歌手がディナー・ショーで、「みんなで歌おう」を青森弁で、どう言うのかと人に訊き、冗談で「へっぺしよう」と教えられたのを真に受けて、さかんに「へっぺしよう」を連発するという話。嘘でえー!(笑)。曲は『東京節』 『四月十日の詩(デン助劇団の捧げる唄)』 『祭りの季節だ』。

        折りたたみ椅子が三つ出され、ブラック、なぎら、高田文夫のトーク。
高田 「『へっぺしよう』舞台袖で聴いていて、大笑いしましたよ。なぎらネタはかなり知っているつもりだったけど、これを聴くのは初めて」
なぎら 「ブラック師匠が『ぶっとい』ですから、『へっぺしよう』を出さないと勝てないと思って・・・」
高田 「四国ではチャコ。だから、サザンオールスターズの『チャコの海岸物語』はまずい。♪心から好きだよチャコ・・・ですから。それにしても今日のタイトル『浅草名人伝説』で。へっぺとぶっといじゃ、まずいだろ」
なぎら 「『へっぺしよう』は三題噺で出来た作品。○○○○○○○○(書けない!)、ヘッペ、牛」
高田 「うそでえ(笑)。牛なんて、ちょこっとしか出てこない(笑)」
        このあと、ここにはとても書けない話が続いた。物凄く面白かったのだが、ネットでは内緒。

        トリは笑福亭松之助で上方落語の大ネタ『三十石』。「最近は落語家というよりは役者でして、テレビにばかり出ています。ドラマの方が楽」という割には、大熱演。いつまでもお元気で。


February.1,2004 名人芸なぎらトーク

1月24日 新春バラエティー寄席
       なぎら・ブラックとゆかいな仲間たち (国立演芸場)

        前座は快楽亭ブラ談次。銭湯の脱衣所で落語会を演って、回覧亭フラダンスと間違って書かれたというマクラで笑いを取り、『転失気』へ。

        せーじ・けーすけの漫才は、よくあるといえばよくある結婚式ネタ。結婚式の司会を頼まれたりするから、芸人さんのネタになりやすいのかもしれない。「新郎、新婦の入場です。みなさん、盛大な拍手でお迎えください・・・・・。ちょっと、そこのウエディングドレスにタキシードのふたり、なんでさっきから拍手しないの!」 「あれは新郎と新婦だろうが!」 「純白のドレスで思い出しますのは、パナウエーブ研究所」 「言うことが古いわ」

        柳家喬太郎『母恋くらげ』。波にさらわれたクラゲの子供、クラノスケを捜しに行くのは亀のタチバナヤカメゾウ。「この間は、ニモを捜しに行ったんだ。『喬太郎さん、デズニーから原作料貰ったの』なんて言う人がいるけど、そんなわけ無い!」 ほんとうに、偶然の発想の一致なんだろう。よく似ている!(笑)。タコ踊りをしながら高座から去っていく喬太郎。この噺を聴くのは私はこれで四回目だと思うが、相変わらず大笑いをしてしまう。万人に受ける喬太郎としても自慢の一席だろう。

        明石家さんまの師匠、笑福亭松之助。「身体のあちこちが痛んでまいりまして、医者に行くんですが、もう医者がこっちの方を診ないんですな。人のいうことを聞かないで、カルテばかり見ている。アッチが悪いコッチが悪いと言っても、ひとこと『歳ですな』。こっちのこと、そこまで生きられたらええやないかという目でみますから。『こないだの薬効きませんが』 『あっ、効く薬は身体に悪いですから』・・・・・って、どういうこっちゃ!」 二十分も話すと声帯が出なくなるというグチをマクラにしながら、『くっしゃみ講釈』。確かに声は弱くなっているのかも知れないが、くしゃみ連発の大熱演。そろそろ八十近いお歳と思う。その割にはお元気なようで、長生きしてもらいたい噺家さんのひとり。

        私は紙芝居を観るのを経験した世代。近所の公園、路地などで、一番安いソースせんべいを買って、観たものだった。ソースせんべいというのは、あれは何だろう。ミルクせんべいというのだかろうか、原材料のよくわからない、フニャフニャのせんべい状の丸いものに、中濃ソースを塗ってくれるもの。もう少しお金を払うと梅ジャムやら、冷たくなった焼きそばを挟んでくれた。私はソースせんべい専門。梅田佳声の紙芝居が始まる。コミックものの『ぽうちゃん』と、『怪猫伝』

        「明日また浅草で、私、松之助師匠、なぎら健壱、モロ師岡で出ますが、松之助師匠は、去年NHKの朝ドラ『まんてん』にご出演になっていましたし、なぎら健壱は、やはりNHK朝ドラの『こころ』で船宿の親父、モロ師岡も『こころ』でうなぎ屋の職人。明日はNHK朝ドラの同窓会」と快楽亭ブラックが始めたのが『名字無き子』が冒頭に入るお得意の『道具屋』。以前にも書いたけれども『名字なき子』に関しては、ネットに何も書けない内容。後半、ブラックが最近のもろもろのことに怒りをぶちまけるところが、この噺の売りでもあるのだが、これもほとんどが伏字状態。「バカヤロー、バカヤロー」を連発するブラックが弾け飛ぶ。こういうのがナマの楽しさなのだ。

        トリがなんと、なぎら健壱。私は一時期、ライヴハウスでなぎら健壱を随分と観ている。曲が好きというよりも、そのトークが面白いので通い詰めていたといっていい。なぎら健壱のトークの方法は、落語から来ていると思う。会話体で進められるそのトークはまるで新作落語を聴いている味わいである。かといって、これを文章で書くのは難しい。なぎら節とでもいう独特のトーク口調があり、これを体験しないで文章だけ読んでも面白さが伝わらないからなのである。この日のネタに題名をつけるなら、『プラットホームのキャッチボール』 『結婚式の祝辞録音テープと猫』 『ジミー時田の表彰状』 『浅草飲み屋街の鍋』 『所ジョージの土方歳三』 『みのもんたのボトル』といったところか。これらのトークの間に明治、大正時代の演歌『間がいいソング』 『スカラーソング』、そして下町を歌ったオリジナルの『下町(まち)』。最後がまた大正演歌に戻り『東京節』。「♪ラメチャンタラ ギッチョンチョンデ パイノパイノパイ」 こんなの聴けるの、今、なぎら健壱くらいのものじゃないだろうか。

        ただ、さすがに国立演芸場とあってか、なぎら健壱もライヴハウスで見せる姿とは、どこか別物、余所行き姿。この翌日にまた、松之助、ブラックらと『浅草名人伝説』なる催しに出ることになるのだが、こちらの方はぶっ飛んだなぎら健壱が観られることになる。

        国立演芸場を出て、渋谷へ向かう。クラブ・クアトロのエリック・サーディナスのライヴのチケットを買っていたのだ。ウタムラ氏と一緒にブルース・ロック・トリオを1時間50分、たっぷりと楽しむ。そのあと、ウタムラ氏と食事。しかし、この日の予定はまだ終わらない。単身、新宿へ。末広亭の深夜寄席に向かう必要があったのだ。末広亭の前に到着すると、古今亭錦之輔が呼び込みをしていた。私は錦之輔に近づいていって、「実はこういう者なのですが」と名刺を渡した・・・・・。


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