February.26,2006 役者が一番楽しんじゃってるみたいな芝居

2月25日 動物電気
       『豆ざむらい』 (下北沢・駅前劇場)

        今回も本編に入る前のコントが面白い。花粉症の説明ギャグが長々と続くのだが、それが本当にベタな笑いで、この劇団、こういうコントだけで一本まるまる演っても面白いんじゃないかと思えてくる。

        本編はというと、東京からクルマで2時間というところにある、ひなびた旅館みどり屋。そこを経営するのが独身の若女将しの(伊藤美穂)。そのしほに恋心を抱いているのが幼なじみのクニオ(小林健一)なのだが、クニオは地元のヤクザまがいの組織の跡取り息子。しののみどり屋を乗っ取って男向けのレジャーランド建設を目論んでもいる。毎日のようにみどり屋への嫌がらせ行為を仕掛けてくるのだが、しほは断固譲らない。ついにクニオはおじいちゃんを騙して権利書に判を押させて土地建物を手に入れてしまう・・・。

        こういうストーリーを書いていると、なんだか大衆演劇の筋そのままなのだが、そこに大量のギャグが放り込まれていて、かなり新感覚の芝居になっている。この劇団、なにかと男優が裸になりたがる傾向があり、今回も最初から露天風呂のシーンとあって、男の裸、裸、裸。う〜ん、男の裸はやはり気色悪いなあ(笑)。きわめつけは、ラストの小林健一の裸ギャグ・ショウ。このしょーもない笑いを楽しみに来ている常連客もいるんだろうけどね。


February.20,2006 昇輔っていい人柄だよなあ

2月18日 深夜寄席 (新宿末廣亭)

        午後9時ちょっとすぎに到着したら、もう開場していた。夜の部が早く終わったのかな。木戸銭を払って中へ入ると、もう前の方はあらかた埋まっている。9時30分の開演時間にはついに椅子席は満席。結局、左右の桟敷もいっぱいに。ざっと150〜160くらいの入りだと思う。なんなんだこの深夜寄席人気は。

        春風亭べん橋が小学生のときに考えたという小噺『居眠り』を披露してくれた。おおっ、なかなか小さい時から噺家になるべくしてなったという感じではないの。そのままネタの『子ほめ』へ。テンポよく生き生きとした『子ほめ』で、しっかり自分のものにしているのが好感を持てる。

        いよいよ真打昇進が5月に迫った春風亭昇輔。「今年の元旦、いつも買っている日刊スポーツの占いの欄を見たら、『口は災いの元』となってた。お前は商売の邪魔をするのかー!」と、このあと真打昇進にまつわる雑務に追われていることなどを漫談風に語り続ける。「深夜寄席大好きだっんですよ。このままグズグズと話していたんですけど、残りの短い時間で出来る噺を」と話し出したのが、書名根問とでもいう内容。物知り顔の隠居に、有名な小説の内容を説明させようという噺。『二十四の瞳』 『おろしや国酔夢譚』 『天城越え』をタイトルだけから推測する隠居のイマジネーション。それぞれ、風俗、右翼、覗きといった具合。お元気な隠居さんだこと。なんだか昇輔の作というよりも、快楽亭ブラックの作といった方がしっくりくるなあ。

        昔々亭慎太郎は出てくるなり、その昇輔をいじる。彼にとってはアニさんに当たるのだろうけれど、おかまいなし。そうしておいて、「心の広い人なんですね。決して怒らない」 うん、そんな感じの人なんだよなあ。でもだからって、先輩をいじっちゃいけないよお。ネタは『聾の釣』

        橘ノ昇美依までがマクラで昇輔をいじる。しょーがないなあ。ネタは『片棒』。女性らしく現代的な味つけの『片棒』になっている。長男の豪華な葬式には、有名シェフの名前をズラリと並べてみたり、風呂敷はブランド名をズラリと並べてみせる。次男の派手な葬式では松平健を呼んで、マツケンサンバならぬ、アカケチサンバを演らせる。♪オゴレ〜 オゴレ〜 アカケチサンバー・・・ 三男のケチな葬式では菜漬けの樽では少々小さいと言う父親に、「遺体を菜漬けの樽に入れ、塩を振って蓋をし、石を乗せて一晩置けば(遺体)が小さくなる」って、それじゃあ本物の漬物じゃないの(笑)!

