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客席放浪記

はぐれさらばが“じゃあね”といった〜老(アルト)ハイデルベルヒと7つの太宰作品〜

2013年7月3日
三鷹芸術文化センター星のホール

 三鷹芸術文化センターが毎年、どこかの劇団と組んで企画している太宰治作品をモチーフにした演劇の10回目。

 別に私は太宰治が好きでもないし、作品もほとんど読んでいない。ましてや桜桃忌に行くような事はしたこともない。ただ、この三鷹での演劇だけは以前から気になっていて、何回か足を運んでいる。今年はピチチ5(クインテット)がやるというので、チケットを買った。

 この劇場は作り付けの舞台と客席があるわけではなく、自由にその形を変えられるところ。今回は足場の悪い入口を入ってみると、中央に一直線の舞台が作られ、その両側に対面になる客席を作るという構成。円形劇場のように360度客席というわけではないが、この方法でも舞台との距離がどの席に座ってもかなり近い。役者の顔の表情までがしっかりとわかる。

 サブタイトルのように太宰作品の中から『老ハイデルベルヒ』を中心にして取り上げ、自由な発想の芝居にしている。主人公の太宰治(菅原永二)以外に、実際には交流はなかっただろう作家を登場させる。宮沢賢治(今野浩喜)、横溝正史(野間口徹)、中原中也(三土幸敏)、そしてなんと藤子不二雄(唯井清喜・三浦竜一)。

 太宰治というと、文学青年の憧れのようなひ弱なイメージがあるが、実のところかなりイマジネーションの大きな作家だったのかもしれない。この芝居では、太宰が臓や鯨のような巨大なものに立ち向かっていくようなイメージで描かれる。

 自由な演劇世界の中に浸っていると、あっという間に2時間が経っていた。キング・オブ・コメディの今野、今や売れっ子の野間口徹ら、コントができる役者を揃えたのもよかった。客席から笑い声も多く起こり、退屈しなかった。

 来年はどこの劇団がやるのか、それまでに少し太宰治を読んでみるかな。

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