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2011年1月10日鈴本演芸場初席第2部

 寄席の初席というものに久しぶりに行ってきた。上野鈴本演芸場は普段は昼夜二回の入れ替え制だが、初席は一日三回の入れ替え制。当然一回当たりの時間は短くなるのだが、そこにオールスターキャストとばかりに芸人をたくさん出す。トリ以外の芸人の持ち時間は8分。トリでさえ、普段は30分はあるというのに初席は20分。前座、二ツ目は出られないという状態だ。

 窓口でチケットを買おうとすると、正月特別料金3500円とある。普段は2800円なのに700円も上乗せ。さらにはシニア料金、学生料金、子供料金といった割引もないらしい。まっ、お正月くらい贅沢しますか。

 第二部は午後2時20分から午後4時50分まで仲入り休憩まで含めて14組の芸人が慌ただしく高座を務めては消えていく。

 まずは松旭斎美智・美登のきれいどころのマジックが鮮やかにオープニングを決める。黒地にきれいな絵が描かれた和服も鮮やか。

 続く蝶花楼馬楽は、ケチの小噺三つと獅子の踊り。

 桂藤兵衛『相撲風景』。こういうどこで切ってもおかしくない噺は8分の持ち時間では有効だね。

 ホームランの漫才は、おめでたく結婚式ネタ。「お嫁さんが白の白装束着てね」「それを言うなら白無垢だろ」「顔隠し被って」「虚無僧かよ、尺八吹くのか」「いや、金隠しか」「角隠しだよ」

 鈴々舎馬風はもともと芸風があんなだから、ここは漫談に終始。「野田聖子がアメリカまで行って赤ちゃん産んだそうだ。俺に言ってくれれば協力してあげたのにね」「海老蔵がボコボコに殴られてね、歯が折れちゃったってね。噺家(歯無しか)になるかと思ったよ」「去年は尖閣諸島問題でたいへんだった。日本のヤクザを尖閣諸島に行かせればいいんだよ。シマの問題だから」

 入船亭扇遊『たらちね』。でも8分だからねえ、前半部分で終了。

 川柳川柳はいつも通り『ガーコン』。もっとも短縮版だけど。

 柳家小菊の粋曲は『ぎっちょんちょん』など、これもお賑やかなのが並ぶ。

 五街道雲助『子ほめ』。前座噺としてよく耳にするが、それとて8分では収まらない。そこを雲助は、まさに赤ちゃんを褒める部分だけに絞ってきた。「どうみても厄そこそこ」の部分を見事にカットしてあった。そのためにサゲも違ってくる。お見事、お見事。

 橘家圓蔵『不精床』。これもどこで切ってもいい噺だから8分向け。

 ひびきわたるの漫談。キセルを取り出して音真似をする芸なのだが、これもどこででも切れる。「ところで突然ですが、お時間です」で消えていった。

 8分という時間をどう使うかがその芸人の見せどころだが、次の三遊亭白鳥は、この短い時間で自作の『スーパー寿限無』をマクラ込みきっちり8分で演ってみせた。しかも客に大受けではないか。あなどれない。あなどれない。

 紙切りの林家二楽は、挟み試しの[羽つき]とリクエストの[金色夜叉]一枚を切って、お後と交代。

 
 トリは林家正蔵。桂三枝作の『読書の時間』。トリとはいえ20分の持ち時間。しかも初席のめでたい興業。笑いの多い噺。この選択はうまいといえるだろう。

 お客さんも満足そうな表情で帰って行く。楽屋を訪ね正蔵師匠に2月の翁庵寄席のチラシの見本をお渡ししてご挨拶。楽しい会にするぞー!

1月20日記

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