        帰りに出口でお客さんを送り出している昇輔さんと、ちょっと立ち話。たまたま先日、私の店にご来店くださった時にお願いしたあることについて再びプッシュする。お願いね、昇輔さん。


February.18,2006 気をつけよう 風邪ひきと同じアイデア

2月11日 錦マニりた〜んず (なかの芸能小劇場)

        中野で何を食べようかと思案してしまうことが多い。いつもブロードウェイとその周辺に無数にある飲食店の前をうろつき、その数の多さ、手ごろな値段に迷いに迷い、なかの芸能小劇場の開演時間が近づいてきて、「えい!」と飛び込む店がいつもハズレというパターンが続いている。今回も中野ラーメン戦争の一軒に飛び込んでみたのだが、これが口に合わない。帰りに次回の割引券を渡されたのだが、今度はいつ中野に来るかわからないし、来たとしてももうこの店には入る気になれない。かといって「いりません」と突っ返す度胸は無く、ポケットに突っ込む。ただのゴミとなって、しばらくは私のポケットの中に残っていくんだろうなあ。

        古今亭錦之輔の独演会。若いお客さんばかり。まあ、年寄りには錦之輔の新作はついていけないのかもしれない。逆に若い人には受ける。

        開口一番は立川フラ談次『たらちね』。頑張ってね。

        錦之輔の一席目は、錦之輔の生まれ故郷、群馬県の富岡市のマクラから始まる。富岡は高崎と、コンニャクで有名な下仁田間を繋ぐ上信鉄道の間にある駅。観光スポットは群馬サファリパーク。「高崎から富岡までは上信鉄道で15Km、30分ほど、それが700円もする」 そんな富岡の中学生時代のエピソードなどが語られる。高崎まで遊びに出ることすら大行事だった富岡の中学生にとって、新宿歌舞伎町のイメージといったら、一般人は歩けない暗黒街。映画や小説の影響だろうなあ。そんな田舎の青年が東京の大学に受かって上京。アパートでのひとり暮らしを始めたという設定の噺が『気をつけよう 甘い言葉とひとり暮らし』。新聞勧誘員やら、消火器売りやら、果ては除霊士らがやってくる。

        ゲストは三笑亭恋生。「2004年のアテネオリンピック男子マラソン。誰が優勝したか憶えてないでしょ。でも沿道から侵入者が飛び出してきて、先頭を走っていたブラジルの選手の走行を妨害したのは憶えておられるでしょう。あんな奴はね、スナイパーを配置しておいて撃ち殺すべきだったんですよ。それだけじゃない。選手が一生懸命走っているのに、沿道で寝ているのがいる。あんな奴は殴ってやるべきです。こうやって私が喋っているのに前をよぎって話を妨害する人がいる。そういう人は・・・・・。それだけじゃない。私が一生懸命に落語をやっているのに客席で寝ている人がいる。そういう人は・・・・・」 おお怖! ネタは、いわゆる『替わり目』だが、最後までいかないので、「『酔っぱらい』でございます」と終えていた。

        錦之輔二席目は、正月に風邪をひきながら作ったという40分ほどもある大作『社長の迷宮』。社長に呼び出された社員が次々と催眠スプレーをかけられて、どことも知らない荒野に置き去りにされる。ここで特殊任務につかされることになる・・・・・と、しばらく聴いていて、これはある小説にかなり似ているのに気がついた。もちろん細かな設定は違うし、アイデアも錦之輔なりに盛り込んでいる。ただ、聴く人が聴けばパクリだということがわかってしまうはずだ。40分間という時間、波乱万丈が詰め込まれていて意外なオチもあるので、満足のいく噺ではあったが。

        あとで、本人に「二席目は『○○○○○○○○』でしょ」と指摘すると、「あっ、やっぱりまずいですかね」 「う〜ん、かなり変えてあるから、いいとは思うけど〜」 「あれ有線に流すんですよ」 「う〜ん、どうかなあ」

        後日、錦之輔からハガキが来た。二席目に関しては出版社に許可をもらうことにしましたとのこと。風邪をひいて妄想状態の中で作ったというから、ついつい似たアイデアになってしまったのかもなあ。


February.12,2006 弾けた華やかな花形

2月4日 第321回花形演芸会 (国立演芸場)

        このところ毎回、満員御礼の札がかかる花形演芸会。早めに入手しないとすぐに売り切れてしまうのだ。今月分は見送るつもりでいたのだが、急に訳があって観に行くことにした。当然もうチケットはないだろうけれど、当日の立見券でもいいやと思い演芸場のチケット売り場に立てば、あらっ? まだ後ろの方の席が売れ残っているではないか。顔づけも悪くないと思うのだがどうしたのだろう。まっ、こちらにしてはラッキー! 座って観られる方がいいもんね。

