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2011年6月11日 白鳥倶楽部(お江戸日本橋亭)

 三遊亭白鳥独演会。どうやらCDの録音を兼ねた会のようだ。

 開口一番の前座さんは林家しん歩。林家しん平のお弟子さんで、前座さんながら、続々と新作に挑戦しているようだ。そのしん歩の『最後のデート』は、金婚式を迎えた夫婦が遊園地へ行く噺。頑張ってね。

 続いて三遊亭白鳥が挨拶に出てくる。(前に出た、しん歩の噺について)「ぼくも昔はああいうわけのわからない噺を作っていました」に場内大爆笑。私も白鳥の新潟時代、二ツ目のころから聴いているが、確かにわけのわからないものが多かったのだよ。でもこの人の作る噺は好きだったんだなあ。

 三遊亭玉々丈は、鶴の恩返しならぬニワトリの恩返しを描く『ニワトリ』。命を助けられたニワトリが訪ねてくる。食パンを持ってトイレに入ると、卵サンドとチキンサンドを持って出てくる。ご飯を持って入ると親子丼って、ええーっ! そのヒミツは?

 三遊亭白鳥一席目は、白鳥襲名の由来を詳しく語ってから、久しぶりに聴く『台所の隅』。殺されたゴキブリの通夜に、いろいろな虫が集まってくる噺で、その虫の所作が見せ場のひとつになっているので、どうもCDには向かない気がするのだが、そういうことにはおかまいないみたい。

 仲入りを挟んで、三遊亭白鳥の長い噺『隣の町は戦場だった』。初めて聴く噺だと思い込んでいたら、なんだか聴きおぼえがある。帰ってから調べてみたら、7年前の2004年6月27日、彩の国さいたま芸術劇場、拾年百日亭で聴いていたのだった。

 しかし、おそらくこの噺、当時よりも進化しているはずだ。マクラで自分の生まれた故郷は豪雪地帯で、そんな雪の中でも自転車通学していたといったエピソードがすでにして、後半への伏線になっている。噺に入っても、進路指導の先生と暴走族の少年の会話が続き、それが聴いている間はただ普通に面白いのだが、それが後半になって、実は多くが伏線になっていて、次々と繋がっていく快感。

 冒頭で、「稽古していると、45分から2時間の間を行ったり来たりしている」と言っていた意味がわかるような気がする。なにしろ前半は伏線を張るのが目的だから、ひとりで稽古していると、おそらくダレてくるのだろう。本番はキッチリ45分に納めて、大きな拍手と共に終演。

 前半の仕込み、後半の繋がりの妙。白鳥はストーリー・テラーだ。

6月25日記

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