December.31,2004 なぎら健壱で笑い納め

12月26日 第307回花形演芸会 (国立演芸場)

        いよいよ今年も押し詰まってきた。蕎麦屋なんていう職業をやっていると、これから先は年越し蕎麦に向かって一直線。のんびりと芝居や寄席を楽しみに行くわけにもいかない。今年の観納めは、花形演芸会。

        開口一番の前座さんは、鈴々舎馬るこ。「竿竹屋が回って来まして、絶対に折れない竿竹だというので、近所の人がみ〜んな買ったんです。そしたらすぐに全部折れてしまった。オレオレ詐欺」 ネタは前座定番の『牛ほめ』だったのだが、さすがに馬風の弟子らしく弾けている。「おめえいくつになった?」 「20だ」 「ハタチだな」 「イタチか?」 「ハタチだ」 「30過ぎてゲイだったらカマイタチか?」 新築したおじさんの家に、家を褒めに行く与太郎さん。台所の柱に穴が空いているのを気にしているというので父親に「秋葉さまのお札をお貼んなさい。穴が隠れて火の用心になります」と言えば小遣いを貰えると言われたものだから、早く言いたくてたまらない。「台所はどこだ? 掛軸の後ろか?」 「忍者屋敷じゃないよ」 これがうまくいって牛も褒めてさらにお小遣いを貰おうと思った与太郎さん。「牛はどこだ? 掛軸の後ろか?」 「だから忍者屋敷じゃないんだって!」

        『反対車』は若手がいろいろな演出を考えて演るので楽しみな噺だ。春風亭昇輔の車屋も突っ走っている。「そこを右に回っとくれ」 「いや、曲がったことは嫌いもなんで」 「曲がれないんだろう?」 「いやできないすことはないんです。まっすぐ曲がることならできます」 まっすぐ曲がるとは何かと思ったら、昇輔、座布団の上で座ったまま飛び上がり右に90度身体を捻った。「落語200年というけど、おそらくお客さんに横腹を見せて落語を演るのはこれが始めて」 このままどうするのかと思ったら、「そこをまた右に回っとくれ」 「あいよ!」と曲がると、客席からは後ろ向き。「あたしの背中に200人の視線を感じます」 ここからはさらに難しい180度回転で元どおり。拍手喝采を浴びる。さらに昇輔は、この噺に独自のオチを持ち込んだ。車に乗るときに行き先を告げる「万世で北」がうまく決まったサゲとなった。

        三遊亭全楽は今年のプロ野球の話題、新紙幣の話題、NHK不祥事の話題など、この一年にあった世相をマクラで語り、『尻餅』へ。今年も暮れていくなあ。

        江戸むらさきのショートコント集。どうも私はこのショートコントというのがあまり好きではない。ひとつひとつのネタは面白いのだが、笑いが途切れていってしまうというのはなんだか物足りない。観終わってどんなネタを演ったのかほとんど思い出せないということがある。でもタイトルだけでもメモしておくと、またネタが頭の中に蘇ってきて楽しい気分になる。爽やかな朝 流しソーメン プロポーズ 金の斧銀の斧 特技 シャッター 新幹線 闘牛士 雪合戦 優しいドライブスルー 密着取材 忍者 うれしい知らせ 親子 わんこそばときどきラーメン トスバッティングときどき五木ひろし 水商売 ET 蚊 人命救助 パトカー ティッシュ配り おむつ ショートケーキ 小悪魔 東京オリンピック 聞かせておじいちゃん1、2、、3 皿洗い 視力検査。ふははは、思い出しちゃった。

        三遊亭竜楽も年末ネタの定番『二番煎じ』。清元や都々逸で火の用心の夜回りをする町会の面々が楽しい。♪火の用心〜 夜回り済んで 早めに帰り 待ってる私に火を点けて って、いよっ! ・・・・・色っぽいけど、ダメじゃん。

        仲入り後は、この日のお目当て、なぎら健壱。「何で私がここにいるかわからない。私はお笑いじゃないですからね」と言うが、いやいや、この人のトークはこの日の誰よりも面白かった。とりあえず一曲『当世銀座節』。「テレビ番組の収録中に眩暈を覚えまして病院に行ったんですね。CTスキャンをしようということになったんですが順番待ちで、一番早くて一週間後。『それじゃ死んじゃうよ』っていうんで保土ヶ谷の脳神経外科を紹介してもらって、そこに入院してたんです。集会所みたいなところがあって、みんなでテレビを観ている。女の子が私に近づいてきて『おじさん、テレビに出ている人ですか? サインしてください』と言うのでサインしてあげましたよ。そしたら部屋中の人ひとりひとりに『ねえねえ、こういうの貰っちゃった』って見せて歩いている。部屋を出て隣の部屋まで行って、また『ねえねえ、こういうの貰っちゃった』をやっている。やがて戻ってきて私の前に来て、『ねえねえ、こういうの貰っちゃった』って、そういう病院かよ!」 ここで、これを歌っているのは今や日本でなぎら健壱と小沢昭一だけという『スカラーソング』。 「こぶ平が正蔵を継ぐんですって? それで三平をいっ平が継ぐそうでして、そうなると空いた名前はどうなるんでしょう。まさか小朝はこぶ平を継がないでしょうから、海老名みどり? あるいは峰さん?」 『下町(まち)』を挟んでへび女の口上をひとくさり。「脳検査の結果、異常無しということで退院したんですが、まだ調子がおかしいんで、保土ヶ谷権太坂の病院にもう一度診てもらおうと思って行ったんですね。9月でした。自転車で深川を出て品川、川崎、横浜、そして権太坂へ着いたときには顔中尋常じゃない汗。待合室に入っていったら、その汗を見て他の患者さんが『先に診てもらったら?』っと言ってくれました。先生『どうしたのその汗! ・・・・・まずいな。どうやってここまで来たの?』 『自転車で・・・・・』 『バス停から?』 『いや、もう少し先から』 『保土ヶ谷の駅から?』 『いや、もう少し先』 『横浜?』 『もう少し先』 『どっからですか?』 『自宅から』 カルテを見ていた先生、『江東区東陽町・・・・・治ってますね』 ラストナンバーは『東京節』。

        なぎら健壱にこれだけの面白トークをやられてしまうと、後に出て来る芸人は辛い。次に出てきたハミングは若手の漫才。歴然と笑いのツボを押さえるテクニックの差が出てしまう。ふたりがかりでも笑いがあまり取れない。「略奪結婚なんてしたいと夢にみますね。教会で結婚式を挙げている彼女のところに行って、窓を叩くんだ」 これって映画『卒業』でしょ。元ネタがバレバレ。「彼女を奪って公園に行って告げるんだ」 「何て?」 「好きです」 「つぼ八」 う〜ん辛い笑いだよなあ。なぎら健壱に完全に負けてる。

        「韓流ブームなんていいますから、落語の方も韓国版を作ったらと思います。『夢金』を『夢キム』、『金明竹』を『キム明竹』、『紀州』で聞こえてくる音は、チャンドンゴーン、チャンドンゴーン」 トリは五明楼玉の輔『佐々木政談』 頓才のある痛快な子供の噺で、今年の私の演芸鑑賞は全て終了。

        『客席放浪記』もこれで無事に4年目を終了いたしました。来年は5年目に突入。ご愛読くださっている方に、おん礼申し上げると共に、また来年もよろしく申し上げます。では、三本締め。ちゃちゃちゃん ちゃちゃちゃん ちゃちゃちゃんちゃん ちゃちゃちゃちゃん ちゃちゃちゃん ちゃちゃちゃんちゃん もう一丁! ちゃちゃちゃん ちゃちゃちゃん ちゃちゃちゃんちゃん どうもありがとうございましたあ!!                


