直線上に配置

客席放浪記

浅草演芸ホール十一月下席夜の部

2016年11月28日

 開口一番前座さんは柳亭市若。招待券で入って来たお客さんが多く、まだざわついている客席もなんのその、『金明竹』を一生懸命。前座修業頑張ってね。

 三遊亭歌太郎
は、今の円楽が楽太郎だったときに名前が似ていたので、弟子だと思われていたと嘆く。「これぞ風評被害です。円楽師匠、今年、錦糸町の4,500円のラブホテルに女性と入ったって不倫報道されまして。あの人、年収一億ですよ。私先日、楽屋で三遊亭小遊三師匠と一緒になりまして、『あんちゃん、これ取っておいて』ってポチ袋もらいまして。コーヒー代って書いてありました。ラブホよりコーヒー代が超えた!」。
 『手紙無筆』に入るも、手紙の本文に入る前に時間が来て、冗談オチ。

 三遊亭多歌介は、噺に入らず、夫婦小噺あれこれで笑いを取って下りたが、よく受け捲っていたなぁ。

 すず風にゃん子・金魚の漫才。いつものお約束で金魚ちゃんがゴリラの真似を始めたら、客席からバナナを差し出すお客さんが。その場て剥いて食べ始める金魚ちゃん。浅草だな〜。

 三三の弟子の柳家小かじ。今月から二ツ目昇進。独特の低い声で『真田小僧』。将来の大有望株だよ。

 入船亭扇遊『家見舞い』。こういう汚い噺も、上手い人にかかると気にならなくなる。いいね〜。

 林家楽一の紙切り。鋏試しの、「土俵入り」のあと、お題の「酉の市」を一枚切っただけで時間が押していたのか切れ。

 女流の三遊亭歌る多『宗論』は、倅ではなく娘のお花が登場。父親の前で「♪ハレルヤ〜」と熱唱する。「何がハレルヤだ。うちは傘屋だ!」

 柳家小里んの『碁泥』。いわば落語らしい落語の芸。

 林家小菊の粋曲。「弱虫が たった一言 小さな声で 棄てちゃ嫌だと 言った夜」。都々逸が終わるとすぐさま拍手。こういうの案外ほかの寄席では反応が遅い。これもさすがもうひとつの浅草。

 仲トリは円丈が休演で、代演は柳家小ゑん。同じ新作派繋がりね。今日はこのあと新作が受けがいい展開になって行ったが、その口火を切った形。 『下町せんべい』が受ける受ける。浅草を舞台にした噺で、こういう噺を持っていると、土地柄、浅草では強いね。

 今年、漫談王円歌杯のMCをやっていた三遊亭円橘。やはりこの人、漫談が達者。以前にも聴いたことがある熱海の断食道場の話がマクラ。10日間で15kg痩せるというところで19.5kg痩せたという話。「いや〜、凄いですね・・・リバウンドが」。本人今もポッチャリ体形。噺は『動物園』

 柳家はん治『妻の旅行』は、浅草の中高年の客にすっかりハマったネタになった。奥さんにスーパーの特売お一人玉子ワンパック限りのセールに並ばせられるとか、サスペンスドラマを観ていて、崖に突き落とされるシーンで「あれ。人形よ」と言うとかの事例に爆笑が沸く。ついには息子に「もしオレに何かあったなら、お前にかあさん引き取ってもらうからな」の台詞で最高潮。綾小路きみまろ的笑いが、やはり受けるんだな。

 青空一風・千風の漫才。「ASKA、また逮捕されそうですね。逮捕されるのは今日か・・・」「(客席から)明日か」「バレてる〜」。速報ニュースネタ。

 三遊亭鬼丸も円歌門下。実録風新作落語『新巌流島』だ。合コン帰りの鬼丸ら五人が乗った車両に、怖いオニイサンが乗り民出来て喧嘩を吹っかけてくる。幸い途中の駅でオニイサンは下りていくことになる。ドアが閉まった途端、ホッとした乗客たちはオニイサンたちに罵声を浴びせ始めるが、その時、ドアが再び開いた! なぎら健壱『YASUOSAN』を思い出すような噺。オチが脱力系で、これまた楽しい。

 柳亭燕路が、渋く『辰巳の辻占』を。ここでこういうあまりやらない廓話が出てくるのも浅草らしいというのだろうか。

 仙三郎社中の鏡味仙三郎、仙志郎、仙成の三人。ひとりひとり繰り出される太神楽曲芸にお客さんから声が上がる。太神楽を観たこともないお客さんでいっぱい。初めて観るとびっくりするよね。

 トリは三遊亭歌之介。「今、外は3度です。絶対に外には出ないでください。ASKAは2度」。
 『母ちゃんのアンカ』は立見まで出ている客席にドカンドカンと受けている。やはり、現実に寄席で一番受けているのは、円歌とその弟子たちによる漫談風の落語。どんなに古典落語こそ本当の落語だって言う人がいようと、本当に寄席の現場で受けているのは、この人たちなんだっていうこと。それを忘れてはいけない。

11月29日記

静かなお喋り 11月28日

静かなお喋り

このコーナーの表紙に戻る

トップ アイコンふりだしに戻る
直線上に配置