February,25,2007 落語がいっぱい

2月12日 『地獄八景 浮世百景』 (世田谷パブリックシアウター)

        いくつもの落語を元ネタにして、ひとつの芝居にしたという桂米朝監修の娯楽作。閻魔様の前に呼び出される亡者たち。閻魔は面白い話を聞かせてくれたら、地獄ではなく天国に行かせてやると言い出す。亡者たちは次々と話を始めるが面白くない。そこへ呼び出されたのが若旦那。若旦那は自分の身の上話を始める・・・・・。

        この若旦那『たちきり』の若旦那。当然、小糸を追って地獄へやってきたわけ。この『たちきり』に至るまでを、多くの落語で繋いでいく。さあて、どれだけ憶えているだろうか? 『たちきり』 『地獄八景』はもちろんとして、『算段の平兵衛』 『崇徳院』 『天狗裁き』 『胴乱幸助』 『宿屋の冨』 『三枚起請』 『千両みかん』・・・・、う〜ん、まだまだたくさんあった気もするのだが2週間もたってしまうと忘れてしまうもの。まっ、何も残らないで楽しんでもらえばいいと松尾貴史さんもおっしゃっていたような気がするし、いいか。

        ともあれ、たくさんの登場人物を10人程度の役者が、とっかえひっかえ演っていくのでめまぐるしい。2時間20分、やや観ていて疲れた。一応知っている落語をアレンジしているので、ところどころこちらも手を抜いてウトウト。しかしなあ、落語を視覚化することに、そんなに意味はないと思うのだけど。落語は落語で聴きたい私です。


February.24,2007 SF『死神』

2月11日 円朝座 第五次第一回 (お江戸日本橋亭)

        開口一番の前座さんは、春風亭一左『真田小僧』。頑張ってね。

        鈴々舎馬桜が、三遊亭円朝の、長〜い、長〜い噺『緑林門松竹(みどりのはやしかどにまつたけ)』に挑む第一回。全10回というから、今日のところは、まだまだ序盤。「この噺、面白いんですが、かなり矛盾が多い噺なんです。それで私なりにアレンジを加えてみました。また、もう現代では通じない言葉もあります。志ん朝師匠でさえ晩年、『船徳』で、『舫ってある』というべきところを『繋いである』と演っていました。そのへんを意識しながら演っていきたい」と前置きして始まったのは、第一章ともいうべき『新助市』。町医者秀英には身受けした柳橋の芸者おすわという妾がいる。この妾に産ませた子供が疳の虫で苦しんでいるとの知らせで、様子を見に行きたいのだが本妻の手前、躊躇している。飯炊きの新助を連れて家を出るが、この新助、途中の茶店で休みましょうと言い出す。そこで新助は自分の身の上話を始める。自分は信州の出で、女房が間男をしているところを見つける。ところが相手の男が居直り「お前のカカアと寝たのがなんで悪い」と逆襲にあい、女房を捨てて江戸に出てきたという。新助は秀英から、飲むと目、鼻、耳、口の七孔から血を流して死ぬという毒薬があり、秀英も自宅にそれを所持していることを聞きだす・・・・・医者がなんでそんな毒薬を持っているのか不思議なとこなんですが、百歩譲るとしても、そのことを飯炊き男に話したりするだろうかという矛盾があるのだが、そういう話になっているのだから、しょーがないか。新助は取って返して、この毒薬を秀英の薬棚から手に入れ、秀英の奥さんをこの毒で殺害。さらには同じ手口で秀英も殺害・・・・・って急な展開だなあ。この足でおすわのところへ向ったところで、本日の切れ場。大悪党新助。う〜ん、何か裏のありそうな展開。しかし、何で新助はふたりを殺したんだろう。まっ、それを知りたきゃ、また次もおいでってことなんでしょうなあ。

