直線上に配置
2011年5月28日 円丈これくしょん 蔵出しまぼろし作品(日本橋社会教育会館)

 ここ数年前から落語会の会場としてよく使われるようになったホール。私は近くに住んでいるというのに今まで縁が無かった。日本橋小学校の8階にあるホール。

 私には日本橋小学校という名前がどうもピンと来ない。以前は東華小学校といった。『お富与三郎』にも出てくる稲荷堀の近くなので東華小学校という名前になったらしい。こう書いても、「?」と思う人が多いだろうが、これを説明すると、稲荷堀は「いなりぼり」ではなく、「とうかんぼり」と読むのだ。「稲」という字を音読みにすると「とう」、「荷」を音読みにすると「か」。江戸っ子がわざと音読みにして、調子よく、「とうか」のあとに「ん」を入れて「とうかんぼり」と読むようになったらしい。そこからもじって、東華小学校になったらしいのだが、その由来が消えてしまって、日本橋小学校とはなんと味気無いことか。

 まあ、そんなことはどうでもよいのだけれど、ここには図書館があり、以前はよく利用していたし、選挙があると体育館が投票所になるので、私はよく足を運んでいた所。

 そんなことは余談だが、初めての日本橋社会教育会館での落語会は、三遊亭円丈がお蔵入りしてしまっている噺を甦らせるという企画。前もっての発表は、『宇宙瞑想曲』『前座生中継』『白いらせん階段』『またぎの里』『お笑遺伝診断』の中から口演するとのこと。どれひとつとして私は聴いたことが無い。こりゃ楽しみ。

 オープニング・トーク。三遊亭天どんが三遊亭円丈を呼び出すと、声の調子が悪いという円丈が出て来て、ここ数日、弟子の亜郎のアドバイスを受けているが一向に声が出ないとのぼやきから、きょうは三席のつもりが、二席しか演る時間が取れなくて、『またぎの里』と『グリコ少年』をやろうかと思っている旨の発言がある。突然『グリコ少年』にちょっとがっかり。これは若いころの円丈で何回か聴いているし、数年前にも聴いた。そうすると円丈が突然「でも本当に演りたいのは『白いらせん階段』なんです」という発言が。「こんな噺なんですが」と全体像を話しだすと、 これが面白そう。

 開口一番の前座さんは春風亭一力。春風亭一朝のお弟子さん。ネタは『子ほめ』。頑張ってね。

 三遊亭天どん『手足』。手という言葉と、足という言葉が入れ違ってしまうという奇病(?)を持った男の噺。足立区は手立区になってしまったり、手塚という名字が足塚になってしまったり。シュール!

 『またぎの里』と『グリコ少年』にすると言っていた三遊亭円丈。一席目はどちらから演るのかと思っていたら、3,11の震災で仕事のキャンセルが続出したことなどのぼやきから、なんと『白いらせん階段』へ。白亜の邸宅に住む少女に恋したペンキ職人と、やはりこの少女に恋したミミズの噺。ミミズの生活を克明に描写する円丈の表現力に感心する。今までミミズの気持ちになって演じる落語を作った人がいるだろうか。そして、サゲには唖然。ひょっとしてこれが演りたかったのかもしれない。どうも録音を録っていたようだが、いわゆる「見立てオチ」で映像がないとわからないんだけど。

 もう一席が『またぎの里』。電気が来ていない東北の田舎町での噺。商店などなく、物々交換所しかない。またぎの男がウォークマンが欲しいとやってくると、交換所の人はレート帖を見て、ウォークマンは熊五頭とカモシカ二頭と狸一匹だと言い放つ。三遊亭円生の手ぬぐいは爪楊枝三本。なんじゃ、こりゃの噺だが、円丈が演るとバカに面白い。サゲは、みんなで合唱する形式で、噺に入る前に稽古がある。でもー、これネタばれだよね。書かないよー。

6月10日記

このコーナーの表紙に戻る

トップ アイコンふりだしに戻る
直線上に配置