December.29,2004 でたー! 白鳥の新聞固め

12月23日 『進化する噺家 円丈再生』 (国立演芸場)

        幕が上がると板付きでズラリと噺家が頭を下げて並んでいる。下手から司会の小田原丈、白鳥。そして挨拶の清麿、小ゑん、円丈、昇太、喬太郎、彦いち。

清麿 「円丈師匠とは昔、よく喫茶店で長い会話をしていました。いつも落語のことばかり。最近もよく話しをしますが、話題はドラクエ、Jポップ、そして家庭の愚痴」

小ゑん 「小さん門下で、まっとうに古典落語の修業をしていた私ですが、円丈師匠の毒牙にかかり、新作を演るようになってしまいました。師匠の新作落語は今までにないものでした。ここで一句。円丈の 前歯鋭く 年の暮れ」 他のメンバーの「その句は何なんだあ?」の声に、「たいした意味はない」

昇太 「思い起こせば20数年前。円丈師匠の落語を聴いて、『あっ、こういう落語があるのか』と思いました。円丈門下に弟子入りしてボクも落語家になろうと思っていたのですが、初志貫徹せず春風亭柳昇に弟子入りしてしまいました。大正解でした」

喬太郎 「再生ということは、一度滅んだたという事でしょう。滅んでからはどうでもいいものは再生しません。円丈師匠は決して滅んでもいません」

彦いち 「ボクのネタに『横隔膜万歳』というのがあります。横隔膜を外すという奇天烈な噺です。これを円丈師匠の前でやったとき、師匠はボクに『お前はお前を外したいんだろ? 外せ! 明日までに外して来い!』と言ったんです。この人はキチガイなんじゃないかと・・・。このときです、この人に付いて行こうと思ったのは」

円丈 「12月10日に60歳の誕生日を迎えました。それと同時にドラクエ8をクリアしました。100時間かかりました。この労力を落語に向けていたらどれだけ良かったかと・・・・・。最近はJポップにも関心がありまして、これからはサビのある落語を目指そうかと思っております」

        三本締め。一番上手の彦いちがカメラを出して横から楽写。

        ここから新作落語がズラーっと並ぶことになる。まずは三遊亭白鳥。「今から15〜6年前、池袋のビックリガードの近くのメゾン中谷荘というアパートに住んでいたことがあります。六畳一間、家賃6000円でした。ガスが無い、水道が無い、そして窓が無い、それなのに床の間がある。さらにはカギが無い。カギは大家さんが持ってるんです。家賃払わないと大家さんがカギかけちゃう。窓ガラスが無い上に、布団も持ってなくて冬でもタオルケット一枚で寝てました。ある晩、お腹の上がモワーっと暖かくなったんですね。ところが金縛り状態で起き上がれない。そのうちにどんどん暖かくなっていく。朝気がついたら猫が六匹、ボクの腹の上で寝ていた。怖いけどメルヘン」 ネタは今年の8月の『落語21』初演でも聴いた『増田君の嫁』。42歳で独身だったJA職員のアニメおたく増田君が結婚することになった。「お前と結婚してくれるなんて相手は何歳? 80歳くらいか? いいな、年金貰ってる相手で」 「23歳ですよ」 「・・・・・それって人間の歳にするといくつ?」 「人間ですよ」 「あっ、わかった。結婚して離婚して、結婚して離婚して、結婚して離婚してって、子供が12くらいいるんだ。もう結婚してくれるなら誰でもいいと」 「初婚ですよ」 「・・・・・フィリピン人?」 「日本人ですよ」 「・・・・・悟ったんだな。その人、容姿が悪いから結婚相手は誰でもいいと。山に例えるとどんな山?」 「山じゃないですよ」 「妖怪ドロタボウみたいなのか?」 「白鳥麗子さんという、れっきとした女性です」 「・・・・・それって、どんな妖怪?」 もう白鳥ワールドは爆笑の連続だ。

        夢月亭清麿は『東急駅長会議』。東急沿線の駅長が愚痴を言い合う。「池尻大橋なんて地名は無いんです。玉電の池尻と大橋の中間に駅を作ったのでこんな名前になってしまったんです」 「駅名をくっつけるくらいなんですか。私のところの多摩川は以前は多摩川園といったんです。その前は多摩川園前です。なんで少しずつ駅名が短くなるんですか」 「そんなのいいですよ。ウチの二子多摩川も以前は二子多摩川園と言ったんです。それが最近じゃ川も取ってしまえっていうんで、みんなニコタマって言うんです」 「何を言ってるんですか。私の二子新地なんて、以前は二子新地前って言ったんです。それがあるとき、駅のアナウンスで『二子新地前!』って言ったら二人の子供の兄弟が泣き出してしまった。この子達は双子で『双子死んじまえ』と聞こえたんですね。それで前が外されてしまった」 そこで祐天寺が怒りをぶつける。「祐天寺といったら、今は中目黒に移転してしまった目黒区役所があったとこ。現在も税務署、図書館、それに目黒高校もあります。いわば目黒区の中心。それなのになぜ急行が停まらない!!」 こうして、2年に一回、急行の停車駅と通過駅が逆になるという事が行われるのだが・・・・・。

        「明日はクリスマス・イヴ。いつからなんでしょうかね、若いカップルがホテルに行く日になっちゃったのは! 中で何をするかは明らかでしょ!? (大きな声で)日本人はそんな淫乱な国民じゃないでしょ!! これだけ言ったら気が済みました」 柳家喬太郎の噺は最近、三題噺から生まれたという『聖夜の義士』。お題は[忠臣蔵] [デジカメ] [サンタクロース]だったらしい。若いカップルがクリスマス・イヴの日に会話を交わしている。女性が「もう3年付き合ってるんだよ。今夜こそプロポーズしてね」 「いじゃないか。もうそういう仲なんだから」 「女はキチンとプロポーズして欲しいのよ。プレゼント、弾んでね」 男、バスケットボールを突く真似。「そうじゃなくて!! デジカメ買ってくれる!? 残業なんてしないでよ。頼まれるとイヤと言えないんだから!」 ところが課長から残業を言いつけられてしまう。御徒町駅前でサンタクロースの格好をしてビラ配りをする仕事だ。「そんなのアルバイトに任せればいいでしょ」 「アルバイトはみんなクリスマス・イヴだっていうのでデートだ」 「ええーっ、アルバイトはデートに行けるのに、正社員のボクはデートに行けないんですか?」 頼まれるとイヤと言えない性格のこの男性、デートをすっぽかしてビラ配りを始める。そこへ彼女が偶然通りかかり、彼は振られてしまう。実はこの男性、赤穂浪士のある義士の末裔で・・・・・。実に喬太郎らしい弾けたところから、叙情を持たせたラストまで。出来上がったばかりというこの新作にうっとりとしてしまう。 

