September.23,2004 円丈の功績

9月18日 円丈還暦まつり (国立演芸場)

        立見も出る盛況ぶり。知人の姿もチラホラ。やっぱりみんな円丈が好きなんだなあ。

        オープニング・ビデオのあと三遊亭亜郎による歌。伴奏は外国人のアコーディオン弾き。円丈の生い立ちから少年時代までを『寿限無』を絡めて歌う。虚実ごっちゃ。

        門下の白鳥、小田原丈、天どんによるお祝いトーク。[え・ん・じょう]でお祝いの言葉を作ろうということになる。白鳥が[え]、小田原丈が[ん]、天どんが[じょう]と決まる。小田原丈「ぼくが[ん]ですか? 『ん廻し』じゃないだから」

白鳥 「え 縁の下の力持ちで後輩を育てました」
小田原丈 「ん んーと怒られた前座時代。今も怒られていますが」
天どん 「じょう 上司にしたくないナンバー・ワン」

        ここからひとり持ち時間8分の落語。三遊亭らん丈は今回も『新明解国語辞典』 「動物園。捕えて来た動物を、人工的環境と規則的な給餌とにより野生から遊離し、動く標本として都人士に見せる、啓蒙を兼ねた娯楽施設」 はいはい。

        夢月亭清麿は円丈の秘密を暴露するという『失われたキンタマ』。20年ほど前に円丈師と旅をしたときに明かされた、円丈師の秘密とは・・・・・。ホントかなあ(笑)。

        「さん喬を振り払ってやってまいりました」と柳家喬太郎が言うと、ドッと笑いと拍手。「そこで拍手をもらうと・・・ドキドキしますね」 ネタは『白日の約束』。ホワイト・ディに彼女と約束をした男。それが何の約束だったか思い出せない。彼女から詰問されてしまう。「きょうは何の日だった?」 「・・・・・円丈還暦まつり」 「それは9月18日でしょ! この噺は半年前の3月14日の話じゃない!」

        林家彦いちも円丈に新作作りの相談をよく持ちかけたという。「円丈師匠に相談すると、わけわかんない答えが返ってくるんですよ。『君は大事なことがわかってない。このぼくの右手は右手であって、右手じゃないんだ。このテーブルはテーブルであってテーブルじゃない。ぼくが君をこのナイフで刺したとしても、ぼくはぼくであって、ぼくではない』 ?????」 ネタは『ジャッキー・チェンの息子』を途中まで。

        ひとり8分の持ち時間だというのに三遊亭円丈『稲穂の絨毯』を始めてしまって、終わらない終わらない。25分ほどみっちり。それにしも奇妙な話だ。農業機器のセールスマンが一日の仕事を終えてビジネス旅館に帰ってくる。夕飯を食べている最中に幻覚が見えてくる。ご飯から苗が出てきて稲穂が実る。卵焼きからヒヨコが出てくる。蒲鉾がサメになる。アジの開きの土俵入り。エビフライの脱皮。ワカメの脱走・・・・・・。すごいシュール! 男が今まで食べたものが列を成して出てくる。男はお詫びの旅に出る事にする・・・・・。この噺初めて聴く事ができたが、こんなシュールなものとは思わなかった。

        時間が無い中、春風亭昇太は円丈落語との出会いについて熱く語る。「[ジャンジャン]に東京乾電池の芝居を観にいったんですよ。そしたら実験落語会のチラシがあった。それで観にいって円丈落語に出会い、落語家になったんです。円丈師匠は新作に自由を与えた。何を題材にしてもいい。どんな風に演ってもいい、どんな口調で喋ってもいいという自由を与えた人です」 短い時間で出来る噺といえばこれと、『愛犬チャッピー』。必要以上に愛犬を可愛がる女主人と飼い犬の攻防噺。「こないだ買ったかわいい服着ましょうね」 「オレ、もう人間の歳からいったら還暦なんだよお」

        仲入り後は、円丈一門による合唱『円丈さんの古入歯』。『大きな古時計』の替え歌。先月の『新・落語21』でも歌われたもの。円丈師匠を中心に、らん丈、白鳥、小田原丈、亜郎、天どん、かぬうが歌う・・・・・でも、天どんが歌ってないよう。

