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客席放浪記

2012年1月24日 『第17回ひぐらし寄席』(日暮里サニーホール)

 二ヶ月ぶりにナマの落語。

 19時開演。開口一番の前座さんは金原亭駒松で『たらちね』。声が大きくて通りがいい。頑張ってね。

 ここの企画は隅田川馬石の落語を定期的に行っている。一席目は、入場料の値引きのマクラから『壺算』。馬石の道具屋さんは、気が弱い性格というのを全面に押し出している感じだ。兄ィが、「なんだったら、あちこち瀬戸物をみんな壊して回っておいて、お前んとこをみんなに紹介してやる」と言ったら、真に受けて「それだけはお止めください」と必死に止めるくらい。こんな気の弱い道具屋だもの、ちょっと押しまくれば騙されるかも。

 対談コーナー。今秋真打昇進が決まった古今亭朝太に馬石がイタビューするという趣向。今回八人抜きで真打昇進が決まった朝太は、古今亭志ん朝の最後の弟子。平成10年に入門して、13年に師匠が亡くなってからは、志ん五→志ん橋の預かり弟子になった。

 ―――昇進を知ったのは、志ん橋師匠から?
 「そうです。『どうする? 断ってもいいんだぞ』と言われて・・・」
 ―――志ん朝一門って、断るんですよね。
 「ええ、ところが、メールで『おめでとう』とか届き出して、なんで知ってるのかと思ったら、落語協会のホームページにで出ちゃったんですね。それで『ありがとう』なんて答えちゃったもんだから、引っ込みがつかなくなって」
 ―――小三治師匠から個別に会って話があったんだって?
 「ええ、三人のうち(春風亭一之輔、古今亭菊六)、ぼくが最後だったので、あとのふたりに電話して、『何を話した』って訊いたら、『世間話』って。世間話ってことはないだろうと思って・・・」
 ―――どうでした?
 「風月堂の喫茶に呼ばれまして・・・ほんとに世間話でした。思い出話みたいなの」
 ―――頑張れとか、そういうことではなくて?
 「まったくの世間話。最後になにか訊くことがあるかと訊かれて、『別に』って」
 ―――訊けばよかったのに。おそらく何でも話してくれたと思うよ。いいチャンスだったのにぃ。

 どうやら昇進の暁には名前も変わるらしい古今亭朝太。「住吉踊りのときに、ある二ツ目の女性に、馬石師匠に『師匠って黒い服が似合いますね』って言ってごらんと言ったら、翌日黒のポロシャツ着てきた。わかりやすい人だなあって」 ネタは『お見立て』。志ん朝ゆずりかなっと思ったら、芸風はかなり違っていた。番頭の喜助の悲哀がたっぷり盛り込まれた『お見立て』になっていた。花魁は死んだと泣き真似をするなど、無理矢理な喜瀬川の注文に「言うのはそっちだけど、やるのは、いっつもこっちだ。本物の涙が出てきた」

 「只今、浅草演芸ホール夜の分のトリを、私の師匠が務めておりまして、きのうはハネて外に出たら凄い雪。師匠、『夢金やりゃあ良かったな』って」 そこからこちらは火事の噺『火事息子』。勘当された息子と、勘当した質屋の父親。そしていつまでも息子のことを忘れられない母親の情。こういう噺を若さにおかしくなく出来るようになってきた。いい噺家になってきたぞ。

21時20分終演。

1月25日記

静かなお喋り1月24日

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