        三遊亭白鳥は、あの古典『死神』を大胆に改作。時代は現代ってことからして白鳥らしい。国家医師免許を剥奪された男が主人公だ。人には寿命があるものだと延命治療をよしとしない態度から免許を取り上げられたという。再就職先も決まらずに西武線に飛び込み自殺を図ろうとしたところ、[通りすがりの親切な死神]に助けられる。こうして死神を消す呪文を教えられるのだが、それが「ミーちゃんケイちゃん叶姉妹おっぱいムチムチ見ちゃいや〜ん」(笑)。実は、噺の序盤でこの医師の奥さんの子供時代のエピソードが出てくる。貧しい漁村の生まれで、海に潜っては岩に張り付いているタコを取っていたというのだ。この伏線があとになって効いてくる。もう助からない病人を助ける場面でも、そしてオチの部分でも、この伏線がうまく生かされている。ラストはもうSFでございます!(笑) 詳しくは書けないけれど、元の噺にはない[封印の岩]には驚きましたぜ。


February.18,2007 爆笑、ふたり芝居

2月10日 尾形イッセー、小松政夫ふたり芝居
       『百戦錬磨の人生ドラマ』 (シアター1010)

        どうやら、ざっとした台本はあるらしいのだが、アドリブをどんどん入れていく自由なふたり芝居らしい。尾形イッセーのひとり芝居は何回か観たし、桃井かおりとのふたり芝居も観たが、やはりこの小松政夫とのふたり芝居が一番面白かった。一応台本がありながら自由にアドリブを入れられる笑いのセンスは、小松政夫を置いていないだろう。

        熱海の旅館にやってきたふたりの老婦人。ふたりで部屋に寝そべって、取りとめの無い会話が続く。どこまでが決まっていて、どこからがアドリブなのかわからない、のんびりとした時間が過ぎていく。やがてふたりは窓から外を眺めるうちに、煙突を登って行く男の姿を発見する。自殺願望者ではないかと思ったふたりは、男に自殺を思いとどまるように説得を始める。

        絵本の訪問販売員。これまたふたりとも女装。この芝居だけ、もうひとり加えての3人芝居。ベテランのふたりの間に、まだ若くて新米の女の子がいる。尾形、小松がお手本を見せようと、飛び込みセールスをしてみせるが、どこへ行っても一冊も売れない。試しに新人の女の子にやらせてみると、なんと超ヘタクソなセールスなのに、どんどん売れる・・・・・。これもどこまでが台本なのか不明なのだが、女の子をイジって困らせる様子が可笑しい。

        典型的な医者と患者のコント。最初に尾形が医者、小松が患者。後半は尾形が患者で、小松が医者。医者が患者に病名を告げるというコントだ。医学用語の知識が少ないだろうふたりが、なんだか奇妙な病気を告げ、治療のための手術の方法を説明する。「腋の下を30センチくらいの切開して、鉄板を入れます。これを入れることによって胞子が発生し・・・・・」ってどんな手術だあ?(笑)

        夜の警備員。ふたりの老人が夜警をしている。ふたりともちょっとボケかけているらしく、トンチンカンな会話で、ほとんど成り立っていない。見回りをして帰って来たふたり、珍妙な武術のおさらい。さらには何を思ったのか、おさらいからの発想なのか、日本舞踊を踊ってみたり、腹話術をやってみたり。これがかなり可笑しい。

        なにかのオーデション風景。ふたりはゼッケンをつけて、質問者が質問をぶつけるたびにそれに返答する。どうやら、オーデションの答で、少しずつライバルが減っていっているらしい。最後は、このふたりだけが残る。これは漫才タレントのオーデションだったというオチ。ふたりはさっそく漫才を始める。ネタは小松政夫お得意の、飴とイカと新聞。でもこれは鶏肉弁当の方がよかったんじゃないかなあ(笑)。駅弁屋さんが売りに来るんだから。

        音楽ネタ。学生服を着たふたり。尾形がギターを弾いて小松が歌う。まずは『高校三年生』からだ。尾形と小松には、ふたりが憧れていた女性がいる。この女性を小松が二役で演る。東京に出てきた3人。女性は小松と付き合うことになるのだが、やがて小松の起こした会社が倒産。女性も去っていってしまうといったストーリーに合わせ、いろいろな歌を歌う。三橋美智也の『星屑の街』が良かったなあ。ときどきテンポを外す小松に、ちっょとあせりまくっている尾形が可笑しい。