        秘蔵スライド写真上映会。昇太、彦いちを司会に、円丈の原点ともいうべき懐かしい写真の数々がプロジェクターに映し出される。

        三遊亭白鳥『台所の隅』。これもショートヴァージョン。扇子を縦に銜えてピョンピョン飛びながら出てくるのはノミなのだが、「扇子を銜えてボケている円丈師匠」 「そのままじゃないか!!」

        「円丈師匠を見ていると、破滅型の芸人という気がしてきます。楽しみでしょうがない。どういう死に方をするのかと」 柳家小ゑんもショート・ヴァージョンの『ステオク』

        トリを取るのは当然三遊亭円丈。「この噺、嫌がる人が多いんですが、私が好きな噺なんで演らせていただきます」と『肥辰一代』をたっぷり。[汲み取り]の基礎知識をマクラに、汚穢屋の仕事に命を賭けた肥辰と、その肥辰の弟子に成ろうとする少年の物語。この噺を聴いて噺家になろうと決心したという後輩がたくさんいるらしい。そのくらい力の入った噺なのだが、糞尿をテーマにしているだけあって、引いてしまっているお客さんもいるようだ。

        最後に円丈師の挨拶。「私は性格がシャイなんですね。普通の落語家のようにヨイショができない。楽に金を稼げなくて、愚直に四十年も新作をやってきました。きょうの会は弟子たちがやってくれました。そして、後輩がぼくのあとを付いてきてくれました。ぼくは異端ではありません。これが大道なんです。還暦を迎えて疲れを感じるようになりました。もういつ死んでもいいやという気になっています。歳を取るといろいろと衰えてきます。でも、ぼくの好奇心だけは衰えていません。探検する心は失いません。『師匠の最高傑作は?』と訊かれたら、『次の一本』と答えます。命の続くかぎり作り続けます!」

        思えば20年ほど前、私は実験落語会旗揚げのころから円丈師の落語を聴き続けてきた。邪道だという声も聞かれたが、これぞ新しい落語だという思いから、寄席に行かなくなっていた時期でも、円丈一派の落語だけは聴き続けて来た。それが、どんどん後輩が育っているではないか。円丈師の果たした功績は、本当に大きかったといえる。円丈師匠、還暦おめでとうございます。これからも、いつまでも、新作を作り続けてください。


September.19,2004 乱歩を落語でという試み

9月11日 池袋演芸場九月中席

        仲入り後は、江戸川乱歩の小説を落語にして高座にかけるという企画。乱歩ねえ。私も高校生のときに全集が出ていて、全冊読みました。やはり初期のころの作品が面白くて、後期の作品は惰性で読んで、もう一生、これで乱歩を読むこともないかなあと思ったものだった。現にあれから全集も古本屋にまとめて売ってしまったし、再び文庫本で買いなおすこともなかった。乱歩の話、憶えているかなあとの不安を抱いて池袋へ向かった。

        夜の部が始まるところで入場。最初は空席が目立ったが、少しずつお客さんが増えだして、仲入り前には立見が出始める。

        開口一番の前座さんは三遊亭かぬう。「今席の企画は何かと申しますと、豊島区在住の噺家だけで番組を組もうということでして・・・・・そうじゃない人は立教大出身」 ネタの『鰻屋』へ。調理には素人のご主人が鰻を捕まえようとする。「『さーっ』とか『しゃーっ』とか鳴いて逃げていく。これはきっと福原愛ちゃん」

        三遊亭窓輝も「今席は豊島区ゆかりの噺家特集で」と説明してから『ぞろぞろ』へ。かぬうの『鰻屋』も窓輝の『ぞろぞろ』も舞台を浅草ということにして演っていた。豊島区じゃないのね(笑)。

        笑組の漫才はテレビ番組の話題。「超能力の番組なんてありますでしょ。ユリ・ゲラーとかね」 「ユリ・ゲラー? 由利徹の弟子かい?」 「違うよ。スプーン曲げたりするんだよ。ただ擦っただけで曲げちゃうんだ」 「粗悪品だったんだよ。早く河童橋へ行って新しいの買えよ」

        「プロポーズの言葉というのはいろいろありまして。『君はまるで空気のようだ。ぼくは君がいないと生きていけない』という言葉でプロポーズした男性がおりまして、何年か経って会いに行ったら奥さんがこう言ったそうです。『あんたはまるで二酸化炭素のよう。側にいるだけで息苦しい』」と林家うん平『権助魚』へ。

