February.24,2008 感情の高ぶり

2月17日 『悠々ゆうじゃく 其の三』 (内幸町ホール)

        三遊亭遊雀の独演会。まずはマグナム小林のバイオリン漫談から。バイオリンでいろいろな音を出していく。救急車から始まって、コンビニの入口のチャイム、新幹線こだま、ひかり、のぞみ、F1カー、リニアモーターカー、打ち上げ花火、蚊、蝿、ガラスを爪で引掻く音、北国の春を歌う音痴な人、リンゴの歌の古いレコード、朝鮮中央放送のアナウンサー、赤ん坊の泣き声、双子の赤ん坊の泣き声、三つ子の赤ん坊の泣き声、アイネ・クライネ・ナホトムジーク(中抜き)、のんき節、東京節、タップを踏みながらの『Take Me Out To The Ballgame』『天然の美』『東京音頭』『暴れん坊将軍のテーマ』など。ほんわかして楽しい開口一番。

        東京マラソン、栃木で演った『初天神』でのミスなどで笑いをとって三遊亭遊雀は、楽屋の小言の話題に。「楽屋は一日中小言ばかり。志ん朝師匠がいるところに当時新潟といっていた前座の白鳥がコートを着たままでいたんで注意したんです。ところがコートを脱いだら、その下はTシャツ一枚。『寒くないのか?』と言ったら、その口が前歯がひとつ抜けている。『歯を入れろ!』 そこから『小言幸兵衛』へ。前半で赤ん坊や猫にまで小言を言う仕種が決まって、大家さんの感情の高ぶりが見所。

        ゲストは桂南なん。「ふぐ刺しなんてこの季節いいですね。相撲取りなんて、皿に盛られたふぐ刺しを箸でいっぺんに取ってワーっと一口。それでご祝儀貰えるんですが、私なんてせいぜい一回に2枚くらい。どうです、私今晩暇なんですが」と『ふぐ鍋』へ。ふぐは食べたし中毒は怖しって噺。こう寒いとふぐ鍋食べたくなるなあ。そういえばここ何年もふぐ食べてないぞ。

        鉄ちゃんとして知られる三遊亭遊雀だが、乗り物は何でも好きらしい。飛行機の本まで出したくらいだ。「地方の仕事貰ったりするとうれしいんです。旅って好きなんです。それも私にとっては乗り物。移動が95%・・・落語はね申し訳ないけど5%」そこから旅の楽しみ指南飛行機篇が始まる。羽田空港で飛行機に乗る心得の詳細が面白いのなんの。どうやら録音を録ってたらしいのだが、この部分カットされるかどうか。それでも右側の窓際の座席に座れという知識が『ねずみ』に効いてくる。ねずみやの息子が「右側をみていってください」と宿の説明をするところで、マクラの飛行機の話と被る。途中でハメもののお囃子も入っての『ねずみ』。

        遊雀の見せ場は何といっても、キャラクターの感情の高ぶりなのではないだろうか。喜怒哀楽が顔に出るところが楽しいのだ。その点、この日の幸兵衛の怒りや、ねずみやの亭主の表情の変化は楽しかった。これでお得意の[泣き]が入るともっと面白いんだけどなあ。


February.23,2008 高速回転、コマ劇場

2月16日 『星屑の町 新宿歌舞伎町篇』 (新宿コマ劇場)

        錦マニから新宿へ移動。錦マニ終了時間が4時。新宿コマの夜の部開演は4時。どう考えたって間に合わないので、前の週にB席で観ておいた。今回はS席。しかもなんと最前列。芝居が始まってしまっている最中に通路を歩いて一番前の席に。こういうのイヤなんだけど、しょーがない。

        舞台はハローナイツの面々が新宿の旅館に宿泊したところから。オープニングの歌謡ショーが観られなかったのが残念だけど、しょーがない。二回目の鑑賞ともなるとストーリーはわかっているので個々の役者さんの演技に目が行く。面白いなあと思ったのが、旅館の支配人(前川清)と新ボーカル赤羽ミミ(高橋由美子)の過去と現在の微妙な関係。ホスト・クラブのホスト吉田(江端英久)とその後輩尾形(柏進)がどうやら不仲らしいという演技。

