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客席放浪記

ダチョウ課長の幸福とサバイバル

2013年11月10日
紀伊國屋ホール

 前回の『おじクロ』は。ももいろクローバーZに夢中になったオヤジたちの話で、私はどうも付いて行かれなかった。くたびれ果てたオヤジたちが、ももいろクローバーZに元気を貰って生きていくという姿が、どうもピンと来なかった。

 今回の『ダチョウ課長の幸福とサバイバル』、ダサい課長でダチョウ。もう定年も間近にせまっているのに、まだ課長職というさえないオヤジ役を客演のラサール石井が演じている。このラサール石井がいい。身体もどこかだらしなく太り、喪服も入らなくなっている。
 ふたりの娘も出戻りで家に帰ってきてしまっている。その元婿さんふたりも、長女の婿は生活力が無くて、なぜかダチョウさんの家に転がり込んでいるし、次女の婿さんもコンビニの息子でありながら頼りない。住んでいる家も昔ながらの畳敷き。リビングではなくて茶の間。
 勤めている会社も能力主義に移行して、年功序列制度は崩壊し、若い社員が成績を上げるのに追い抜かれている。
 一年前に辞めた同僚が死んでも、会社側は通夜にも行かないと、ダチョウさんは同僚たちとだけで参列。翌日の葬儀にも参列したまま、二日間、会社を無断欠勤してしまう。その理由と言うのが、葬儀に参列して元同僚の死を目の前にして、今まで自分は何もしてこなかったという思いにかられて、自分のいままでの人生のゆかりの地を旅していたから。
 次女の婿が起こした事件がきっかけになり、ダチョウさんは会社を辞めて再就職先を探す。

 飛べないダチョウなんだよな。空へ飛び立てないで地べたを走り回るだけ。会社を辞めても、次の就職先は警備員。大きな飛躍なんてできない。でもそんなダチョウさんをラッパ屋は応援する。世の中のほとんど人って、結局その程度の飛躍しかできないんだよな。悲しいけれど、ドタドタと走り回るダチョウさんにシンパシーを感じるのだった。

11月11日記

静かなお喋り 11月10日

静かなお喋り

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