June.29,2007 静かに語られる父と子のわだかまりと開放

6月17日 グリング
       『ヒトガタ』 (THEATER/TOPS)

        初めて観る劇団。評判がいいので、直前になってチケットを取った。最後列だったが、それでも当日券で通路までいっぱい。4年前の作品の再演。

        ひな人形の頭職人(志の輔の『メルシーひな祭り』にも登場しましたね)の妻が亡くなる。その通夜に、息子夫婦、従弟たち、隣の住人とその息子、ひな人形の卸問屋、職人がカルチャー・センターで教えている生徒らが集ってくる。

        ひとつの部屋を登場人物が入れ替わり出たり入ったりで、最初のうちは話が見えて来なくて、これは何なんだろうと思って観ていた。やがて話がまとまってくる。最後はやはり人の生と死、親と子の問題だ。ちょっと登場人物が多く、前半が散漫に感じられたのだが、観終わってみると、その部分が面白かったり印象に残ったりする。面倒見のいい隣の主婦と何だかフワフワ生きているようなその息子。カルチャー・スクールの美人女子生徒を巡って、彼女にアタックする卸問屋の若主人。そして実は、この女子生徒と父親が出来ているのではないかと疑う息子。そこから話が一気に、以前に弟が自殺した件は父親のせいではないのかと思っている息子が、父とのやり取りの中から開放され、奥さんの腹の中にいる子供を育てる自信をつけていくクライマックス。

        登場人物たちは、ポツドールのように感情にかられて過激な行動に出ることもない。静かに、静かに感情を見せ、そして理解し合っていく。派手な手法はないが、観終わって静かに心に染み入ってきた。


June.24,2007 高座で逆立ち

6月16日 鈴本演芸場6月中席夜の部

        開口一番、柳家緑君『狸の札』。なんと高校中退で花緑に入門した17歳だという。せめて高校は卒業してからとされる落語界に珍しい存在。頑張ってね。

        「私、前座さんに対しても、さんとか君づけで呼ぶんですが、緑君に関してはろっくんさん、ろっくんくんとは言い難くて、普通にろっくんって呼んでます」と三遊亭ぬう生。円丈師匠のお弟子さんで二ツ目。どんな新作を聴かせてるくれるのかなあと思っていたら、古典の『熊の皮』。

        翁家和楽、小楽の和楽社中。この日は小花ちゃんが一緒。和助だと厳しいふたりが、小花ちゃんだとどこか優しげ。

        入船亭扇好『真田小僧』

        「体育会系の人というのは、まっすぐ一直線ですから」と新幹線自由席のマクラから、林家彦いち『熱血怪談部』。体育会系の担任の先生。「早口言葉言ってみろ! 青コムスン赤コムスン黄コムスン、青グッドウィル赤グッドウィル黄グッドウィル」 違う意味でも言い辛い。

        三増紋之助の曲独楽。当初は騒がしい曲独楽だと思っていたが、この人すっかり話芸でもお客さんを引き付けられる人になったもんなあ。

        五街道雲助『浮世床』の将棋の部分だけみっちりと。

        「携帯電話って、最近はいろいろな機能付きのが出ているでしょ。私はシェーバー付きのが出てくれるとありがたいなあ」って林家しん平。これはグッドアイデア。どこかのメーカーさん、作ってよ。あったら私も即機種変更するのに。ネタは桃太郎侍まで登場する水戸黄門漫遊記。

        ホームランの漫才。この人達も芸歴長い。歌謡曲ネタ。『小指の思い出』の替歌「♪あなたが咬んだ 小指が小指が無いわ」は面白いけど、島倉千代子の『恋してるんだもん』の替歌は、なぎら健壱のネタなんじゃないの?