        春風亭昇太『宴会の花道』。昇太ファンにはお馴染みノンアルコールの食事会形式の宴会の噺。ひょっとして古典『味噌蔵』がヒントになっているんじゃないかなあと思えてきた。好きなものを言えという中にザザ虫なんてのが入っているのが可笑しい。

        「高座で死ねたら本望なんて言う噺家がいますが、そんなこと出来ません! 仮に高座で倒れても引きずり降ろされます。席亭からは不吉だって外に放り出されてしまいますから」 還暦を迎えた三遊亭円丈の一席目は『夢一夜』。病院の集中治療室から抜け出してきた末期癌患者がタクシーに乗る。20万円のチップを渡し、賑やかな盛り場に連れて行ってくれと頼む。タクシーはなぜか羽田空港へ。家族には恵まれなかったが金には恵まれたというこの患者。金にあかせて羽田空港のANAカウンターの前に庭付きの座敷は作らせるは、春日灯篭は建てさせるは、果てはカウンターの女子職員に芸者の真似事をさせるは、機長には幇間をさせるはの大騒ぎ。思いっきり笑わせておいて、寂しいラストが待ち構えている。

        仲入り。楽屋へK師を訪ねる。来年の翁庵寄席に人を介して出演依頼をしていたのだが、私からもご挨拶しておこうと思ったからだ。名刺を差し出し来意を告げ、来年春の翁庵寄席に関する私の構想をご説明する。いつもは客席から観ているだけだったK師と話しができてうれしい。好感触を得て客席に戻る。

        後半はまず円丈のお弟子さんたちによる、五分間好きに使ってよしの[小らくごちゃん]大会。

        三遊亭ぬう生は、立ちの一人芝居『相方をなぐりに行く漫才師』。漫才コンビ千野さびすけ、わびすけ。突っ込み役の男は、どうも相方に不満がある。もうコンビ解消だと相手の家に乗り込んでいくが・・・・・。タイトルそのままの噺。

        三遊亭天どん『合コンお父さん』。大学生の息子の合コンに一緒に参加させろと強引に迫るお父さんの噺。「ねえ、合コ〜ン、合コ〜ン」とダダをこねるお父さんの台詞に、コ〜ンと五分間終了の鐘の音が、ちょうど合う。

        三遊亭小田原丈『レンタルヒデオ 小らくごバージョン』。自作の『レンタルヒデオ』を五分バージョンで。レンタルビデオでは無い。レンタルヒデオ。ある日、郵便受けの中に「早くヒデオを返してください」との手紙が入っているのを見つけたヒデオくん。母親にどうしたことなのかと問いただす。実はヒデオくんはレンタルヒデオ。借り物だったのだ。返却日の催促だったという摩訶不思議な話。レンタルヒデオという駄洒落からよくぞここまで引っ張ったという感じ。

        三遊亭白鳥はオバーオールにコート、帽子を被ってメガネをかけ、古新聞とスケッチブックのようなものを持って登場。「朝刊亭紙太郎でございます。新聞固めという芸を専門にやっております。まずは固め試しの『藤娘』から」と言うなり、新聞紙をクシャクシャと丸めて何やら形を作り出した。身体を揺らすところなどは、紙切り芸人のよう(笑)。出来上がったオブジェのようなものを黒い紙の前に置くと、むむう、藤娘に見えないこともない(笑)。「では、ご注文をお受けしましょう」 客席から「七福神!」の声。「この間、何でも固めますと言いましたら、『天ぷら油を固めてくれ』と言われまして」 出来上がったオブジェは七福神の乗った宝船に見えないこともない(笑)。「ご注文になった方、取りに来てください。嫌だとは言わないでくださいよ。帰りにゴミ箱なんかに捨てていかないように」 あまり持ち帰りたくないなあ。「他にご注文はありませんか?」と白鳥が呼びかけても誰も注文の声が無い。持ち帰りたくないのはみんな同じ気持ちらしい。「白鳥!」の声に、白鳥に見ようと思えば見えるものを固めて「はい」 いらないよう(笑)。『新聞固め』は、新しい芸になりそう。

        三遊亭らん丈はいつもの新明解ではなく、『漢字プリント』。今度は陰山英夫の『徹底反復漢字プリント』を持ってきた。小学生の各学年用に、これ一冊でその学年で教わる漢字を全て使って文章にしてあるというプリントなのだそうで、無理矢理に文章を作るから、不思議な文章が出来上がっているというのを紹介。

        新作の会というのは息が抜けないので疲れが来る。以前に聴いたことのあるのは、白鳥の『増田君の嫁』と昇太の『宴会の花道』だけ。さすがに柳家小ゑんが出てきたあたりから疲労感を感じる。これは以前に聴いたことのあるネタで『樽の中』。ある家の嫁と姑の不思議な関係を描いた落語で、さわやかなラストに向かうので好きな噺なのだが、私としてはちょっと休憩。姑さん「ビールは缶じゃなくて瓶にしてくださいね。缶はアルミが溶け出して、これを飲むと脳にまで達してよくない病気になるそうですよ。アルミハイマー病とかって」

        林家彦いちは、SWAで作った『青畳の女』。これ最近よくかけている。他の人は一回目のSWAでの噺をあまり引き続き演っていないようだけど、大切にして欲しいなあ。せっかく作ったんだから。

        「関西弁には一音節というのが無い。目はめえ、歯ははあ、胃はいい。蚊あに咬まれてなんていいます」と、珍しく三遊亭円丈が関西弁で演る落語『金融道イヴ』の続編『月のじゃがりこ』がトリネタ。前作で海外逃亡したのかと思っていた、じゃがりこの田島はなんとまだ東京をうろついていたのである。金貸しのくせにして、自らが多重債務者になっている田島。シンジという若い助手までいる。かくなる上はこのシンジを売り飛ばして、香港偽造カード使い放題4泊5日→アフリカのダイヤ鉱山2年間力仕事という海外ツアーをさせようかとまで考え始める。そこへ現れたのが昔の女。田島の借金4750万円を肩代わりしてやろうと言い出す。夜の公園でふたりして夫婦(めおと)じゃがりこを食べる姿が美しく浮かんでくる。

        4時間近くあった新作の会。さすがに疲れたが、K師にご挨拶できたし、白鳥の爆笑新聞固めは観られたし、そして還暦を迎えた円丈のいつまでも前進しつづける姿を確認できて、満腹感一杯で演芸場を出た。


December.26,2004 落語を楽しんでいる三太楼

12月19日 ちとしゃん亭 (ちんとんしゃん)

        暮も押し迫ってきた。2年前に一度だけ行った事のある高円寺の柳家紫文さんのお店、ちんとんしゃんで行われている落語会。前回も柳家三太楼が目当てだったが、今回も三太楼が聴きたくて予約を入れる。何といっても10月に聴いた三太楼の『初天神』が気になってしょうがないのだ。その後ラジオで一度耳にしたものの、もう一度聴きたい。その二本は微妙に違っていたのだ。そのへんも確認したかったのだ。あんまり私が「三太楼の『初天神』、三太楼の『初天神』」と騒ぐものだから、同行の者が直接本人にかけあってくれた。『初天神』を演ってくださいと頼んだら、「ようがす」と答が返って来たとのこと。粋だね。