February.12,2007 脳味噌一家対内臓一門の対決に支配者の構図を見た

2月10日 白鳥奇想天外祭り (横浜にぎわい座)

        開口一番は前座さんではなくて、白鳥と同期真打になった金原亭馬遊。貧乏時代のマクラから、ネタは以前にお互いの得意ネタを交換する会で演ったという白鳥の『アジアそば』。そばを食べている仕種の途中で、相手が「ラーメン大好き小池さんみた〜い」というギャグが入る。そういわれて見ると、馬遊って藤子不二雄のキャラクター小池さんによく似ている。「オレはなあ、『時そば』演って、それと同じことアンケートに書かれたんだあ!」


        ワハハ本舗からのユニット、3バカヘッズ。まずは全身タイツ姿で登場。赤タイツを着た人間の背中から、あとの黒タイツふたりが、いろいろなものを入れて形を作る、『全身し続ける妄想タイツ』。最初はエロチックなネタが続いて、ちょっと引いてしまったが、ゴジラ、ウルトラセブン、スパイダーマンときて笑った。次がゴム手袋を頭に着けて鼻から息を噴出して膨らませるという荒業『ゴム手袋音楽会』。なんだか電撃ネットワークっぽくない? 次の『ストロー流鏑馬』も、けっこう練習がいりそうだ。最後は『紙コップお祓い』。

        三遊亭白鳥の一席目は『新あたま山』。白鳥は古典を改作して演ることがあるが、これはもう元の『あたま山』なんてどこかにすっ飛んでいる。暴飲暴食をした男の内臓は疲れきっている。胃は酒を飲みながらツマミを食べたあと、シメのラーメンを入れられ消化するのに休まず働いている。果ては胃ガンになってしまう。「もう、やめた。依願(胃ガン)退職してやる!」 肝臓はアルコールをアセドアルデヒドに分解するのに忙しいし、脂肪肝にまでになっている。ここからの着想が凄い。こんなになってしまったのは、欲望のままに飲んだり食べたりさせた脳のせいだと内臓たちは革命を起こそうとする。かくて、脳味噌一家と内臓一門は、頭の上で対決する・・・・・。支配者である脳味噌と、労働者階級の内臓という図式が見事だ。これはもう、大傑作だと思うのだが、どうでしょう。

        仲入り後はだるま食堂。いつものソウルシスターズもの。『私たち勘違いされちゃうの歌』 『魂の歌』 『日本の歌』(替歌。『北の宿』の節で、♪アニータ変わりはないですか 旦那は冷や飯食べてます etc.) 『五十音マンボ(フルバージョン)』(ただしまだ、ま行が完成してない)。シメはこれ『サンバでクイズ』。

        三遊亭白鳥二席目『明日に向って開け!』。「この噺は三つのポイントがあります。一、新作落語だけど古典落語。二、仕種は江戸前。三、くだらないけど人情噺」。銀行に忍び込んだ大泥棒。この銀行の金庫番(という名の掃除係)を味方に付けて金庫を開けようとする。ところがこの金庫、なんと人格を持っているのである。しかも女性。防犯ベルが鳴り、警察が取り囲む・・・・。これ、本当に金庫番と女性の人格を持った金庫の人情噺なのだ! たしかにくだらないけど(笑)。

        奇想天外祭りとはよくいったもので、だるま食堂やら3バカヘッドのあとで落語ができるのは白鳥くらいのものだろうし、その落語ときたらまさに奇想天外。金庫と金庫番の人情噺なんて、他に誰が考えつくだろうか(笑)。


February.11,2007 惜しい、たった4日間の公演

2月4日 『メアリー・スチュワート』 (新国立劇場)

