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2009年12月23日 円丈の『死神』を楽しむ会(国立演芸場)

 まずは出演者一同の御挨拶、って春風亭昇太がいない。まだ楽屋入りしていないって一言フォローがあれば安心するのに。出演者の近況報告になってしまったが、司会役の三遊亭白鳥が司会べたなのを他の出演者に突っ込まれる一幕も。その白鳥が一番長く、置き引き被害にあった話を。誰が司会役だかわかんない。

 トップバッターは林家彦いち。マクラである飲み屋での騒動を語るが、その内容はネットでは書けないやね。しかし、こういう日常のひとコマを漫談にして楽しませる才能は、この人以上にない。そして入った噺が『初天神』なのだが、季節は正月ならぬクリスマス。屋台に出ているのが、なぜか団子屋じゃなくてケーキ屋。ケーキをねだる子供も強烈なキャラだが、彦いちのオヤジはそれを一枚上回っている。「ご通行中のみなさま。とっても怖い人がいます。ケーキ欲しゅうございます」と世間様に訴えても、「買わないよ!」と子供を怒鳴りつける。それでも買ってやることに。「なに? ケーキはあんこにしますか、生クリームにしますか? あんこに決まってるだろ!」って、あんこのケーキは嫌だあ。『初天神クリスマスバージョン』

 柳家喬太郎は珍しくマクラ無しで、いきなり『井戸の茶碗』。それもすごくスピーディに噺を進めていく。と、仏像の中から出てくるのは五十両ではなく、どこか外国の通貨。「おやっ?」と思っていると井戸の茶碗のところで、「これは茶碗ではない」と来る。『インドの茶碗』。演目がネタバレだけど、そうとしか言いようのない噺。

 柳家小ゑん『レプリカント』。酔っ払ってカーネル・サンダースの人形を持って来てしまった大学生が人形を返しに行く噺。これも演目がネタバレなんだけどね。

 春風亭昇太『短命』。短命の理由を遠回りに説明するご隠居の言葉をなかなか察しない八っつあんだが、察しの悪さはおそらく昇太のものが一番長いんじゃないだろうか。それにしてもオープニングトークに参加できなかった説明もなし。気になってしまうではないか。

 三遊亭白鳥は師匠円丈の『ランゴランゴ』を大胆に作り直した『新ランゴランゴ』。落語の仕種をしてみせる外国人落語家。「わかった、焼き芋を食べているところ」 「違う。これはツチブタの足を食べているところ」 「だってフーフーって吹いたじゃないか」 「それは寄ってくるハエを追い払っているところ」 「あっ、それはソバを食べる仕種」 「違う。これはホエザルの脳ミソを食べてるところ」 ツチブタとかホエザルとか本当にいるのだろうか? しかもこの落語家、なんと『芝浜』を演るのだ。女房に起こされて狩りに出かける。タンザニア湖のほとりでシマウマの死体を見つける。これぞ『芝馬』って、師匠の『ランゴランゴ』を完全に超えてるね。

 さて、トリは三遊亭円丈の『死神』。円丈らしくふんだんにギャグを盛り込んでいる。呪文もオリジナルだ。布団の180度回転シーンはなんと四人の相撲取りが登場。力余って死神を倒してしまうハプニングも。『死神』というと、最後のサゲをどうするかというのも興味がある。円丈版は、う〜ん、理屈にとらわれ過ぎてしまったように感じる。「なるほど」と感じさせるサゲなのだが、それが直笑いに結びつかないのが惜しい。

12月26日記

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