        出演者三人一席ずつ三席のつもりが、一席増えてしまった。そういうわけで、まずは柳家三太楼『初天神』を演りに上がる。なんといってもまず最初のおかみさんと、熊五郎のやりとりがいい。初天神に行くという亭主に金坊も連れて行っておやりよと言う姿がいい。なんとか子供を押し付けたいという様子がありありとしている。「お前さんの子だろ?」 「いやだ。今日からオレが籍抜いてもいい!」 いままで何度となく一緒に外出しては「あれ買ってくれ、これ買ってくれ」で懲りている様子が伝わってくる。間がよく(悪く)金坊が帰ってきてしまう。こうして絶対に物を欲しがらないという約束で出かけるふたりだが、やっぱり団子が欲しくてたまらない。「いい子にしてたでしょ。そんないい子に何か買ってあげようと思わない? へんだと思うんだよ、お父さん」と言う子供の目は据わり、全身を捩ってダダをこねる金坊。「だ〜ん〜ご〜! 買ってくれえ〜!」っと大声で叫ぶ金坊の姿は何回観ても可笑しい。「おい、これはお前とオレの会話だろ。何でそうやって世間様に広めようとするんだ!」 (周りの人たちに)「話、つきましたから。買ってあげますから」と言い訳する熊五郎がこれまた可笑しい。いやあ、涙が出るほど笑うという経験は、そうあるものではない。ほんとうに涙が出た。

        二番手は柳家太助。「幼稚園の参観で、子供が『お父さんのように落語家になりたい』と言ったという話を聞きまして、ジーンとしました。ところが理由がふるっている。昼間ずーっとウチにいられて、地方に旅行に行かれて、地元の美味しいものが食べられるってんですからね。それには違いないんですが」と『権助魚』へ。太助の顔が権助を演ると、妙に愛嬌がある顔になる。これも至近距離で観られるおかげ。

        「噺家というと酒が好きだというイメージがあるんでしょうか、よく日本酒を差し入れにいただいたりします。ある師匠は酒は好きだけど日本酒は苦手で焼酎党。思い切って、高座で自分は焼酎が好きだと言うようにしていたら、焼酎ばかり差し入れが届くようになったそうで、言ってみるものですなあ。私が一番好きなものは飲み物でも食べ物でもありません。私の好きなのは皆さんの笑いです・・・・・。本当のところはご祝儀ですが・・・・・まっ、金の嫌いな人はいませんが」と、柳家さん光『穴泥』へ。

        柳家三太楼二席目は『文七元結』。年末が舞台なだけに今頃聴くとこの噺はより趣きがある。吉原・佐野槌の使いのものが長兵衛を訪ねてくる。着物が無いので女房の女物の着物を着て外へ出ると、使いのものがそれを一目見て「凄まじい格好ですね」と声をかけてくる。見るに見かねて「ちょっとこの羽織を」と長兵衛にかけてよこす演出がいい。佐野槌のおかみさん、文七、鼈甲問屋の旦那、番頭などの描き方も文句無し。今年もいい『文七元結』で暮れていくなあ。

        終わって忘年会。三太楼さんと、ちょっと話す。『初天神』は演るたびに少しずつ変わっていくので演っていて自分でも楽しみだという。今のところ、団子屋の場面しかアイデアが出来ないので、あそこしか演らないとのこと。私が三太楼のネタの中で一番好きなのは、この『初天神』と『花見の仇討ち』だと伝えると、「『花見の仇討ち』は自分でも楽しんで演ってますから」とのこと。きっと三太楼の中では演りながら、噺の解釈がどんどんと膨らんでいくのに違いない。


December.24,2004 落語と貧乏の因果関係

12月18日 第246回 下町中ノ郷寄席 (中ノ郷信用組合本店4階大ホール)

        早めに家を出て、都営浅草線の本所吾妻橋で地上に出る。初めて行く会場だが、信用組合といえばおそらく大きな通り沿いにあるのだろうと軽い気持ちでいたのが失敗だった。上がったところは交差点。まだ開演時間までには十分にあるからブラブラと歩いて会場を確認して、喫茶店にでも入って時間を潰そうと思っていた。交差点に立ち、当てずっぽうに歩き始める。ところが、どうやらこの方向では無いと気がつき、先ほどの交差点まで戻り、違う方向を試してみる。こちらも違う。こうして四方向全て試してみたのだが中ノ郷信用組合は見つからない。開演時間は刻々と迫り始める。いったいどこなんだ? ふと電話ボックスが目に止まる。中に入って電話帳で中ノ郷信用組合を探す。住所を書きとめて、駅前の住所表記ポードを見る。中ノ郷信用組合は、実に分かりにくい場所にあることが判明。表通りをひとつ奥に入ったところなのだ。急いで会場に向かう。中ノ郷信用組合の正面玄関にたどり着いたが、シャッターが下りている。落語会の張り紙すらなく、とても落語会を演っているとは思えない。途方に暮れてしまった。「待てよ」と、建物の裏側に回る。裏口のドアが開いていて、[下町中の郷寄席]の立て看板があるではないか。そして、こんな提灯まで。



        信用組合の裏口をくぐると受付があった。900円払ってエレベーターで4階へ。売店まであり、飲み物やアイスクリームを売っている。会場になっているホールに入れば、地元の人らしいグループが売店で買ったビールを開け、持ち込んだ焼き鳥でもう宴会気分。チラシをみると、どうやら毎月一回こういった催しを行っているらしく、今回が246回というから、もう20年以上続いている会のようだ。

        開口一番の前座さんは橘ノ冨多葉『時そば』。頑張ってね。

        今度、私の店の二階で落語会を演る瀧川鯉橋が高座に上がる。実は今回はこの人の高座を聴きたくてこの催しにやってきたのだ。「築53年、風呂無し、六畳、家賃3万円のアパートに住んでおります。以前はもう少し駅から遠いところ築43年、風呂無し、四畳半、家賃2万5千円のアパートでした。もう10年もすれば駅の構内に引っ越せるのではないかと・・・・・。なにしろ落語に出てきます主人公が貧乏、友達も貧乏、話している方も懐が寂しいというくらいでして」と、『蒟蒻問答』に入る。上州安中に流れてきた道楽者の六兵衛が村の寺の和尚になる。お経すら読めないが、ぶらぶら遊んでいるだけでなんとか生きていかれる呑気な商売である。そこへ旅の僧がやってきて禅問答をしたいと言うから、厄介が持ち上がる。落語世界では貧乏でも呑気に生きていかれる。そこから面白さが生まれるんだなあ。

        仲入り後は、古今亭志ん橋が暮の風物落語『掛取り』をたっぷり。狂歌、義太夫、芝居、喧嘩と、借金取りをうまく言いくるめる、こんな芸。いかにも貧乏な噺家が考えそうなことではないか。志ん橋の乗り乗りの高座にお客さんが沸きに沸く。

        ハネてから、楽屋の鯉橋さんに挨拶。貧乏しても好きな落語で生きていきたいという若い二ツ目の噺家さんの姿。思わず応援してあげたくなってしまう。案外、落語というものは、貧乏を体験して初めて味が出てくるものなのかも知れない。頑張れー! 二ツ目の噺家さんたち!