        宮本亜門演出のふたり芝居を思い出すが、こちらは別物。文化庁主催公演。文化庁芸術家在外研修(新進芸術家海外留学制度)の成果を発表する公演だ。メアリー・スチュアートとエリザベス1世以外にも多くの人物が登場するが、もちろん中心になるのは、このふたりの女王。メアリー・スチュワートに平栗あつみ。エリザベス1世に田島令子という配役だ。幽閉したメアリー・スチュワートを処刑すべきか開放すべきかで揺れるイングランドの動きを描く。約2時間30分、最初の方はさすがに馴染みのないイングランドの歴史劇なので、ところどころウトウトとしてしまった。ところが休憩後の第2幕になると、この芝居、俄然と面白くなった。開放を直訴するメアリー・スチュワート。そして狡猾な罠を仕掛けるエリザベス1世の動き。あれよあれよとラストに向っていく様は見ものだ。

        それにしても平栗あつみ、久しぶりで観たなあ。つかこうへいのところで演っていたのを観て以来。もともと声量が細いのを、声の質や顔の表情でカバーしていた印象があった。今回久しぶりに彼女を観て、以前よりも声量が強くなってきたように思う。そして、より美しくなられたようで・・・。一方の田島令子。こちらは文句なく声も出ているし、演技もダイナミック。

        これ、なんと4日間しか上演されないのだ。この4公演のために、あれだけの長台詞を憶えて稽古されたという役者さんたちに拍手。

        終演後、楽屋に小宮孝泰さんを訪ねて一緒に一杯。2幕目のメアリー・スチュワートが走り回るところは、イギリスでは本水の雨を降らせる演出をしているそうだ。ああ、それはいいアイデアだなあと思ったが、4日間の公演ではお金がかかりすぎで出来なかったとのこと。あの場面で、小宮さんはジャンプして足を叩くダンスをする。あれは小宮さんのアイデアだと言うので、「ああ、『雨に唄えば』から来たんですか?」と訊いてみたら、「それとは別」


February.10,2007 三ちゃん、おかえり

2月3日 第333回花形演芸会 (国立演芸場)

        それにしてもすごいラインナップだ。トリが柳家喬太郎で、爆笑問題が出て、柳家三太楼改め三遊亭遊雀が出る。これはチケットを取るのは難しいだろうと諦めて、最初から当日券の立見で行く覚悟を決めていた。なんといっても、久しぶりに観られる遊雀の『初天神』が私のお目当て。そんなところに、「自分も行きたいのでチケット発売当日に電話予約入れてみましょうか?」とおっしゃってくださる人が現れた。「すみません、お願いします」。翌日返事が帰って来た。「取れました」。ラッキー! 後日、やはりチケット発売日に電話をかけたという別の人と話していたら、「20分後に繋がったら、売り切れだった」とのこと。

        国立演芸場には早めの時間に着いたのだが、すでに当日立見券も売り切れていた。実際、通路はいっぱい。そこに入れない人はロビーのモニターで鑑賞という状態になっていた。いったいどういう客層なんだろう。一番恐れるのは爆笑問題ファン。こういう人たちは、お目当ての爆笑問題の出番が終わると帰ってしまうのだ。最後ので残って喬太郎の世界を体験して欲しいなあと思うのだが。

        開口一番は桂夏丸。「入門して前座生活5年。この4月には前座最古参になってしまいます。・・・こさん(小さん)・・・いい響きですねえ」 今年こそ二ツ目になってね。ネタは『秘伝書』

        鏡味正二郎の太神楽。ここは彼のホームグラウンド。国立劇場太神楽研修生出身だもん。でも、なぜか緊張しているような。いつもの安定した曲芸ではなく、ミスが多い。バチの取り分けでは、バチを落とすし、五階茶碗ではバランスを崩しそうになって、組み立て直す場面も。正二郎にしては珍しい光景だ。やっぱり、超満員の演芸好きの前で緊張があったのだろうか?

