2010年9月12日立川談春独演会(神奈川県立音楽堂) 当日の朝、「チケットが一枚余っているのですが行きませんか?」とMさんからのお誘いの電話を貰ったとき、場所が横浜の県立音楽堂だと言われて、「どこだそれ」と一瞬頭が空白になってしまった。たまたまパソコンの前にいたので検索してみたら、「ああ、ここは一度行ったことがある」と記憶が甦ってきた。バブルガム・ブラザースを観に行った所だ。ええっ! だとすると何年ぶりだあ。20年以上前かあ? マクラで談春が、ここは名前が示すとおり音楽用のホールであり、落語だと後ろの方の席は声が聞こえにくいそうでPAの調整に苦労したとのこと。私の席はかなり前の方だったので問題は無かったが、仲入り休憩のときにロビーで人が話しているのを聞くと、やはり後ろの方は聞こえにくいらしい。やはり落語は千人規模のホールは向かないんだよなあ。 開口一番無しでいきなり立川談春の登場。長いマクラで会場をリラックスさせてから『牡丹燈籠 お札はがし』。談春は視点を伴蔵、お峰に絞り、そこから噺を構成していく。途中「ともぞうさん」という幽霊の台詞でぞっとさせて、サゲでこれを逆手に取って持ってくるというのも面白い。 二席目は『居残り佐平次』。勘定を払ってくれとやってくる番頭とのやり取りが、いかにも談春。のらりくらりとかわす佐平次に、「ひょっとして、こいつ金を持ってないんじゃないか」と番頭は思っていると思わせる演出が。だから、番頭が佐平次に対して強引に出るところがある。そこを立川流の論理のねじ伏せ的にやり返す佐平次。これを聴いてしまうと、コロリと騙される番頭や、調子がいいだけでよわよわしい佐平次は嘘臭く感じられてしまう。とにかく談春の佐平次は聴いていて、実に嫌な奴なのだ。でもそんな嫌な奴を聴くのが落語の楽しみってわけでもあるんだよなあ。 このコーナーの表紙に戻る |