December.23,2004 日本人の『悪いなあ』と思う気持ち

12月12日 志の輔らくご in PARCO

        東京公演の千秋楽。先月から演っているから、インターネットやら知り合いから少しずつ内容が漏れ伝わってきてしまう。まっ、いいか。より完成した形の志の輔の今年の新作を聴けるのだから。

        一席目。今年のキーワードは、日本人の『悪いなあ』と思う心だと指摘する立川志の輔。「温泉騒動がありましたでしょ。白濁した色の湯が有名だった温泉に、濁りがなくなってしまった。そこで入浴剤を入れた。草津の湯の入浴剤を入れたら、ちょうど元のように白濁した湯になった。それが問題になった。別に毒入れたわけじゃないんですよ。入った人でもわからないのに、何もあんなに言われなくてもいいじゃないですか。温泉の質は変わってない。むしろ入浴剤を加えたことによって温泉の成分は上がっているんですよ。これも、やってきたお客さんに白濁した湯でないと『悪いなあ』という気持ちからやったことでしょう。西洋人はこんな考え方をしない」 そこから、三菱自動車のリコール問題、UFJ銀行の不良債権隠し問題、年金破綻の問題などまで取り上げ、これも全て日本人の『悪いなあ』と思う心から起きた事件だと繋げてみせる。「こうやって毎年、新作を作ってここでかけているのも、『古典だけじゃわるいなあ』という気持ちからですよ。いつもどおりのことやっていれば何のことないのにね」 「こう話していると一番前の席が空いている。ここは不思議な劇場でして、一列目がXなのね。二列目がY、三列目がZで、四列目からABCD・・・・・と続いていく。チケット取って、X列なんてのが届いて、『X? これ相当後ろだろ。見えるの?』なんて思って来なかったなんてことあるかもしれませんね。案外遅れてきて、案内係がペンライト持ってお客さんを案内しながら、他のお客さんに『悪いなあ』と思いながら入ってくるかもしれません。そうしたら、盛大な拍手で迎えてください。それと毎度毎度この劇場では始まる前に案内係の女性が携帯電話の電源を切るように挨拶するでしょ。あの人たちだって、毎回毎回こんな注意をして『悪いなあ』と思いながら言っているんだと思います。ですから、あの人たちが出てきたら盛大な拍手を持って迎えてください」 こうして一席目の『こぶ取り爺さん』に入った途端である。今話していた一番前の席に案内係がペンライトを持ちながらお客さんを誘導してきたではないか。これには、さすがに噺を一旦中止。客席が盛大な拍手に包まれたのは当然のこと。日本昔噺を英語に翻訳をした翻訳家のところに、アメリカ人の編集者がやってくる。いろいろな昔噺を収録する予定だったが、『こぶ取り爺さん』だけは削除したいと言い出す。というのも、この噺が何を言いたいのかわからないからだと言う。「2番目のお爺さんが踊りがヘタだったのは悪い事ですか?」と言われて、言葉に窮する翻訳家。家族の者を集めて、『こぶ取り爺さん』が何の意味を持った話なのか相談する。「タイトルがおかしい。正しくは『こぶ取り爺さん』じゃなくて、『こぶ取られ爺さん』あるいは『こぶ取り鬼』」 「ようするに、2番目のお爺さんは運が悪かったってことでしょ」 「鬼って変だ。大切なものだからと言われてあずかったこぶを、なんで2番目のお爺さんにつけるの? この噺の言いたいことは鬼はバカだってことでしょ」 離婚を迫られている義理の息子は『かぐや姫』を持ち出してくる。「だいたい日本昔噺はおかしい。なんで竹の中から産まれた女の子を親切に育ててあげたのに、大きくなると勝手に月に帰っていっちゃうの?」 志の輔は、なんとか『こぶ取り爺さん』の言いたい意味を外国人に教えてやらなければ『悪いなあ』とい気持ちから、いろいろと考える日本人の翻訳家の姿を滑稽に描写する。

        二席目。舞鶴で観光バスが水没したニュースをまず取り上げる。9時間後にこのバスは救出されたのだが、バスの屋根に登った乗客たちは夜が明けるまで『上を向いて歩こう』を合唱していたという。「今、全ての世代が口ずさめるヒット曲ってあるんでしょうか?」と音楽の話題をたっぷりマクラにして、『歓喜の歌』に入る。ある公民館が、ふたつの会をダブルブッキングしてしまう。どちらもママさんコーラスで、会の名前もよく似ていたことから同一の会だと思い込んでしまったのだ。事情を説明して、合同で使ってくれないかと申し入れる会場側。どうしようもないので、しぶしぶ納得する両グループ。公民館側のスタッフはミスを認めたものの、やはり軽い気分でいた。そんな折、昼食に近所のラーメン屋にラーメンの出前を注文したらば、間違ってタンメンが届く。野菜嫌いの職員だが、「じゃあ、それでいいよ」とタンメンを食べる。夕刻、食器を取りに来た店員は餃子を持ってくる。お詫びに食べてくれと言うのである。そこで公民館のスタッフは考えてしまう。ダブルブッキングのお詫びに自分達は、餃子を持ってくるようなお詫びをしただろうかと。ここにも日本人の『悪いなあ』と思う気持ちが顔を出す。そこから、当日スタッフの奮闘が始まる。忙しい日常の合間をぬってコーラスの練習をし、発表会に出ることを楽しみにしているママさんコーラス。ママさんたちと公民館職員の奮闘ぶりには、感動を覚えた・・・・・ところで後ろの幕が開き、ママさんコーラスグループが登場。ベートーベンの『歓喜の歌』が響き渡った。志の輔の新作の中でも、これは感動的な人情噺に仕上がっている。

        仲入り。三席目が始まる前に、また会場の案内係が携帯電話の電源の注意。会場から盛大な拍手が沸く。喋りにくそうな係員。爆笑。

        三席目は、古典『浜野矩随』。二席目の『歓喜の歌』が人情噺として、見事に成立していたので、ここでまた人情噺を持ってくるのは、さすがに聴く側としては辛い。他に何かなかったのだろうかという思いがある。それでも、さすがに志の輔の『浜野矩随』は聴き応えがある。死ぬ気になって彫り上げた観音様を持って若狭屋に行くと、店先の小僧さんが落ち葉を掃いている。掃いても掃いても落ちてくる落ち葉に文句を言っている様が、いかにも志の輔らしい発想で面白い。矩随を迎える若狭屋の主人も、先日ひどい事を言ってすまなかったと詫びる姿がこれまた志の輔らしい。これまた『悪いなあ』という日本人の気分が現れているような気がする。

        三席通して、日本人の[『悪いなあ』と思う気持ち]を盛り込んだ志の輔。こうして聴き比べてみると、三席ともボリュームがあって面白いのだが、やっぱり私には、感動させる後の二席よりも、一席目の爆笑を誘う『こぶ取り爺さん』の方が印象に残った。志の輔の後半の熱演が一生懸命であっただけに、『悪いなあ』とは思うのだけど・・・・・。


December.19,2004 本格推理劇と名乗るなら、納得のいく解決を

12月11日 JIS企画
        『マダラ姫』 (紀伊国屋サザンシアター)

        3時間を越える『SHIROH』に疲れを覚えたあと、そのまま銀座から新宿へ移動。カフェで本を読みながら時間を潰す。時間が来たのでザンシアターへ。佐野史郎が出る推理劇だというので観てみたくなり、チケットを取った。『マダラ姫』とはコナン・ドイルの『まだらの紐』から来ているらしい。