        柳亭市馬『高砂や』。仲人を頼まれた八五郎と隠居の会話だけで進む噺。前座噺でもあるのだが市馬にかかると妙に軽やかで楽しい噺になる。「余興で歌を歌うとしたら、『お富さん』とか・・・」 「そういうゲビた話を。なんでか最近、白鳥や喬太郎に似てきた」 「何のことだい?」 「いや、こっちのこと」

        花島世津子のマジック。新聞を細かく切っていき、そこから元に戻すトリック。「一枚が二枚、二枚が三枚、三枚が四枚・・・何か変ですか? 硬い新聞ねえ・・・ああ日経新聞ね」 破き終わった新聞を再生すると、あらあらなんとスポニチ。

        トリの三遊亭白鳥は、定席でかけるのは初めてだという『サーカス小象』。タイのチェンマイから日本に出稼ぎに行くと言って行方がわからなくなった母象を捜して日本にやってきた小象のマルコ。象太郎という名前で、三大サーカスのひとつ中村大サーカスで玉乗りをしている。どうやら母象は薬局の前で佐藤製薬のサトちゃんの代わりに薬局の前で座っているアルバイトを(母をたずねて)三千里薬品の店頭でやっていたらしいのだが、そのあとの消息がない・・・。さあて、この先、古典落語の『大工調べ』を盛り込み、『中村仲蔵』を盛り込むという落語好きにはたまらない噺になっている。クライマックスは『あしたのジョー』まで飛び出し、なんと座布団の上で逆立ち! 「鈴本の高座で逆立ちをやったのは初めてでしょう。社長、ごめんなさい!」と、本当に逆立ちやっちゃったよ。もう、怖いもの無いね、この人。



June.16,2007 これが新しい東京喜劇なのかもしれない

6月9日 ハラホロシャングリラ
      『われもの注意』 (紀伊國屋サザンシアター)

        『びーめん生活スペシャル』を途中で抜け出して三軒茶屋から新宿へ。あとから考えたら、最後の1本を観てからでも間に合ったようだが、慌てて移動もよくないから、まっ、しょーがないか。マチネの開演時刻が『びーめん生活スペシャル』3時で、ソワレの開演時刻が『われもの注意』6時というのが、マチネは遅く、ソワレは早いというのが今回の誤算。

        10年ぐらい前の再演とのこと。離婚を決意した夫婦が、それぞれの新居に別れ別れに引っ越していく日の話。引越し業者を使うわけでもなく、親族や友人を手伝いに呼んで引越し作業を始めるのだが、友人たちには実は離婚するとは言えないでいる。そこに隣に住む夫婦やら、次にこの部屋を使う中国人夫婦が乗り込んできたりで、ドタバタ喜劇に発展していく。

        メインになっている笑いは、いわゆる勘違いネタ。喜劇の黄金のパターンだが、よく作りこまれている。さすがに再演をするだけあるいい脚本だ。妻の妹が独身なのに妊娠しているという設定で、その相手が妻の夫だと話の切れ端だけ聞いた人物が勘違いして他の人に広めてしまいトンチンカンな話に展開していく。普通の芝居だと、この勘違いが収まった時点でハッピーエンドに向うのが定石なのだろうが、作・演出の中野杜俊成のギリギリの思いか、ほろ苦いラストが待っている。この匙加減がいいんだよなあ。ハッピーエンドにしてしまうと、普通の大衆喜劇になってしまうところを踏みとどまっている。中野俊成は富山出身とのことだが、実は、こういう喜劇こそが東京喜劇なんではないかと思う。江戸っ子は義理人情なんていうが、そうではなく実のところはシャイで、自分の気持ちをなかなか打ち明けられないものなんだと思うんですよ。そういう意味では、熱海五郎一座よりも、私は脚本もしっかりしていて、アドリブのようなもので笑わせるわけでもなく、無理矢理なハッピーエンドに持ち込むわけでもないハラホロシャングリラの方を新しい東京喜劇だと思うのだが、いかがだろうか。


June.10,2007 絶妙のコンビ再び

6月9日 小松政夫とイッセー尾形
      『びーめん生活スペシャル』 (世田谷パプリックシアター)

        2月に観た『百戦錬磨の人生ドラマ』に続く小松政夫とイッセー尾形のふたり芝居。このふたり、とにかく馬が会うらしい。イッセー尾形のシュールな芝居についていけるのは小松政夫くらいしかいないだろうし、またイッセー尾形も小松政夫のよさをうまく引き出している。今回も20分程度の芝居を6本。

        55歳の現役ボクサー(尾形)が、試合前に闘いたくないと言い出す。はしかにかかったとか適当な理由をつけるが、それをなだめすかして試合をさせようとするマネージャー(小松)。なぜかこの人物、マネージャーでもあるのに、この試合のレフリーも勤めている。

        初めてカジノ(どうやらラスベガス)へやってきた老夫妻。妻(尾形)は全財産の100万円を賭けようと貯金を下ろしている。ブロークンな英語しか知らない夫が、「賭ける」を手でバッテンを作って「(算数の)かける」と言うのがたまらなく可笑しい。はたしてルーレットで大儲けできるか。

        ロシア演劇を上演し続ける劇団の座長(尾形)と看板女優(小松)。それに新人女優。これはイッセー尾形のひとり芝居で観た事があるが、小松が加わるとまた別のものになった。ロシア演劇だというのに小松が日本風に演ってみたいと、歌舞伎の女形風演技をしてみせるところが、バカに可笑しい。「ポンポンダリアを、召しませ〜」を何回も言わされる小松、ばつぐん!

