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客席放浪記

第8回コラアゲンはいごうまん・春風亭一之輔二人会

2017年5月24日
横浜にぎわい座

 このところ、NHK『プロフッェショナル〜仕事の流儀』に出たり、ニュース番組のコメンテーターで気の利いた発言をしたりの春風亭一之輔をコラアゲンはいごうまんが褒め殺しにかかると、一之輔も『すべらない話』でのコラアゲンはいごうまんを褒める。お互い、相手を持ち上げながら、おふたり本当に仲がいいんだなと感じる。
 「話芸なんて大きなところでやるよりは、マイクを使わず小さいところでやる方が伝わる」という一之輔の説には賛成。落語は身体の動きが少ない。どうしても語りと顔の表情が命だ。大きなホールの後ろの方の席では、これが伝わりにくくなってしまう。

 今回は春風亭一之輔が先に上がる番。
 三年前に60歳で亡くなった津軽三味線漫談の太田家元九郎の酒飲みエピソードがマクラ。元九郎って、いつ聴いても同じネタだったが、何回聴いても飽きなかった。寄席では貴重な色物だったな〜。
 噺はマクラとはあまり関係なく『唐茄子屋政談』
 若旦那の代わりに唐茄子を売ってくれる男が、やけに陽気で個性的で面白い。勘当されて唐茄子を売って歩く、絵に描いたような若旦那を見て喜んでしまう。知り合いにどんどん唐茄子を調子よく売る姿は実に楽しそう。なにしろ重い噺だから、この部分の明るさは救いだ。サゲにもこの部分を利用して明るく終わらせていた。
 私は談志一門がやる『人情八百屋』が嫌い。いかになんでも店子が大家さんをあんな目に合わせてしまうなんていうのは後味が悪い。かといって『唐茄子屋政談』の終わり方も、「なんだかな〜」という気がする。この一之輔の終わり方は笑って終われるし、後味が悪くないのはいいな。

 コラアゲンはいごうまんは、教科書の話。つい先月ネットで話題になった道徳の教科書を巡る文科省の対応を導入にして、教科書の文章問題に使われた人の名前を調べることから派生して知ることになる、終戦から昭和33年までの教科書に隠された、当時の文部省と教科書出版社が考えた、ある秘密。これを知ったときのコラアゲンはいごうまんの驚きは、この話を聞かされたこの場の私たちの驚きでもあった。
 道徳教育の名のもとに、おかしな愛国心を植え付けようとしている今の文科省に聞かせてあげたい話だ。

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静かなお喋り 5月24日

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