        幕切れでコマの舞台が高速回転すると、ハローナイツが歌うクラブ、旅館、歌舞伎町の一角が回っては消えていく。そんな中であのふたりのホストがどうやら仲直りしているらしいところが観られたり、金を持ち逃げしたプロモーター(渡部雄作)がセットとセットの間を狭い路地に見立てて電話をしている様子が、『涙』をバックにして現れては消えていく演出が光っていた。

        最前列で観ると役者さんのひとりひとりの演技がはっきり見えて面白い。それとやっぱり芝居は二回以上観ると細かい部分が目に入ってきて面白いなあ。


February.17,2008 錦マニ大団円

2月16日 錦マニ KINNØSUKE LAST GIGS (なかの芸能小劇場)

        この春、六代目古今亭今輔を襲名して真打になる古今亭錦之輔、最後の独演会。受付ではT−シャツの販売もあり、昇進に向けてお祭ムード。

        開口一番前座さんは瀧川鯉八『新聞記事』。頑張ってね。

        毎回二席ずつこの会で新作ネタおろしをしてきた古今亭錦之輔は、この最後の独演会はネタおろし無し。別の場所で以前に演った二席を持ってきた。「錦マニ、19回目ですよ。過去18回に二席ずつネタおろしをしてますから、36席作ったことになる。そのどれひとつとして寄席でかけられるネタがない」とあっけらかんと語る錦之輔。一席目は『オオカミ少年』。これは去年のプーク正月興行で聴いたネタだ。宿題を忘れた言い訳をする生徒と先生の噺。生徒の名前がチョウズカベくんって、漢字で書くとどうなるんだ?

        ゲストは錦之輔にとって、もうひとりの師匠でもある三遊亭円丈。今輔になる錦之輔に「先代は、おばあさんもので一世を風靡した人。今度の今輔にも是非おばあさんものの落語を演ってもらいたいですね」とエールを送ってから、柳家小ゑん作の『ぐつぐつ』へ。小ゑんの代表作ともいえる噺だが、円丈流に改作がなされていた。オチも違っている。円丈版のオチを聴くと、今になってみると小ゑん版はいかにもストレートなオチだったなあということ。円丈はもうひとつ先へ進めたという感じかな。

        仲入りを挟んで古今亭錦之輔の二席目は『国士無双』。長い間、錦之輔にこんな名前の噺があるということは知っていたのだが聴くのは初めて。最初は麻雀落語だとばかり思っていた。小説好きの錦之輔のことだから、きっと阿佐田哲也ばりのトリッキーな麻雀落語だと勘違いしていた。国士無双とは、国の中で最も優れていて並ぶ者がないといった人物のことを言う。こちらの主人公は宮城谷くんで、これは中国の歴史小説をたくさん書いている宮城谷昌光から貰ったのかな? しかしもこちらの宮城谷くんはどうもダメ人間。そんな彼が兵法の先生から不思議なコンタクトレンズを渡される。このコンタクトレンズをしていると、相手の能力、性格、経歴、弱点などのデーターがたちどころにわかってしまうという優れもの。これを使って宮城谷くんは、相手の弱点を読んで世渡りをしていくのだが・・・といった噺。錦之輔曰く、自分の作った噺の中では珍しくハッピーエンドになる噺とのこと。

        これでめでたく錦之輔時代独演会は終了。いよいよ春から六代目古今亭今輔時代が始まる。


February.16,2008 しょーがないなあー

2月11日 鈴本演芸場2月中席夜の部

        休日の夜ぽかっと時間が空いてしまって、映画のロードショウを観に行くにはもう最終回が始まってしまっているし、かといってこのまま家に帰るのも気が向かない。しょーがないなあー。時刻は午後7時。定席の夜の部はそろそろ仲入りに入る頃。鈴本に行ってみるかと、出演者も確かめずに上野へ向う。鈴本の前に立つと、おお夜の主任は柳亭市馬ではないか。割引料金2000円で入場。高座には中トリで柳家権太楼が上がっていて『人形買い』の真っ最中。仲入りまで待つことにして最後列で立見することにする。安い買物をしたと喜んでいる長屋の二人に、買った人形の秘密やら店の内情をペラペラと喋る様子にケタケタ笑っているうちに、お仲入り。

