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2010年8月15日浅草演芸ホール夜の部

 落語協会のホームページには、本日の寄席というコーナーがあって、そこには各演芸場の本日の出演者が載っている。かつてはお目当ての演者を目的に寄席に行ってみたら代演で別の人が出ていたということが何回もあってがっかりした経験がある。インターネットでこのコーナーがアップされるようになってからは、出かけようと思った朝は必ずチェックするようになった。

 この日の朝、なにげなく本日の寄席を見てみたら、浅草演芸ホールのトリが喬太郎になっている。今月、中席のトリは正蔵のはず。ははあ、正蔵に別の仕事が入って喬太郎が代演か。喬太郎の代バネとはおいしい。

 20時に浅草演芸ホールの前着くと、1000円で入れた。高座ではロケット団の漫才が佳境に入っている。「セキュリティって言葉知ってるか?」 「そんなもの山形は昔から使ってる。『ストーブに石油入れてぃ』」

 入船亭扇遊『一目上がり』。こういうオチをトントン落ちというのだろうが、まさにトントンとリズミカルに持っていく。こういう風に決まると気持ちいい噺だ。

 三増紋之助の曲ゴマ。風車は夏バージョンだ。棒に葉っぱを着けて独楽をひまわりの花に見立て、最後はひまわりの花弁を独楽の表面に乗せて完成。ひまわりが太陽を探してクルクル回る。BGMは伊藤咲子の『ひまわり娘』 ♪涙なんか知らない いつでもほほえみを そんな君が好きだと あなたはささやく・・・

 トリの柳家喬太郎が出てくると、大きな拍手が起こる。やっぱり喬太郎目当てのお客さんが多いのだろう。「今の曲(紋之助がBGMに使った曲)、御存知ですか? 伊藤咲子の『ひまわり娘』。今、調べてみたんですがね、1974年のヒット曲ですよ。誰も知りませんよねえ」と、ここでお定まりの紋之助乱入。このへんの流れが、寄席の呼吸だ。

 正蔵の代演だとすると古典かなと思っていたら、花火のマクラなどを振って、そろそろ夏も終わりだという気分にさせておいて、『路地裏の伝説』へ。お盆、帰省、怪談(都市伝説)と、今日のような日にはうってつけの噺を喬太郎は持っているんだなあ。父の三回忌に帰省した男が、父の遺品を見ているうちに日記帳を見つけたことから始まる噺だ。形見として父のネクタイや靴下を使っているという会話から、今年の春に亡くなった私の父のことも思い出してしまった。私も父の腕時計、靴下、シャツなどを使うようになった。残念ながら父は日記を書く習慣がなかったのだが。最近は父のことをもっと知りたいと思うようになった。おっと、喬太郎から逸れてしまった。

 お盆で父も帰ってきているのだろうか? ひょっとして私の隣の席に座って一緒に喬太郎を 観ていたかも知れない。なにしろ落語好きの父だったから。

8月21日記

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