        「落語協会の人が統計を取ったところ、中席は雨が多いそうです。歌にもあるじゃないですか。♪ナカセキは〜 今日も〜 雨だったあ〜」最初から飛ばしまくるのは古今亭志ん駒。「アタシが志ん生師匠のところに入門したころにはもう、朝さん(志ん朝)なんて大人気でしたよ。アルファロメオを乗り回してまして、2月だっていうのにオープンカーにしちゃう。助手席にいるのがアタシ。寒いからタオルで頬っかむりして乗ってる。あれじゃあ『チロリン村とクルミの木』のイタチだよ」 チロリン村のイタチがわかるお客さんが今どきどのくらいいるのかわからないけれど、そういうことを無視して突っ走る志ん駒の漫談は明るい明るい。志ん生の世界湯の話をやって最後はお馴染み手旗信号。

        「夏は暑いから汗かくでしょ。手元が狂っちゃうのよ」 また奇術のアサダ二世がいいわけとも冗談ともつかないトークをしている。「じゃあ、上着脱いでやればいいじゃないかっていうとね・・・出来ないですよ。ネタを隠してあるんだから」

        『かんしゃく』という噺は私は大好きだ。現役では小三治のものを筆頭に、いろいろな噺家が取り上げている。誰のを聴いても私は笑える。ところが、一度ある噺家さんからこんなことを聞いたことがある。「あれは難しい噺ですよ。ツボにはまると爆笑を取れるけれど、どういうわけかお客さんがクスリとも笑わなくなってしまうときがある」 この日の柳家左楽のがこれだった。ちょっと客席が重くなっていたかな。

        「さっそく歌でも歌いましょうか」と出てきた川柳川柳。この日はばかに機嫌がよさそう。「こんな出だしの噺家はいないよね。こういうと私の場合客席から『軍歌!』とか『ジャズ!』なんて声がかかる。『落語!』って声がかからないのが寂しいけどね」 また『ガーコン』かと思ったら、虚実ごっちゃの[涙の円楽]噺。最後は快楽亭ブラック作詞の『涙の連絡船』の替え歌『涙の円楽腺』を楽しそうに歌っていた。

        曲独楽の柳家とし松は、いつも慣れたもので、お客さんをいじりながらの糸渡りの独楽など。

        「なぜここに出てきたかというと、乱歩に可愛がられた噺家っていやあ、もうオレだけだから。乱歩先生、オレを抱っこするんですわ。『おめえは可愛い、可愛い』ってケツなぜる」 三遊亭円歌が歌奴のときのエピソード。長谷川伸にも可愛がられたようで、昔の作家は噺家を呼んじゃあ遊んでいたらしい。漫談は円生が落語協会を抜けた裏話にまで及び、もう自分は一生噺家をしていくしかないと結ぶ。「いまさら鉄道員には戻れない。今から新大久保の駅へ行って『新大久保〜!』って言ったって、誰もわからない。あの駅今や、日本人誰もいないんだから」

        仲入り後はいよいよ乱歩三本。まずは三遊亭白鳥。「馬桜さんから電話を貰いまして、『ランポの噺をしてくれよ』って言うんです。『ランプ? 魔法のランプですか?』って江戸川乱歩のことだったんですね」 こうして図書館で借りてきた読んだという『人間椅子』が始まったのだが、これが原作のアイデアだけを残して、換骨奪胎させた白鳥ワールド。ちょっと変わった家具職人。おかみさんは儲けるためには「割箸から棺桶まで何でも作るんだよ!」と言うが、この職人ときたらヘンテコな椅子ばかりを作っている。「固定観念を払拭して、未知の領域に挑戦するんだ」と息巻いている。「これを見ろ! 足の無い椅子だあ!」 「・・・・・それって座椅子だろ?」 「えっ、そんなのがあるのかい?」 「『かに道楽』へ行けば、たくさん並んでいるよ」 「『かに道楽』だけにカ(ン)ニングしたな」 美貌の女流作家から、座っただけで小説のアイデアが出る椅子を作ってくれと言われ、自分が椅子の中に入って女流作家の家に入るが・・・・・。ここからはもう原作を逸脱した爆笑世界。人間椅子に座ったのは美貌の作家だけでは無く・・・・・。ふはははは。思い出すだに可笑しい。