        海岸沿いのある別荘。舞台劇の脚本家が10日後に迫った初日を前にまだ脚本が完成していない。この芝居のとは、『Moment絹ごしの月』。舞台で作り物の月が役者の頭に落下してくるという内容らしい。だから豆腐の角に頭をぶつけて死んでしまえということで、『木綿と絹ごしの月』。なんだそりゃ。心配して東京から演出家(佐野史郎)、女優(広岡由里子)が駆けつけてくる。そこには、劇作家の長いこと音信が途絶えていたという双子の妹(加藤紀子)と、その婚約者だという男(小日向文世)がいる。

        劇作家は書斎にこもりっきりで、決してドアを開けてはいけないと鍵をかけている。しかしもう何日も外に出てこない。ひょっとして作家は中で死んでいるんではないか。いや、どうやら作家は失踪したらしいと思われ始める。そんなときに宅配便が届く。中を開けると、人間の手首のフィギュアが出て来る。これは作家が、今書いている作品がまとまらず、「お手上げ」 「手が出ない」 「手に負えない」という意味ではないかと、いみじくも佐野史郎が言う。なんだか、このあたりから、この作品に騙されているような予感がし始める。この『マダラ姫』自体が、途中でまとまらなくなってきてしまっている脚本なのではないか・・・・・と。

        双子の妹と、その婚約者がやがて奇妙な行動を取り始めるあたりから、どうやらこのふたりが何かたくらんでいるらしいとわかってくる。どうやら、ラストに向かって合理的な解決がつくのではないかと、期待が湧いてくる。ところが、話はだんだんホラーのようになっていく。この辺りの演出は見事で、かなり怖い。いっそのこと、このままホラーにしてしまえばいいのにと思ったのだが、なにやら中途半端。最後に屋台崩しがあるからホラーといえばホラーなのかもしれないが。

        チラシなどには、「謎が謎を呼ぶ<本格推理劇>。あっと驚く大どんでん返し」とある。本格推理劇と銘打つなら、ちゃんと論理的、合理的な結末に導く脚本にして欲しい。これでは、推理劇好きの者にとっては、貴重なお金と時間を使って観に行ったのが、損をしたような気になってしまう。


December.17,2004 やっぱりミュージカルは苦手だ

12月11日 SHINKANSEN☆RX
        『SHIROH』 (帝国劇場)

        劇団☆新感線初の本格的ミュージカル。もともと芝居の中に歌や踊りをふんだんに取り入れている劇団だから、ミュージカルをやってもおかしくは無い。テーマが島原の乱とくれば、即座に『ジーザス・クライスト・スーパースター』が思い浮かぶというわけで、内容はほぼ想像していた通りのロック・ミュージカルになっていた。

        世の中にはミュージカルが好きな人と嫌いな人がはっきり分かれていると思う。私はどちらかというと苦手な部類。『SHIROH』オープニングの40分くらいまでは、新感線らしさがあまり感じられないで戸惑いを覚えた。そう、いわゆるミュージカルらしい演出が続く。主演のふたりのSHIROH(中川晃教、上川隆也)は歌も上手いし動きもいいのだが、新感線の芝居を期待して来た者としては、やや退屈な展開。何しろ歌が多いので(ミュージカルなんだからあたりまえなのだが)、物語の展開が遅い。劇団☆新感線の芝居の醍醐味は、早いストーリー展開、役者の速い動き、立ち回り、そこに挟まれるコテコテなギャグにあると思うのだが、それがまったく機能していない。

        橋本じゅん、高田聖子ら、劇団☆新感線の役者が動き始めるあたりから、舞台はいきなりいつもの新感線らしさが出てくるのだが、それはいつまでも続かない。しばらくするとまたミュージカルのスロー・テンポの展開に戻り、また新感線の役者らが出てくるとテンションが上がるの繰り返し。おそらく、ミュージカルのファンは喜んだのだと思うが、新感線の芝居を期待してきたお客さんは、やや戸惑いを感じたのではないだろうか?

        高橋由美子、杏子らの女優陣、池田成志、それにベテラン江守徹の熱演も印象に残った。ラストでテーマ曲ともいうべきゴスペル風の曲を全員で合唱するのも良かった。でもなあ、やっぱりいつもの新感線が観たい。やはり私はミュージカルは苦手だ。



December.14,2004 トラベルミン

12月5日 『噺を楽しむ』 (前進座劇場)

        開口一番の前座さんは柳亭こみち『道灌』。頑張ってね。

        柳家はん治のマクラが面白い。「広島に仕事があって、落語家何人かと新幹線に乗っていたときのこと。車内で携帯電話で大きな声で話している男がいる。『こらあ、800万やで! わからんのか、ボケ!』。パンチパーマ関係の人です。『あとでどうなるのかわからんのか、ボケ!』。車内はシーン。赤ん坊もピタッと泣き止んだ。赤ん坊も気を使ったんですかね? そのうちに腹が立ってきました。マナーというものがあるじゃないですか。思わず言ってやったんです。(大きな声で)『マナーを守れ!』・・・・・こんな大きな声じゃありませんよ。聞こえちゃいますからね。すると兄弟弟子が『はっきり言ってやればいいじゃないですか』って言う。新大阪でこのパンチパーマが降りた。ホームには、やはりパンチパーマの人たちが出迎えてて、『ごくろうさまです』って挨拶している。ドアが閉まったのを見て、大きな声で『マナーを守れ!』って言ってやったんです。すると、どういうわけかまたドアが開いた。とっさに兄弟弟子の胸ぐらを掴んで『マナーを守れ!』って言ったら、そのパンチパーマが、こちらを見て、『マナーを守れ!』」 ネタは桂三枝・作の『鯛』

        「大根は消化によいと言われていまして、ですから刺身のツマなどに使われるそうです。ですから大根役者というのは、[当たらない役者]という当てこすりなんですね。逆に当たる役者は[かいわれ大根]」 林家正雀は、前進座劇場は普段は芝居を演るところだからと、正蔵ゆずりの芝居噺『七段目』

        マギー隆司のマジック。いろいろな図形の描いてある何枚ものカードをお客さんに選んでもらって、念写するというネタ。カードをパラパラとやっているところを、お客さんが長い棒で突っ込んだところのカードを当てるというのだが、私のすぐ目の前のお客さんがやったのだが、この人ちょっといじわる。一番下のカードのところに棒を置いた。マギー隆司、「あっ、それはちょっと困るんです」 どうもトリックのわかってしまうマジックが多いのだが、話術で引っ張っていく。これぞ、寄席のマジックの芸。

