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客席放浪記

文左衛門・扇辰 本寸法対決

2013年5月24日
日本橋社会教育会館

 開口一番の前座さんは三遊亭わん丈『不精床』。前座修業頑張ってね。

 橘家文左衛門が出てくるなり、「何が本寸法なのか、対決なのか」とブヅブツと呟くように言う。う〜ん、私もこのタイトルを何でつけたりか、わからないでいる。
 「なんでも暴力で解決しようとするのがいて、そういうのを見るとぶん殴りたくたくなる!」と『天災』へ。対決はわかる気がするが本寸法は見えないなぁ。ウハハハハ。噺に入っても「表へ出ろ、ちきしょー!」「くるっとケツまくってトントントン、ボカボカボカだ!」が炸裂しまくる。文左衛門のキャラが立った一席。

 一報、入船亭扇辰の一席目は、大相撲の升席に落語協会の賛助会員の席があって、仲間がよく座っていてNHKの中継のときに映るといったマクラから『阿武松』。まだ若いころから老成したようなイメージのある扇辰、宿の主人のような役をやらせると実に様になる。いわば文左衛門とは正反対なようなフラの持ち主。「う〜ん、いいねえ」とまるで私より年上の人の落語を聴いているような錯覚すら覚える。

 仲入り後の入船亭扇辰は「これからが対決だ」と言って『団子坂奇談』へスッと入る。いわば怪談の一種。ぞ〜っとさせて高座を降りる。これは生半可な腕では聴かせられない、これぞ本寸法な噺。まさに唸らされる出来だった。

 そしてトリが橘家文左衛門『猫の災難』。対決は誰に対してか? どうやら文左衛門は一緒に鯛を肴に酒を飲もうと言いだした友人及び猫に対して対決を挑んだようだ。友人が置いて行った酒をすっかり飲んじまった男が「ウワバミが天井から降りてきて全部飲んじゃったことにしようかな・・・そんな白鳥の新作落語みたいなわけにいかないしなぁ」と言ったり、なかなか帰ってこない相手に痺れを切らして「ひとりで飲んでも面白くねえんだよ。友達甲斐のないやつだなぁ」と呟いたり、果ては「あいつは昔っから自分勝手だ」と決めつける。でもねえ、相手がいるから対決なんだろうし、楽しいんだね。

 扇辰が本寸法で、文左衛門が対決。そんなことだったのかな?

5月25日記

静かなお喋り 5月24日

静かなお喋り

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