        開口一番は柳家さん作『道灌』。頑張ってね。

        神田京子の講談は『大名花屋』。この噺初めて聴いたのだが、演目名がネタをバラしてしまっているのね。いかにも女流講談向けの噺という気がする。白馬のプリンスがラストで登場というのは、どうも女性が喜びそうな噺なんだけど、なんだか、遠山の金さんみたいだなあ(笑)。

        栃木出身、栃木弁で漫才をやるというU字工事。「都会で出た産業廃棄物を栃木の山奥に捨棄てていく奴がいる」 「冗談じゃないですよね。ああいうゴミは茨城に棄てればいい」 こういうネタが笑えるのは関東人。「ブラックバスが他の魚を食い荒らして困ったものです。この際ですね、ブラックバスを全部吊り上げてしまえばいい」 「そしてそのブラックバスを茨城の霞ヶ浦に棄てればいい」 ふはははは、茨城県民が怒るぞお〜! このあと、体育館の裏でタバコを吸って先生に注意されるコント、田舎のラーメン屋のコント。

        林家彦いちが、アメリカで南京玉簾を英語でやってきたというマクラを。南京玉簾を無理矢理に英語にすると、ミラクル・バンブー・ブラインドだとのこと。「♪ルック・アット ルック・アット ルック・アット・ディス ディス・イズ・ア・ミラクル・バンブー・ブラインド! ホワット・キャン・ユー・メイク ホワット・キャン・ユー・メイク アイ・キャン・メーイク・ロンドン・ブリッジ・・・・・」 ネタは『反対車』。体育会系の噺家だけあって、こういうネタはいいなあ。

        モロ師岡は病院の待合室にやってくる、どこが病気かわからない元気なじいさんのひとりコント。待合室の老人たちにいちいち突っ込みを入れていく。「なに? 魚の骨が喉に刺さった? それならアネハさんに抜いてもらえ。とっても骨を抜くのが上手いそうだぞ。あんな人が成田の貿易検査官になれば外国から来る危ない牛肉の骨など抜いてくれるのにな」

        結成10周年だというポカスカジャン。この日は懐かしいネタのオン・パレード。テンプテーションズの『マイ・ガール』、このネタ懐かしいなあ。前にも書いたけれどバブルガム・ブラザースもこのアイデアで演っていたんだけれどね。危なくて書けないけど(笑)。カーペンターズの『イエスタデー・ワンスモア』のお寿司屋さんバージョン。ベン・E・キング『スタンド・バイ・ミー』笑点大喜利バージョン。線路の上を歩いていると後ろから汽車がやってくるので逃げながら一言。「うわー、汽車が迫ってくるけど、足がレールに挟まって、足がトレイン」と玉ちゃんがやれば、省吾は「うわー、足がレールに挟まってしまって、もうのぞみがない」と返す。この連中、『笑点』にも出られるなあ。さらには、『スタンド・バイ・ミー』の日本語バージョン。これは省吾が痛そう。そして、おお、これも懐かしい『レット・イット・ビーかくれんぼ』。盛り上がりすぎて、下座が勘違いして終わったのかと思ってお囃子を流し始めてしまった。「すみません、もう1曲あるんです」と、これまた危ない『韓国ロック』。

        ポーカー・フェイスの鏡味正二郎、前のポカスカジャンが受けすぎて、「もう何やってもしょーがないから、フツーにやります」と、太神楽のお手玉の曲芸、五階茶碗、傘回し。フツーといっても凄い曲芸だよね。

        トリは柳家三太楼。「ポカスカジャンさんが途中で降ろされそうになってしまったので思い出したんですがね、昔、小三治師匠がトリで『芝浜』を演っていたときなんでがね、サゲのところで酒を断っていた魚勝が、女房のお酌で一杯やろうとする。「よそう、また夢になるといけねえ」とさげるんですが、そこでタメが長すぎたんでしょうかね。下座が最後の台詞をもう言ったと思っちゃったんでしょうねえ。ドロドロドロドロと太鼓が鳴って、『ありがとうございます』と始めちゃった。小三治師匠、慌てて大きな声で『よそう夢になるといけねえ!』って怒鳴ってました。名作が一瞬にしてダメになっちゃった。(下座に向って)今日は長いからね〜」とダメを出して、『宿屋の仇討ち』へ。この日の出演者はみんな、妙に弾けていたような印象がある。三太楼も妙にはしゃいだような高座になった。江戸っ子三人組のはじけ方ときたら、いつも以上。     


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