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2011年7月23日第四回奮闘馬石の会(池袋演芸場)

 暑いときには怪談噺なんて昔からいうが、今でも夏に怪談噺なんて気になるのであろうか。『牡丹灯籠』なんて噺、本来長くて複雑で、暑さボケした頭で聴く噺では無いとは思うのだが、それでも有名なお札はがしあたりの部分は、なぜか夏の夜にはぴったりということで、いそいそと出かけてしまう。しかも『牡丹灯籠』ネタ下ろしの隅田川馬石ともなれば、うん、聴きたい。

 前日の夜、寝苦しかったわけでもないのだが、妙に目が冴えてしまって明け方まで起きていたせいもあって、日中の暑さを越えると、ダラーっとした気分。こういう日の方がすでに知っている噺で、さて馬石はどう聴かせてくれるかという軽い期待が高まる。

 池袋西口へ出てロータリーをブラブラしていたら、ちょっと高くなった植え込みを腰かけにして座っている人物が、こっちを向いて笑いかけてくる。ああっ! 馬石師匠じゃないの。私が「今から聴きに行く所なんですよ」と言うと、ペットボトル片手の馬石師匠笑いながら「今、さらっていたとこなんです」 そりゃお邪魔しちゃいけない。「楽しみにしてますよー」と池袋演芸場へ向かって去ることにする。

 全席自由席。とはいえ完売している様子。客席は空席が見当たらないほどぎっしり。

 開口一番前座さんは柳家いっぽん『転失気』。柳家獅堂のお弟子さん。声は大きいし、まあ、身体も大きいんだけど、独自らしいクスグリもおかしい。頑張ってね。

 「(時間の許す限り)演ろう」という、隅田川馬石『牡丹燈籠』、前半は『お露新三郎』。ふたりの出会いから語り起こして、お露の死から、新三郎がお札を貼るまで。お札に邪魔されて入れないお露とお米。裏手へと回ってみるが、そこにもお札が、というところでドロドロドロドロと太鼓が入って、ドキッとするが、これが仲入りの囃子という寸法。幕が閉まっていく。心憎い演出だ。

 後半は『お札はがし』。幕が開くと隅田川馬石が板付きで。ここは何と言っても伴蔵とお峰の作略が聴かせどころ。度胸の座ったお峰の入れ知恵に伴蔵が乗る人間の欲望の恐ろしさ、愚かしさ。こういうのを演らせるとさすが馬石は生き生きとしてくる。そして、いよいよお札がはがされ、お露とお米が入ろうとしたところで、またドロドロドロドロ。うわーっとドキッしたところで、これが終演の追い出し太鼓。うーん、憎い切れ場だ!!

7月28日記

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