        船長(小松)と甲板長(尾形)。甲板長が船長に昔の武勇伝を聞かせてくれと言い出す。ベーリング海峡で起こった事件だの、ガラパゴス諸島で遭遇した恐竜と闘牛士の話など、アドリブではないのだろうが、無茶な話を無理矢理作らされる。

        夜の警備員。これは2月の『百戦練磨の人生ドラマ』で演っていたネタ。

        このあともう1本の芝居を残して劇場を出た。次の予定が迫っていたからだが、あとからインターネットで調べたら6本目も『百戦錬磨の人生ドラマ』で演っていた音楽ネタだったようだ。


June.9,2007 長〜い乗りツッコミ

6月3日 シベリア少女鉄道
      『永遠かもしれない』 (シアターグリーン Big Tree Theater)

        お笑い芸人のコンテスト会場。まだ客入れもしていない舞台で物思いにふけっている男(前畑陽平)。彼は交通事故で漫才の相方を亡くし、この舞台に再起をかけている。劇場の係にお客さんと間違えられたり、ファンから終演後に話がしたいと持ち掛けられたりするうちに、死んだ相方や、自分の姉の幽霊が現れ、男を励ます。この導入部だけで20分くらいあったろうか。かなり静かな舞台で、人物関係を追いかけるだけでやっと。暗い舞台で淡々と進むので眠気が襲ってくる。

        が! いよいよ新しい相方にボケ役の女性(篠塚茜)を迎えてのステージが始まると、この静かな芝居は一転してしまう。

        う〜ん、何ていうだろう。漫才に[乗りツッコミ]というのがあるでしょ。ツッコミが軽く突っ込むのではなくて、ボケ役よりもさらにテンションが上がって突っ込むツッコミ。あれを2時間やり続けたらどうなるのかというアイデアなんですね、この芝居。軽くボケてみせた相方に対して男は乗りまくり、なぜか舞台には幽霊たちや、死んでいない劇場の係員までが登場して西洋のお伽噺の世界が広がってしまう。「なっ、何、これ」とびっくりする相方。ようやく乗りツッコミが終わり現実に返ったかと思いきや、次のボケをかますと今度は青春野球ドラマが始まってしまう。しかもただボーっと見ていると自分も役のひとりに振り分けられ、何もかまないでいると死んだことにされてしまう。こうなると、いつこの乗りツッコミが終わるのかわからなくなる。相方の「永遠かもしれない」という台詞で、この芝居が何をしようとしているのかがわかってくる。

        ようやく、長〜い乗りツッコミから開放された相方。次に始まってしまった忠臣蔵は松の廊下の刃傷がまだ終わったばかりのところ。これは何とか早く討ち入りに持っていかないと、永遠に終わらないと自分に振り分けられた大石力役を使い、なんとか討ち入りに向わせようとするのだが、なかなか持っていけない。そうこうするうちに、2007年の未来からタイムマシンに乗って現れてしまう男があり、乗りツッコミは突然にSFへ飛ぶ。2007年のタイムトラベルの研究所で何とか江戸時代に飛んだ男を呼び戻さないと乗りツッコミが終わらないと苦心するうちに、なぜか今度は3人組の女盗賊の話にすれ変わっている(キャッツアイね)。その後も、村祭から白雪姫、海猿などにどんどん変化し続けて行ってしまう。そこに小ネタともいった感じの脳トレパズルやら、日本語講座「ただいま」などか散りばめられ、もう収拾不可能になっていく。

        最初は何だったっけと思うくらい長い爆笑の狂乱状態が続いていく。終演後に会って話をしたいと言っていたファンは飛行機の時間が来てしまって劇場を去ってしまうし、いったいどうなってしまうんだろうと思ったところで、突然に忠臣蔵に戻ってくる。しかもシベリア少女鉄道お得意の爆笑の仕掛けもちゃーんと用意されている。

