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2010年2月6日 ONEOR8『ゴールデンアワー』(三鷹市芸術文化センター星のホール)

 ラーメン類やレバニラ炒め、餃子などを出している昔ながらのいわゆる中華屋の二階が舞台。一階が満員のときなどに使う座敷だ。亭主は入院中で息子章二(恩田隆一)がその分頑張らなくてはならない。この二階座敷はそんな章二の寝床でもある。押し入れから布団を出して、夜はそこで寝る。

 これはわかるのだよ。中華屋とそば屋の違いはあるが、私の家もそんな生活だったから。落語の『寝床』の寝床の意味を実体験としてわかる人は今は少ないだろう。

 ある日の風景。この店には通いの職人をひとり雇っているらしいのだが、二階で寝ている章二を起こしに、この職人がやってくる。彼はネズミ捕りに引っかかっているネズミを処理できない気の小さい男。どうやら9時にやってきたのだがネズミをこわごわ見ているだけで一時間を過ごしてしまったらしい。10時になって章二を起こす。寝坊じゃないか。この日、まとまった昼の弁当を出す予定もあるという。10時ってもう間に合わないんじゃないの? そのわりには急いで仕度する風でもなく会話が続いていくって、こういうの観ていてイライラするの。早くしなさい。

 父の入院を知って、大阪から章二の兄弘(ほっしゃん。)が妻と一緒に上京してくる。ふたりは幼い時に生き別れしている。どうやら母が長男を連れて出て行ってしまったらしいという設定。兄はすっかり大阪人になっていて大阪弁しか話さない。

 25年ぶりに再会したふたり。最初は距離を置いて接しているが、だんだんに打ち解けあって行く。ふたりの子供時代の思い出を語り合うところがジーンと来る。それが、あっと驚かされるラストシーンに生きてくる。これはもうどんな言葉も無力になるなあ。

 お笑い芸人のほっしゃん。と、もうひとり客演が根岸季衣。こちらもいい味を出している。借金を背負っているパートタイムマー役だが、ラスト、謎を残して終わる。あれ、気になるなあ。

 あと、近くの職工をとりまくエピソードや、妊娠した女性のエピソードも面白かった。

2010年2月12日記

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