        柳家小三治が出てくると「待ってました!」の声がかかる。医者から中性脂肪(「中性脂肪って何なんですかね? 男でも女でもない脂肪ですか?」)、コレステロール値が高いと言われて、ダイエットしたというマクラが爆笑を巻き起こして、長く続く。「歳取るとね、よく健康の話ばかりするでしょ? 私、30代、40代のときは、そういう話をする年寄りは嫌だなあと思ってました。でも、今は、どこが悪い、ここが悪いって話、だーい好き!」と、まだ終わらず、眩暈の話に入っていく。たびたび眩暈が起こるので、脳外科に行って診てもらうが、何も異常がない。薬を貰って、それを飲み続けているうちに、眩暈というのは三半規管が悪いのではないかと気がつき、耳鼻咽喉科へ行ってみるのだが、そこでも結果は同じ。「『薬を出しましょう』と言うので、『脳外科で出してくれた薬を飲んでます』って言ったら、それとは別にもうひとつ薬を出してくれました。これ、何だと思います? トラベルミンですよ。あの乗り物酔いの薬。気になって『医者から貰う薬がわかる本』っていうの読んでみたら、効能に確かに一番最初に、眩暈って書いてある。その次に乗り物酔い。副作用っていうところを見たら、眠気、手の痺れ、食欲不振・・・・・それと何て書いてあったと思います? 眩暈ですよ。眩暈の薬を飲んで眩暈がするんですか? 眩暈の人に、わざと眩暈を起こさせて、プラス・プラスでマイナスにしようってことですか? でもプラス・プラスでもっとプラスになっちゃったらどうするんでしょう?」 こうして膨大なマクラのあとに『宿屋の富』に入る。椙森神社の富くじで一等が当たったことを確認した一文無しの男も眩暈を起こす。「急に地べたが近づいてきたぞ・・・・・ううー、トラベルミン」 これには場内大爆笑。宿屋の亭主もおかみさんも目を回してしまう。みんなトラベルミン飲まなきゃ(笑)。       


December.12,2004 新作派からの古典への斬り込み

11月28日 第100回ミックス寄席
        『桃白鳥』 (ティアラこうとう)

        開口一番の前座さんは昔昔亭喜太郎『まんじゅうこわい』。あっ、先日の『錦マニ』でも出ていた前座さんね。ネタも同じ。桃太郎の弟子だから、いずれは新作を目指すんだろう。頑張ってね。

        なぜか『はとぽっぽ』のお囃子で三遊亭白鳥が出てくる。「桃白鳥(とうはくちょう)。なんだか高級な中華料理屋みたいですね。桃太郎師匠と話していて、ふたりで共通するところってあるんですね。池袋で同じマンガ喫茶によく行ってたりする。『じゃあ、今度一緒に行こうか』って、一緒に行ってどうするんですか」 一席目のネタは『トキそば』。もうすっかりこのネタも復活させました。うれしい。おっ、最初のそば屋は、ちゃんと荷を肩に担いで登場するようになった。この最初のそば屋も丁寧になってきた。一文ごまかしたことに気がついた、これを見ていた男。「一文ごまかすために、こんな苦労使って・・・、朝の10時から深夜寄席に並んでいるようなものだよなあ。絶対に座れるのに」 2番目のそば屋は、いつもどうりリヤカーで登場(笑)。客に声をかけられると逃げ出す。「何で逃げるんだよう?」 「ひぇ〜、北朝鮮に拉致される〜」 「なんだよ」 「へへへへへ、これからは何でもありというサインでして」と、ここからは、白鳥ワールド炸裂。何回観ても涙が出るほど笑える。

        昔昔亭桃太郎一席目「きのうは、静岡で鶴瓶とふたり会。あいつが呼んでくれたんですけどね、疲れちゃって。あの人ね、相手から吸い取るのね、養分を。それで自分だけビッグになっていく。すっかり仲良くなって、『兄弟の盃を交わそう』なんて言い出すんです。そしたら、女房が止めたの。『兄弟分っていうのは、五分と五分のつきあいよ。鶴瓶師匠は、収入があなたの50倍』」 こうして、虚実取り混ぜた感のある、自分の女房との出会いからのエピソードを語る『愛妻物語』へ。大喜利で飛び入りで謎かけに出たときのエピソード。「お題がお寺。オレがやったのが、『お寺と掛けて、新聞と解く。そのこころは、今朝来て今日読む(袈裟着て経読む)』。そしたら女房が出てきちゃってやったのが、『お寺と掛けて、破れたパンツと解く。そのこころは、ときどき坊主が顔を出す』。女房の方が受けるんだよ。次に出たのがタバコ。オレのやったのが、『タバコと掛けて、謝罪と解く。そのこころは、すいません』 女房のが『タバコと掛けて、おっぱいと解く。そのこころは、吸い過ぎに注意しましょう』 受けるんだよ。終わって、ギャラ、オレにくれないんだよ。女房に渡すんだよ」

        三遊亭白鳥二席目は、やはり一番の新作ネタ『青春残酷物語』だ。山口県の田舎からやってきた学生の吉田くん。八百屋でバイトしている先輩の田中くん。中国人留学生で居酒屋でバイトして、歌舞伎町一帯に牛乳を配っているおじさんがいるチン・シュウメイくん。この三人が歌舞伎町のキャバクラで飲み逃げをやろうと相談する前半部分に、後半で爆発させるさりげない伏線が大量に敷かれる。それが不自然でなく語られるので、あとの驚きが大きい。歌舞伎のお旦が役者を接待して、祝儀まで渡すという話がきっかけで、飲み逃げの話が始まるのだが、それが最後のオチにまで繋がるのだから凄い。ちなみに今回頭に残ったフレーズ。「清酒・人民開放。中国で作っている日本酒よ。一升280円。メチルとエチルのカクテルよ」 バナナをつまみに酒を飲むとい先輩に「バナナなんて喜ぶのは今ではチンパンジーとガッツ石松くらい」

        このところ古典落語に挑戦している昔昔亭桃太郎は、『お見立て』を持ってきた。東南アジア買春ツアー体験の長いマクラが入ったのだが、これが面白いのなんのって。でも、これは書けないので省略。ネタに入ったらば、これはもう桃太郎世界。古典も桃太郎流にガラリと変化する。喜瀬川が出てきても全然花魁っぽくない(笑)。「花魁、今日は男っぽいですね」 「女役、慣れてないの」 「いい人が参りましたよ」 「誰? キムタク」 「いいえ」 「昔昔亭桃ちゃん?」 「いいえ、杢兵衛さんです」 「あの人は箱根八里」 「はっ?」 「やだねったら、やだね。あたし、あの人に抱かれるくらいなら歌武蔵の方がいい」 「どういう発想ですか?」 この日、大受けだったのが、杢兵衛が喜瀬川と新宿末広亭に行ったときのことを語るくすぐり。「喜瀬川が『喬太郎がいい男』だと言うだよ。腹出てるでねえか。でも、オラ、その後に出てきた桃太郎の方がいい男だと思うだ」 「いや、それはありません。協会が違いますから。それは柳家さん喬じゃないんですか?」 そういえば、どことなく桃太郎とさん喬は似ている(笑)。ここにまた新しい古典が誕生しようとしている。落語は自由だ。何でもありだ。新作派からの古典への斬り込みに、これからも期待が高まる。古典派の人たちもウカウカできなくなってきましたよ。


December.6,2004 実はこのマンガ喫茶が・・・・

11月28日 ハラホロシャングリラ
        『ワンダーランド』 (紀伊国屋ホール)