        シベリア少女鉄道の芝居って、最後のバカバカしくもある仕掛けを観たいがために長い前振りを我慢して観るという芝居が多かったのだが、これは凄い。これなら他人を自信を持って誘える。観た日がなんと千秋楽。もう一度観たかった。再演してくれないかなあ。


June.8,2007 大物? 地震に気がつかない白鳥

6月2日 鈴本演芸場六月上席昼の部

        健康診断の検査があるので前日の夜8時から食事をしていなかった。近くの病院で検査を終えて、まずは何か食べ物を口に入れなきゃ。時計の針はまだ11時前。昼飯を食べさせてくれるお店はまだ開店していない。何でもいいから何か食べさせてくれる店はないものかと歩いていたら、牛丼の吉野家が営業している。牛丼かあるそういえば牛丼の販売を再開したんだっけ。吉野家の牛丼食べるなんて随分と久しぶりだ。店に入ると制服を着た大きな身体の男性が立っていた。そうだ、そういえば吉野家はお勘定は後払いだったんだっけ。食い逃げ事件があって警戒するようになったのかな。この手の店で券売機制でないのは今や吉野家くらいではないの? 並盛りを注文したらすぐに出てきた。食べ初めたら隣に座った男性が、牛丼とお酒を注文した。一合入りの冷酒である。これが旨そうなのである。こちらは、健康診断のために昨夜は禁酒。猛烈にお酒が飲みたくなってしまった。落語を聴きに行く前はアルコールは飲まないという禁をあっさり破って、「すみませーん、私にも冷たいお酒くださ〜い」

        開口一番の前座さんは柳家生ねん『桃太郎』。頑張ってね。

        「本日最後に出てまいります古今亭志ん五の三番目の弟子。五に三番目の三を足して、古今亭志ん八です」と志ん八『たらちね』。このへんで、先ほど飲んでしまった冷たいお酒の影響らしくて睡魔が襲ってくる。いけねえ〜!

        津軽三味線の太田家元九郎もいつもの国際旅行博覧会。ウトウトして聴いててもいつもと同じ。「青森じゃ、自分のことを『わ』、相手のことを『な』。それだけ。青森から出てきたふたりが東京で会社を作って大成功した。ワーナー・パイオニア(ウソウソと手を煽ぐ)」

        「神宮球場では早慶戦が行われておりまして、なんでもきのうの朝から並んでいるとか。そこへいきますと鈴本演芸場、すぐ入れますから」と客席を暖めて桃月庵白酒『ざるや』へ。ハンカチ王子人気の早慶戦。でも白酒も汗っかき。もっとも、白酒の手拭いで汗を拭く姿は誰も注目しない・・・って、当たり前か。

        桂文楽は手馴れた『替り目』。う〜ん、聴きなれた口調に酔っ払った頭は眠い眠い。

        すず風にゃん子金魚の漫才は、踊る回転寿司。金魚ちゃんが玄冶店をもじって、「おシンコさんへ、お稲荷さんへ、やさお釜久しブリだなあ」とやりだすと、客席から「金魚ちゃん可愛い〜」との声が。はにかんでみせて、すぐに気取り直して足を開いて、また玄冶店。「足を開くのやめなさい」と言うにゃん子に、「私は舞台の上で足を開く。にゃん子ちゃんは男の前で足を開く」 このコンビ、けっこう際どいことを言っても、まるでいやらしくないから不思議。

        古今亭八朝は『金明竹』と思ってウトウト聴いていたらの導入部分『骨皮』だけで終わってしまった。

        三遊亭金馬『天失気』。本当は知らない事を知らないといいそびれてしまう噺。こういうのって実生活にあるんだよね。気をつけよう。知ったかぶりはやめようって、この噺を聴くたびに思うんだけど、ついついまたやってしまうのだ。

        キセル漫談のひびきわたる。この人、物真似もできるし漫談もうまいし、歌も歌える。器用な芸人さん。キセルを使っていろいろな音を出すのがこのところの売り。赤ちゃんの鳴き声、ニワトリ、オットセイ、カエル、馬などをやりがら、ときおり『鶴の恩返し』の漫談を入れる。ラストはキセルで『八木節』を吹いてみせる。「このところ、電車に乗りにくくて、駅員さんの顔もまともに見られない。キセルで商売しているから」