        白鳥の噺の後に上がった鈴々舎馬桜「なるほど、そうきましたか」 初日とあって白鳥が『人間椅子』をどう料理するか楽しみだったよう。「乱歩作品を演ってくれと言われまして、いろいろと読んでみたんですが、どれも読んでいるうちに陰々滅々としてくるんですね。落語にはなりません。その中でも、『これなら落語になるだろう』というものを選んでみました」と始めたのが『人でなしの恋』。モノローグ形式で語られる恐ろしくも悲しい物語。途中で鳴り物が入って、『たちきり』を思わせる世界。しっとりと結構なものでございました。終わって、踊り『なすかぼ』

        三遊亭円窓『押し絵と旅する男』はジュサブローの人形と共演した芝居を落語に直したもの。「ジュサブローさんと稽古をするでしょ。『いいわ、いい、いい、そう』ってベタ褒めしてくれるんです。私の師匠円生から稽古を受けるときなんて褒められたことなんて一度もありませんでした。駄目だとなるとクソミソに言う。まことに嗜虐性の高い稽古でした」 「乱歩の作品というのは語り口調で書かれているんです。ですから声に出してみると案外演りやすい。これから演ります『押し絵と旅する男』は一番文学性が高く、品のある作品といわれております。原作は長いものですので、その一部だけでございます」と噺に入った。じっくりと、時に落語らしく笑いを入れながらの噺は、十分に落語としてこなれた出来になっている。落語らしくキチンとオチを付けて終えた高座に堪能の一言となった。

        もう忘れたと思っていた乱歩作品、こうして落語で聴いてみてもしっかり憶えていた。やっぱり高校生くらいに読んだものっていうのは、いつまでも憶えているもので。


September.13,2004 意外な結末に導く6話のオムニバス

8月29日 劇団フーダニット
       『みかんの部屋』 (タワーホール堀留小ホール)

        推理劇を上演し続けている劇団、劇団フーダニット。ロベール・トマといえば、『罠』や『8人の女』で有名な作家だが、この『みかんの部屋』は知らなかった。

        『みかんの部屋』はパリのあるホテルの一室を舞台にしたオムニバスもの。文無しの絵描きが宿賃の代わりに果物の絵を何枚か描いていった。それぞれの部屋にその絵を飾り、その果物の名前が付けられている・・・・・落語の『ねずみ』みたいだなあ(笑)。そのうちの『みかんの部屋』で、宿泊客たちにいろいろなドラマが起こる。話は全6話。1話が20分程度で完結するようになっていて、飽きさせない。しかも推理劇になっているから、「あっ」という結末がそれぞれ待っている。

        かなり暗いものから、カラっと明るいものまで様々。私は笑える結末が待っている3話目と4話目と6話目が面白かった。フランスの作家らしく、男女の関係が細かく描かれていて楽しい。


September.8,2004 やっぱり本来、芝居は相手がいてこそ面白い

8月28日 桃井かおり&イッセー尾形 ザ・二人芝居 (クエストホール)

        余裕で間に合うつもりで家を出たのが、突然に用を思い出してしまい、いくつか買物をしているうちに開演時間が迫ってしまった。ロビーの食べ物も、飲み物も全て諦め。開演ギリギリで席に滑り込む。

        上手が桃井かおりの着替えスペース、下手がイッセー尾形の着替えスペースになっている。4つのネタの区切りに、ふたりが着替えるのだが、ついつい目は桃井かおりの方に行ってしまう。女性の着替えシーンの方がいいやね。イッセー尾形のひとり芝居だと、その着替えシーンを眺めてしまうけれど、こう並んで着替えしていると、男の着替えはあまり観たくない(笑)。まず服から着替え、最後にカツラを被るのだが、このカツラを被ることによって、全然見た目が変わってしまうのが可笑しい。

1.社長夫人がハネムーンに来ている。ホテルの手配などをコーディネイトしているのは、その会社の社員。観ていくうちに、どうもこの社員は社長夫人のことをよく思っていないことがわかってくる。ミネラル・ウォーター事件がヘンだなあと思っていたら、そういうことだったんだ。

2.闘牛士(!)の男は、心中騒ぎを起こしたのだが死に切れずに自分だけ生き残ってしまっている。実はこの男、心中相手の妹に恋してしまっていたのだ。

3.52歳になっても子供のままのクミちゃんと、そんな彼女にうんざりしながらも付き合っている男。

4.夜の海岸。セクハラと間違えられて自殺を考えている男と、ホステスが心中をはかる。実は男の与えた睡眠薬は致死量ではなく、先にホステスが目を覚ましてしまい、自分も死ななくてはと、首をナイフで切って自殺する。あとで目が覚めた男は・・・・・。