        お客さんたちが席を立ったスキをみて、中ほどの席に着く。さてと松坂屋の地下食品売り場で買ってきたおにぎりを取り出して食べ始めたらもう開演だ。食いつきは鏡味仙三郎社中。この日は仙三郎仙三仙花の出演。仙花の傘回し、仙三の五階茶碗に続いて仙三郎の土瓶の曲芸。一見地味だがやっぱりこの土瓶が一番難しいのだろう。咥えた扇子の上に土瓶を乗せる曲芸にハラハラ。それでもどこか「この曲芸をやるたびに胸がドビンドビンします」という仙三郎になぜか余裕を感じてしまう。

        古今亭駿菊『湯屋番』。先日出版されたムックに駿菊のCDがオマケに付いていて、それが『宗民の滝』とこの『湯屋番』。十八番なのかな? トントンと気持ちよく、若旦那の妄想世界。

        膝は柳家小菊の粋曲。まずは『梅は咲いたか』が耳をくすぐる。♪柳橋から小船を急がせ 船はゆらゆら波次第 船から上がって土手八丁 吉原へご案内 なんだけど、♪鈴本へご案内〜!ときた。それから『ぎっちょんちょん』に『とっちりとん』。日本語って楽しい。

        先代の(彦六の)正蔵の事をネタにする噺家さんは多いが、このところ同じ話ばかり聞かされるなあと思っていたら、柳亭市馬が前座時代に体験した正蔵エピソードを話してくれた。「正蔵師匠が寄席でトリをお取りになさるときは、気がせくんでしょうか、午後9時近くの上がりだというのに、4時ごろから楽屋にいらっしゃるんですね。一席うかがってお辞儀をしたときの手の角度で踊るか踊らないかを知らせるんですよ。先輩が見ていて、『きょうは踊るぞ』って言ぅん。そのころはもう師匠も足腰が弱ってらっしゃいまして、一番下っ端の私が出て行って立つのを手伝うわけです。手をお貸しして師匠を立たせますと『ありがとうよ、立たせてくれて立っちまえばこっちのもんだ』なんておっしゃるんですが、フラフラとして危なっかしい。そのまま手をとっていると、『いつまで手を握ってるんだバカヤロー! おまえとこうして手を握り合っていると、妙な気持になるじゃないか!』 これ、客席は爆笑ものだったろうなあ。ネタは『二番煎じ』。♪火の用心、さっしゃりましょ〜と、いい声で張り上げるところなど、市馬は本当に楽しそうだ。一の組が番屋に帰ってきて、火に当るところで羽織を脱ぐ。これもいい演出。火が何よりのご馳走とはいうけれど、やっぱり飲兵衛はこういうときは、燗のついた酒。「さっきまで昨日の焼酎が腹ん中でトグロ回してたんですがね、それがいい酒が入ってきた途端、焼酎の奴が、『へへーっ』てね」 ここでもいい心持ちになったひとりが歌を歌いだすのだが、市馬ったら、ほんとうに気持よさそうなんだから(笑)。♪さんさしぐれか萱野の雨か 音もせできて来て濡れかかる〜ショウガイナ しょーがないなあー! 調子に乗った連中。「明日またやりましょう。私も一升持ってきましょう」 「私は肉を。あなたは?」 「箸」 そうそう箸も人数分忘れずに・・・って、しょーがないなあー! そうそう、猪鍋には生姜も忘れずに。生姜ないなあー!


February.11,2008 ハローナイツ、ついに大出世!