        中トリが三遊亭白鳥。故郷のおかあさんが、こんなギャグはどうだと年中電話してくるというマクラを話しているところで座席に揺れを感じた。後の席の人が貧乏ゆすりをしているのだろうと思ったのだが、客席全体がザワザワしている。地震なのだ。客席の動揺にはおかまいなしでマクラを喋り続ける白鳥。そして何事もなかったように『マキシム・ド・呑兵衛』へ。地震にも客席にも無頓着な白鳥、さすがに大物だけあって自分の世界に入っていると思ったら、のちにご本人のホームページによると、地震には気がつかなかったとのこと。[鈍感]なだけだそうで(笑)

        クイツキは松旭斎美智のマジック。ポーチから鍵を取り出すマジックから、その三つの鍵を使って錠前を開けるマジック。お客さんを煙に巻いて引っ込んでいく。

        「披露宴でのクイズ大会。レモンを入れた紅茶はレモンティ。ミルクを入れた紅茶はミルクティ。さて、パンを入れた紅茶を何というでしょう・・・っていう問題が出た。これには誰も恥ずかしがって答えられない。するとおじいさんが手を上げた。司会者がおじいさんに答えを求めると、おじいさん『ズロース』」 入船亭扇好のネタは『権助魚』

        翁家和楽社中の太神楽。おっ、和助くんだ。最近出番に当らなかったけど、鞠の曲芸、上手くなったなあ。

        トリは古今亭志ん五で『妾馬』。がらっぱちの八五郎、鷹揚な殿様、慌てふためく三太夫の三者三様の描き方が面白いハーモニーになっている。妹のおつるとのやり取りも可笑しいながらにも、ついホロリと。今はなき志ん五の師匠である志ん朝の感じも感じ取れ、それを志ん五流のダイナミズムに変えている。いい落語を聴いたという満足感で鈴本を出る。

        どうやら、白鳥の高座での地震あたりから酔いが醒めたよう。さて、帰りにもう一杯やっていこうか。健康診断の結果が気になるところではありますが・・・・・。


June.2,2007 どれがアドリブで、どれが台本通りなのか?

5月27日 熱海五郎一座
       『狼少女伝説TOH!!』 (天王洲 銀河劇場)

        東京の軽演劇を残していきたいという目的で、伊東四朗が出られないときは熱海五郎一座として続けられている公演。去年の『静かなるドンチャン騒ぎ』の出来がいまひとつ不満だったので、今年はパスしようかと思っていたのだ。WOWOWでも中継するしね。それでもラサール石井も出るし、やっぱりナマで観ておこうかなあという気分になっていたところ、追加公演が出た。チケット取れなかったら取れないで、それでもいいやと思っていたら、ぴあで苦もなく取れてしまった。

        お話は視聴率競争をするテレビ局。相手の局を出し抜くいい企画はないかと策を練っているときにジャングルで狼に育てられた狼少年ならぬ狼少女が見つかる。テレビ各局はこの少女をテレビに出して視聴率を取ろうとする・・・。最初のうちは、ただテレビに出すだけで評判になったものの、そのうちに飽きられてくる。テレビの業界人は、この少女に言葉を教えようとしだす。最後には歌や踊りまで教えてアイドルとして売り出すのだが・・・・・。

        2時間、笑いで引っ張っていくのはさすがだが、前回も感じたのだが脚本がいささか弱いような気がする。これが東京の軽演劇だと言われると、こんなんでいいのかもなあとも思う。それと伊東四朗のいない穴がやっぱり埋められていない。なんだか核となるものがなくて、テンデンバラバラの印象を受けてしまう。

        芝居というよりも、出演者それぞれのキャラがそのまま舞台の上にいるようで、役になりきっていない。それが軽演劇なの? 三宅祐司は三宅祐司だし、渡辺正行は渡辺正行。楽屋落ちが多いので、ますます素になってしまう。春風亭昇太は、落語を演っても昇太そのもののキャラだから、芝居でも昇太その人しか舞台にいない。喬太郎の毒蛇の小噺を演って滑っていました。

        いよいよWOWOWでの放送があるが、どこまでがアドリブで、どこからが台本通りなのか確かめてみよう。あっ、そういう楽しみもあるんだ、ナマで観ておくと。


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