        こうやって観てみると、やはりひとり芝居よりも、相手がいるふたり以上の芝居の方が面白いなということ。たまにはひとり芝居もいいけどね。


September.4,2004 酒・・・止められませんねえ

8月21日 志の輔らくご21世紀は21日 (新宿・明治安田生命ホール)

        張り切って早くチケットを取りすぎたのか、手に入れたのは最前列。メモ書きは目立つから断念(笑)。記憶だけで書き記しておきます。メモを取らないで観ると、純粋に落語を楽しめていいものだなあ(笑)。

        開口一番は志の輔三番目のお弟子さん立川志の春『狸の札』。頑張ってね。

        立川志の輔一席目は、開催中のアテネ・オリンピックのことをマクラに持ってくる。メダルを取った選手がコーチと抱き合っているシーンがテレビから流れるのを観て、「私ら落語家の世界ではありえませんね。高座で大受けして、楽屋で師匠と『やりました』 『よくやった』と抱き合うなんてありえませんから。考えてもみてください。私と談志が抱き合うんですよ。そのかわり反省ということもありません。何人も出れば誰が勝ったとか誰が負けたはあるんです。でも緩〜い、緩〜い。受けなかった落語家が楽屋の隅で泣いている奴なんて、ひとりもいません」 ネタは『試し酒』。五升の酒を飲めるかとの賭けに挑んだ田舎者の下男、久造の、酒を飲みながらの独り言のようなものが聴かせどころだ。「こおだら結構な酒というものを、身体によくないから止めろという奴がいるからよわるだよ。『酒は身体によくないから止めろ』言うでよ、止めたよ」 「よくやめられたな」 「いや、そいつと付き合うのをよ」 私も酒飲みの方だから、わかるわかる。「医師はウソ言わねえね。オラもさすがに身体悪くなって医者いっただよ。『酒は止めた方がいい。酒は人生短くする』 オラも長生きしたいからよ、一日酒を止めてみた。その酒を止めた日の長いこと、長いこと」 わかるわかる(笑)。

        松元ヒロのパントマイム『NHKお昼のニュース』。話題はアテネ・オリンピック中心。金メダルという言葉が出るたびに下腹部を押さえる仕種が可笑しい。他にアメリカ産のブロッコリーに中国産のブロッコリーを混ぜて販売してた業者の、すり替え証拠写真が見つかったなんてニュースあり。どうやってそんな写真が存在したのやら。その事実の方が可笑しい。

        立川志の輔二席目は、旅のマクラから。今回は恐山に行った話。飛行場を降りて入ったレンタカー屋の話、パーキングのおじさんの話、恐山の売店の人の話、その日泊まった宿屋の話・・・・・。そこで出会ったさまざまな青森の人の様子を綴っていく。「青森県民は暗いなんて、誰が言ったんですか? 明るい、明るい」 30分くらい恐山旅行のことを喋っていただろうか。この志の輔という人物は、人前で喋るというのが本当に好きで好きでたまらなくて落語家になったんだと思う。これだけの小旅行のことを、こんなに喋れる、しかも聴いていて面白いというのは稀有の才能だと思う。どうするのかと思ったらネタは『鰍沢』へ。地の果てのような恐山と同じく、鰍沢も雪深い山の中。そこの小屋に住む住人は、明るい青森県人とは大違いの人物。マクラとの対比が面白く堪能の一席だった。

        会場を出て、川崎の友人の家へ向かう。電車が多摩川を渡るときに車窓を見たら、この日は花火大会。大勢の人たちが川のほとりに座っていた。猛暑の夏だというのに、この日は例外的に涼しかった。友人宅の屋上で納涼バーベキュー。肉を炭火で焼き、ワインを空ける。遠くでは花火の音が。「タマやー!」 『たがや』の職人さんは無事に橋を渡れたろうか? 酩酊した頭でいろいろなことを考える。いやあ、飲んだ飲んだ。これだから酒飲みって嫌だね。もっとも久造みたいに五升は飲めないよ。


このコーナーの表紙に戻る

ふりだしに戻る