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客席放浪記

2012年10月14日ボクの四谷怪談(シアター・コクーン)

 騒音歌舞伎と書いて、ロック・ミュージカルとルビがふってある。劇団☆新幹線みたいなものだろうと思い込んで観に行ったようなところがある。

 幕が上がり、登場人物がズラリと舞台に上がって、拍子木のチョーンと鳴る合図を中心にして音楽が流れるあたりのオープニングに「むっ、これはいいぞ」と思ったのだが、やはりこれは劇団☆新幹線ではないんだというのが明らかになっていく。あたり前だけど。

 オープニングが済んで、浅草の境内の場になると、「うーん」という気になってくる。ほとんどの人が70年代ファッション。話す言葉は現代語。それでなぜか刀を差している人もいる。伊右衛門は境内でゴザを敷いて蛇の目傘を売っている。それを見初めたロリータ・ファッションのお梅がDJをやっている父親と一緒に訪ねてくるなんていうところから、なんだかみるみる引いて行ってしまった。

 もちろん四谷怪談だから忠臣蔵が関わってくるわけだが、それが全共闘世代とクロスするという図式はわかるものの、これ、なんか古すぎない? という感じがしてくる。当時、この手の演劇って、やたらあったような気がする。なんでいまさらと思ったら、橋本治が70年代当時に書いた脚本が基になっていると後から知って、さもありなんという気になった。

 本心から言ってしまうと橋本治はどうも私には合わないし、蜷川幸雄もそう。それでは何で観に行ったんだということになるが、人から行けなくなったから、チケットを買ってくれと頼まれたとしか言いようがない。

 音楽に鈴木慶一というのも、どうなんだろう。私は嫌いじゃないが、こういうのに鈴木慶一の音楽は向かないんじゃないだろうか。ロック・ミュージカルの音かも知れないが、決して騒音じゃない。

 まず、生のバンドが入っていないのが致命的。なんだか音が薄いのだ。ピラピラの音が流れている。身体にズシンとくるドラムスもベースも無い。心をかき乱されるギターの響きも伝わって来ない。
 これはロックなんかじゃない。
 9500円の入場料を取って、立ち見まで入れているんだから予算が無いでは済まされないんじゃないの? バンドが入るとは明記されていないが、バンドは入らないとも書かれていない。

 全三幕のうち、一番面白かったのは二幕目のラストでの音楽の使い方。これは楽しいシーンだった。

 問題は最後を飾るはずの三幕目。思わず「なんじゃこれは」と思ってしまった。おいおい、自分探しかよ。70年代はこういうの確かに流行ったけど、えーっ! いまさらなあ。

 小さな会場で自己満足的に演るならともかく、シアター・コクーンで演る芝居じゃないでしょ。70年代も知らない若い役者さんにこれを演らせるのも酷な気がするけどなあ。

10月16日記

静かなお喋り 10月14日

静かなお喋り

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