2月10日 『星屑の町 新宿歌舞伎町篇』 (新宿コマ劇場)

        翌週に観に行く予定で以前からチケットを取っていたのだが、その日は別の予定がもうひとつ入ってしまい、コマに行けるのが開演30分ほど過ぎてからのことになりそうなのが判明してしまった。どうしても最初の部分が気になるので、急遽当日券を買って入場。翌週は前の方の席で観るから、今回は安い席でいいやとB席3000円にする。さすがにB席ともなると舞台との距離が遠い。オペラグラスを取り出しての観劇となった。

        幕が上がると、ハローナイツの面々(小宮孝泰、ラサール石井、有薗芳記、渡辺哲、でんでん、菅原大吉)が赤いスーツ姿で立っている。中央には銀のラメのミニスカート・ドレス姿の高橋由美子。オープニング・ナンバーはいきなり『キューティー・ハニー』(倖田夾未)。リードボーカルが天野真吾(太平サブロー)からキティ岩城(戸田恵子)に替わり、今回はさらに新しい女性ボーカル、赤羽ミミ(高橋由美子)の誕生だ。太平サブローの抜けた穴は大きいと思っていたが、どうしてどうして新しい可能性を示した戸田恵子。そして今回の高橋由美子の歌がまたいい! 『キューティー・ハニー』で、このグループはポップスに転向かと思わせておいて、オリジナルの『ミス・ユー』、そしてムード歌謡の大道『ほんきかしら』。このオープニングを観ずして、このシリーズの楽しさは語れない。

        オープニングは別府温泉のホテルのショーという設定。そこから舞台が新宿歌舞伎町の喫茶店に飛ぶ。話は歌舞伎町のやくざ左とん平を中心に動き出す。ハローナイツの面々はというと、例によって新曲キャンペーンのためにメンバーから50万円ずつ集めた資金、計300万円をプロモーターに騙し取られたという事件が起こる。歌舞伎町の旅館に泊まりこんで愕然とするメンバー。それに旅館の支配人前川清が絡むという構成。ハローナイツの面々は相変わらずの個性で懐かしい。それに古くからのファンは、シリーズ2作目で出てきたキャラクター、カッちゃん(新納敏正)、コーちゃん(朝倉伸二)が再登場というのもうれしい。他に[星屑の会]の常連組としては、清水宏を中心とした江端英久、柏進のホストクラブのホストたち。特に江端さんは相変わらず細かい計算の演技が可笑しい。築出静夫は旅館の番頭役。これがまたいかにも築出さん“らしい”フラに合った役どころ。

        さらには今回はR&Bシンガーズ・トリオとして登場するスリー・ポピンズがいい。本職は役者さんだが、急遽歌わされたにしては上手い。一幕目で『春一番』を歌っていたあたりは座興という感じだったが、クライマックスでDiana Ross & Supremesの『恋はあせらず』(You Can’t Hurry Love)を披露したときはびっくり。短時間で稽古したとは思えない出来映えだ。クライマックスの歌謡ショーは続いてハローナイツで『ミス・ユー』と、そしてなんと『涙』。私は中島みゆきの1988年に発表したアルバム『グッバイ・ガール』の中の曲として知っていたのだが、これは中島みゆきが前川清に提供した曲だったのだ。後半、高橋由美子に替わって前川がボーカルを取るという構成もいい。

        ここから前川清ショーに入る前に、幕前で左とん平のワンマンショーが観られたのが儲け。『ヘイ・ユー・ブルース』と『人間って何だろう?』 前川清 On Stageは、いささか私にはキツかったが、再びハローナイツが登場しての『さよならの彼方に』にはしびれた〜。

        カーテンコールは無かったものの、最後に前川が出演者全員を呼んでのトークが楽しい。ああ、ついにハローナイツは前川清と競演。しかも、新宿コマ劇場! 出世したなあ。


February.10,2008 冬の吾妻橋の上は寒いだろうなあ

2月9日 人形町花緑亭 第十夜 (日本橋劇場)