        いよいよ三遊亭遊雀の登場だ。大きな拍手が来る。やっぱり客層はかなりの演芸ファンで埋まっているようだ。三ちゃん(三太楼の三ちゃんじゃないよ、これからは三遊亭の三ちゃんだ)、少し痩せたようだ。三ちゃんの復帰高座。この日が来る事をいかに待ちわびただろうか。よかった、よかった。とにかくよかった。「某大臣の失言問題。『女性は子供を生む機械だ』なんて言ったようですが、ご自分は政治をする機械だとしたら、不良品なんでしょう。こうなると廃棄処分しかないのかもしれません。しかし、子供を作る機械ったって、その前に女性をその気にさせなければいけません『あなたの子供を作ってみようかしら』って思わせなければいけない」 こうして生まれてきた子供がとんでもない悪魔のような子供だっりして。天神様にお参りに行くと言う亭主に子供を連れて行っておあげという女房は、まさにこのあとの狂乱に引き渡す悪の使い(笑)。遊雀の金坊は、かなり策士であり役者だ。カワイイそぶりで父親に取り付いて天神様参りに連れてってもらいながら、「言うことを聞かないと、川に投げ込んじゃうぞ」という父親に「大丈夫、泳げるもん」と小バカにし、「河童ガリガリ頭から食われちゃうんだぞ」と言われれば、さらに父親をバカにしてみせる。参道では、やはり父親に連れられてきた仲間に手を振って挨拶する。屋台の食べ物屋を見る姿もいい。「あーっ、あんなところにペコちゃん人形があるぅ。あーっ、ミルキー!」 「どうして売っちゃいけないものを言うんだ!」 そしていよいよ団子屋の前へ。「買ってくれ」 「ダメだ」の応酬のあと、「ようし、いい子はここまでだ」と金坊は反撃に出る。「団子買え! 団子買えって言ってるんだぞ!」 そしてどんどん壊れていく金坊。私は、三ちゃんの『初天神』を聴くと、笑いが止まらなくなり、必ず涙が出てくる。

        爆笑問題は、いつものように時事問題を田中が振って、太田がちゃちゃを入れる構成。イナバウアー、品格、エアギター、松坂大輔、ゲーム機・・・・・。「エアギターというのが話題ですね。ギターを持ってないのに弾くふりをする」 「透明人間がエアギターをしたりして」 「それだとなんにも見えないだろ。今にエアキーボードとか、エアドラムなんていうのも出てくるんじゃないですかね」 「エアロスミスというのが出てきた」 「それは実在するロック・バンドだろ!」 爆笑問題が終わると出て行く人がいるんじゃないかと思っていたら・・・・・誰も帰らないのだ。そういう客層じゃないのだ。よかったなあ。

        三遊亭円馬『試し酒』。黒紋付の羽織を最後まで脱ぐことなく演じる。久造さんは、さながら酒を飲む機械(笑)。2月3日は節分。寄席はどこでも豆まきをやるのが恒例。ここまでの出演者(なぜか芸協ばかり)が全員出てきて、豆や手拭いを撒く。太田が「この豆、不二家のじゃないだろうな」と毒を撒く(笑)。

        仲入り後は、林家二楽の紙切りから。鋏試しの桃太郎から、「ペコちゃん」。ペコちゃんが涙を流している図。「桜島」。桜島と桜島大根を掘り出している女性の図。二楽劇場は、またお嫁さんを切り出したから、先月にぎわい座で観たものと同じかと思ったら、まったく別のストーリー。『「ありがとう」いったことありますか?』。

        柳家紫文は、もうひとり、女性の三味線と現れ、『鶴八鶴次郎』。大詰め『居酒屋の場』。おやおや、いつもの長谷川平蔵とは趣きが違う・・・と思いきや、ストーンとサゲたところは、おんなじ、おんなじ。あの一言が言いたくて長い台詞を言ったとは(笑)! そのあとは大岡越前二本。

        トリは柳家喬太郎『ハワイの雪』。これを聴くのはもう6年ぶりだろうか。昔好きだったチエコさんに会いたくて、ハワイ行きを決意する留吉じいさん。昔からのライバル清吉じいさんとの腕相撲対決。そしてハワイでの再会。この噺にはなぜかオチになる台詞が無い。お互いの手を握り合い、静かに静かに話す、ふたりの老人。喬太郎というと、現代的若い男女が登場する噺が多いが、こういうものも出来るんだ。

        最後まで誰ひとりとして席を立つことなく、終演時間も20分オーバー。大満足の花形だった。チケット、手に入らなかったみなさん、ごめんなさい。それにしても豪華だったよなあ。花形も333回。三ちゃん、お帰りなさ〜い。 


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