        この劇団の、楽しく笑わせようという姿勢が好きで、ここのところ公演があるたびに行くようにしている。台本がよく出来ているのも魅力。

        舞台のセットは、マンガ喫茶。左右に背の高い書棚がズラリと並べられ、中には本物のマンガ本がギッシリ。さしずめマンガのジャングルのようになっている。ひとりの男(いんげん)が看護婦(石黒亜実)に連れられてマンガ喫茶に入ってくる。男は自分の奥さんが、もうじき子供を産みそうなので病院までやってきたのだが、落ち着かないので、このマンガ喫茶でマンガでも読んで、待っていてくれと看護婦に言い渡される。ところが、このマンガ喫茶はどうも様子がおかしい。受付にいた女(河野景子)は、自分は受付の人間ではないと言い、家計簿をつけている最中だと言う。そこへ支配人らしき男(松澤仁晶)が現れるのだが、男に小言を言って去って行ってしまう。他にもたくさんの客がいるのだが、男をバカにするヘンな人物でいっぱい。

        笑いの要素が強いのだが、いつものハラホロシャングリラと比べて、やけにシュールだなあと思って観ていくうちに、『ワンダーランド』というタイトルが『不思議の国のアリス』から来ているもので、やけに忙しそうな看護婦が、うさぎだと気がついたところから謎が解けた。男は印刷会社で安月給で働いている、うだつのあがらないサラリーマン。ルックスもパッとせず人生を流されるままに生きてきた男なのだ。この喫茶店ワンダーランドは、男の過去を清算して、新しく生まれてくる子供のために父親になるための心構えを自覚させようとする場所だったのだ。

        う〜ん、今回も、やられたなあと思う、うまい台本と、気負いのない演技の役者さんたちに心から拍手。


December.4,2004 またまた出てきた『死神』の新オチ

11月27日 花形演芸会 (国立演芸場)

        満員御礼の札が貼られた。この会で空席があると、なんだか寂しい気がする。1500円で、これだけの演芸が楽しめるのだから、行かなきゃ損というもの。この日のように満員の客席だと芸人さんもうれしいだろうが、こちらも気持ちがいい。

        開口一番の前座さんは、春風亭朝也『真田小僧』。頑張ってね。

        柳家三三が、「履いてく犯罪」の小噺を振る。泥棒噺の始まりだ。この日は『夏泥』。どこか飄々としたフラのある三三には、こういう噺はピッタリという気がする。もともと居直り強盗じゃなくて、居直り被害者という発想がよく出来ているのだが、これが三三あたりが演ると凄みが増す。

        テレビでよくみかけるだいたひかるが出てくる。こういう普通の寄席では観たくても観られない芸人が観られるのも、この会のうれしいところ。脱力系の喋りが、なんとも可笑しい。「気になること。動悸、息切れ、めまいに求心・・・・・って言うけれど、そこまでいったら救急車を呼んだ方がいいと思う」 「私だけ? シンクロの入場って、北朝鮮の香りがする」 テレビによく出ているのでネタを憶えている人もいる。「私だけ? 小澤征爾はオーケストラをまとめる前に・・・・・」と言っただけで笑いが起こる。「髪をまとめた方がいいと思う」 「私だけ? ネタの途中でネタがバレている気がする」

        「このあと、どうしようと思っているの、私だけ?」と紙切りの林家二楽が、ちゃっかりいただいて登場。いつもは鋏試しに桃太郎を切っている二楽だが、初心に帰ってと、最初に習ったものをと、馬を切り出す。「しばらく切ってない。よせば良かったんですが・・・・・。私の馬は田舎臭いと言われました。足が太いんですね。どうもサラブレッドには見えないと言われて・・・・」と2分で競馬のゴール前の競走馬とジョッキーを切り上げる。お客さんからのお題は[冬のソナタ]。例によって「テレビで観ればいいじゃん」と言いながらも3分30秒で切り上げたのは、いちょうの葉を四隅にあしらっての男女の姿。「これじゃ秋のソナタですね」と言うけど、立派に冬ソナのイメージになっているところが凄い。得意にしている紙切りドラマは、さしずめ「名前、教えてくれないか?」とタイトルをつけたいもの。駆け落ちした男女の、その後の感動的なドラマを切り絵だけで見せる!!

        「オリンピックで銅メダルを取った浜口京子。おとうさんのアニマル浜口の『気合だあ〜!!』が評判になりました。何をやっても親の方が目立ってしまう」と言うのは林家いっ平の自虐ネタ。これがさらに続く。「大銀座落語祭で私、英語落語に挑戦しまして、高座を下りたら小朝さんが感激して近寄ってきてくれまして、さかんに『よかった、よかったよ』って。『日本語で演るよりよかった』」 ネタは講談ネタの『荒茶の湯』。本田正信の茶会に招待された豊臣七人衆。細川忠興以外の者は茶の湯の心得がないので、細川の真似をして飲むという『本膳』と似た噺。地噺だから、ところどころ脱線してギャグ満載。ゲタゲタ笑っているうちにオチに到達。これに登場人物の名前をキチンと押さえられるようになると、いっ平の得意ネタになりそうな予感。

        怪しくない(?)スカーフから、鳩を出すと見せかけて、秋田名物ハタハタや比内鶏を出してみせたブラボー中谷。「調子が乗ってきたのでマジックをします。ラスベガスを拠点に主に秋田で活躍しています」というこの人のマジックは喋りも面白く、寄席芸向け。お客さんを舞台に上げてのマジックも楽しく見せてくれる。愛嬌のある体型と笑顔を魅力。こういう人が寄席の定席にいてくれると楽しいのだが。

        水戸大神楽の柳貴家小雪の芸も華があっていい。傘、皿回しもいいが、鍬の上にコーラを一杯に注いだグラスを乗せて振り回し、一滴もこぼさないで振り回す曲芸は息を飲んだ。

        トリは林家たい平。ネタは『死神』。この噺はオチが演り手によって自由に変えられるという珍しい噺だ。たい平はなんとこの噺、『時そば』から入るのだ。「今、なんどきだい」 「へい、九つで」 「九、十、十一、十二、十三、十四、十五、十六・・・・・と正直に払っていなくなってしまいました」 これはいわば劇中劇。主人公は林家なみ平という噺家。高座を下りると師匠にさっそく説教される。「なんでそんな客席を凍りつかせるような落語を演るんだ。もう、辞めちまえ!」 もう噺家なんて辞めてしまおうと、自殺をする決意で大川まで来たところで死神が現れる。「今、おめえの落語を聴いていたんだが、やっぱり、師匠の言うように、あんたは落語家辞めた方がいい。オレ達が出るよりも、お客さん凍りつく。おめえは、ずば抜けてつまらなくて、面白え」 こうして落語家を辞めて医者になれと勧められるという筋立て。死神を去らせる呪文は悪用する奴がいるから毎週変わるんだとのこと。今週の呪文は、「アジャラカモクレン ヨンサマフィーバー テケレッツノパー」 さあ、たい平のオチはどうするのかと楽しみにしていたら・・・・・。地下の穴ぐらには沢山の蝋燭が・・・・・。「ここにまとまって消えそうになっているのがありますね」 「それは『笑点メンバー』だ」 凍りつくような、なみ平の落語が大好きだという死神がゾロゾロと集まってきて、みんなが、なみ平に「ここで一席やってくれないか?」と言い出す。そして、その前に蝋燭を付け替えろということになる・・・・・。このあとは、お聴きになったときのお楽しみ。なあ〜るほどといった捻ったオチがまた完成したとご報告しておこう。


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