        人形町で柳家花緑の会が開かれているというのは知っていたが、一度も行ったことがなかった。うかうかしているうちに、もう十回目。十回記念ということでキャパシティの大きな会場に移動していた。あまり宣伝もしていないようなので余裕で観られるだろうと楽観して当日券目当てで受付に行けば、チケットは完売で、たまたまちょうどキャンセルが出たチケットが1枚あるという。日本橋劇場といえば定員440名の大きなホールだ。それが満員というのに驚かされた。「盛況ですね」と受付のスタッフに言うと、「ええ、おかげさまで。次回のご案内を差し上げますから、ご住所をお願いします」と差し出された紙に私の住所を書いて渡す。残った最後の1枚のチケットを受け取って指定された2階席正面最前列に着く。なるほど、場内はいっぱいだ。客層もご老人から若い人たちまで様々。私はここに来るのは初めて。どうやら、歌舞伎まで想定しての劇場作りらしく、即席の花道を作れる工夫も見られるし、2階席のサイドにまで客席が配置されている。こんないい施設があったとは、地元にいても知らなかった。

        出囃子が鳴って、まずは花緑のお弟子さん柳家花いち『道灌』。頑張ってね。

        柳家花緑一席目は、会場の雰囲気を和らげるようにマクラをたっぷり。話題の冷凍餃子事件に触れて、お客さんの気持を惹きつける。「あれだけテレビで毎日、餃子の映像を見せられると食べたくなるんですね。あのパッケージとかおいしそうじゃないですか。宣伝効果大きいですよね。餃子をふたつに割ったところを映したりして、そそるんですよ。なんでも餃子の皮品切れになっているそうで」 そこから、[赤福]に話題が移り、やや危ない話になったところでネタに持っていく導入へ持っていく。「大人じゃない」なんて言いますが、[おとなしい]という言葉から大人という言葉になったそうで、それからすると政治家のみなさんは、子供の集りですね。お互い相手をののしったり、果ては乱闘までしてしたりして。落語会に来る人は大人になってくださいね。噺の途中で騒いだりしない・・・いや、笑うときは笑ってくださいよ。かといってあまり子供すぎるのも問題でして、『もう、か・え・り・た・い〜!』 『つ・ま・ら・な・い〜!』なんてやらないように。適当に大人でいてくださいね」 一席目のネタは『唖の釣り』。与太郎の出てくる滑稽噺だ。殺生禁断の上野寛永寺の池に釣りに出かけた七兵衛さんと与太郎。「さっきあげたイモはどうした?」 「食べちゃったよ」 「何ぃ〜!」 「『餌だよー』ってくれるから、オレの餌かと思って」 「餌付けするんだよ! 餌付けされてどうするんだ。想像を絶するバカだね」 「七兵衛さん、七兵衛さん」 「なんだよ」 「がんばれー」 「お前ががんばれ!」 このあと七兵衛さんは本当に悪戦苦闘の頑張りになるのだけどね。

        二席目は『文七元結』。三遊亭円朝の作であるという作品解説から、宝塚の『なみだ橋えがお橋』という芝居で『文七元結』を題材にしていたのを観た(「身投げはよくないよ〜」と歌いながら踊る)という話へ、そしてネタに入る。この噺も演者によっていろいろな型があるが、長兵衛のひどい身なりに佐野槌の番頭が羽織を貸してやる場面があるかないかが私のひとつの楽しみ。花緑はこの部分を入れていた。佐野槌の女将に合おうとする長兵衛に番頭が、「おう、ちょっと待ちねえ」と声をかけて、「これを着ていきねえ」と羽織を渡す。「ありがとうございます」と羽織を着る長兵衛。女将との話が済んで帰ろうとする長兵衛に、「(羽織を)返してくれ」と声をかける番頭。そこで花緑は初めて自分の羽織も脱いだ。吾妻橋の上でのやりとりも思いいれたっぷりで聴かせる。そして、長屋での大団円。長兵衛の女房がコミカルに描かれて笑いも起こる。

        お土産に千社札までいただき外に出る。ううっ寒っ! 年末に、半纏一枚、そのあと女物の着物一枚で外にいた長兵衛は、さぞかし寒かったろう。


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